第15話 [エロゲ体質]のデメリット

  

「わたしの[ゲームシステム・エロゲ]は、スキルが変質する前は[エロゲ体質]というスキルだったのですが、このスキルが生えた直後は本当に大変でした」


 字面からはかなり厄介そうなスキル臭がするんだけど一体何があったのだろうか?


「4月8日の誕生日の日にこのスキルが身についたことがステータスボードに記載されていましたが、冗談みたいなスキル名でその時は現実として認識できませんでした。

 しかも学校でいきなりそんな物が出てきても、入学したばかりで周囲に馴染むのが優先でしたから気にしてられませんでしたし」


 それはそうだろうね。

 僕の場合はスキルで強制無課金プレイを強いられたからすぐに実感が湧いたけど、[エロゲ体質]なんてスキルでどう実感しろと?


「しかしその認識できなかった現実が、学校から家へと帰る間に強制的に認識させられることになったんです。

 何もないところで転んで男性に抱き着くはめになったり、曲がり角で男の子とぶつかり押し倒した際に胸を触られたり、何故かわたしのいた場所に局地的な突風が吹いて後ろにいた男子にパンツを見られたり、と散々な目に遭ったんです」


 名前に恥じない凄まじいまでのエロハプニングだ。

 いや、名前は恥ずかしいんだろうけど。


「家に帰るまでの間に男の人とのエッチなハプニングが起きるようになってしまい、どう考えてもスキルのせいだと確信したわたしは家族に相談した結果、ダンジョンに潜ることにしたんです」

「それはやっぱりスキルが変質する可能性があるから?」

「はい。わたしは一縷の望みに賭けてダンジョンでレベルを上げることを目的にしています」


 僕と同じくらい切実なんだね。分かるよ。

 自分の人生がかかっているんだから、そりゃ嫌でもダンジョンでレベルを上げようとするよね。


「ダンジョンには元々興味があって潜る予定ではありましたが、高校生になっていきなり冒険者になることになるとは思いませんでした。

 それにしても先輩のスキルなら無理に冒険者にならなくても良さそうなのですけど、先輩の目的はやっぱりハーレムですか?」


 やっぱりって何?

 白波さんにも言われたけど、なんで僕はそんなにハーレムを作りたいって思われてんの?


「いや僕も君と同じでデメリットスキルを変質させるためだよ」

「えっ?」

「なんで驚くのさ」

「い、いえ、先輩のスキルならそれほど日常生活に影響がなさそうなのでてっきり……」

「いや結構影響あるから」

「そうなんですか? あっ、まさかカードに電子マネーをチャージするのも課金扱いとかですか?」

「そっちは問題ないよ。スマホゲームで課金ができないだけ」


 そう言ったら高宮さんは首をかしげて不思議そうな顔をした。


「……影響、あるんですか?」

「課金ができないからガチャができない」

「影響あるんですか?」


 何故2度聞くんだ。


「影響めちゃくちゃあるから。ガチャができないとか死活問題だから」

「は、はぁ、そうなんですか」


 なんか納得いかないような表情をしている。


「まだお金のためと言われた方が納得したのですが……」


 小声で呟いているけど聞こえてるから。

 別にいいじゃないか。好きなんだよガチャが。


「それにしても、別にハーレムどころか結婚にも興味ないのになんでハーレム目的だと思われるんだろ? やっぱり男がダンジョンに潜ってるとハーレムを目指してると思われても仕方ないのかな?」


 別に尋ねたわけでなくふと口からでた疑問だったけど、その答えはすぐに分かることになった。


「だって先輩、森先輩と仲が良いじゃないですか」

「あの?」

「いつもハーレムハーレム言ってて色んな女の子に声をかけたり、ハーレムを目指す男の人たちと一緒に頻繁にダンジョンに潜ってお金を稼ごうとしてるんですよね? まだ入学して1か月ほどですが1年生の間でも噂になってましたよ」


 大樹、人のこと鋼のメンタルとか言ってたけど人のこと言えなくない?


「だからてっきり森先輩と同じで先輩もハーレムを目指しているのかと」

「流れ弾の風評被害!?」

「ハーレムを目指すのは悪くない、むしろ良いことだと思いますが――」


 ハーレムを目指すことが良いって言う女子、初めて見た。


「軽薄に女の子に声をかけまくるのはどうかと思います。女の子なら誰でもいいみたいなあの態度はちょっと……」


 大樹、お前普段どんな生活してんの?

 僕らがいる前ではそんな姿見たことないんだけど、そんな噂になるくらい声かけまくってんの?


「少なくとも僕にそんな気はないよ。さて、いつまでもここで話している訳にもいかないしそろそろ行こうか。ところでダンジョン出るまで一応パーティー組む?」

「あ……えっと、はい。すみませんがお願いします」


 そんな申し訳なさそうな表情をして言わなくていいのに。

 なんだかパーティーを組むことにためらいがあったようだけど、経験値を気にしているんだろうか?


 パーティーを組むことで経験値の分配が可能なので、仮に戦っていなくても均等に経験値を分けることができる。

 このシステムのおかげでスキルが回復系で戦えない人でもレベルを上げることができるけど、戦えずパーティーに貢献できないであろう人物は当然忌避されてしまう。

 僕らのようなデメリットスキル持ちにとってはこのシステムはなかった方が良かった気が……いや、どの道パーティーに貢献できなさそうなら入れてもらえないか。


 まあ経験値の分配はともかくパーティーを組んでいない者同士で戦闘を行うと、何故か若干経験値が減るらしいので、ここでパーティーを組まないのはもったいないのが一番の理由だけど。


 僕はステータス画面を開いてパーティー申請を送り、高宮さんはそれを受諾したので無事パーティを組むことができた。


 ――ピロン 『条件を達成したためスキルが解放されました』


 気になるメッセージが聞こえてきた。

 なかなかここから移動できないな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る