第31話 ついに来た
≪咲夜SIDE≫
『シクシク。眠れない、眠れないよ……』
ボサボサの茶髪でやる気のなさそうな目をしている見覚えのある人物が、和室の部屋で布団に入り泣きながら眠れないと嘆いている。
ここでの特殊ミッションは字面にすれば簡単で、【寝付けない織田信長】を眠らせてあげること。それだけだった。
だけど咲夜達はその簡単な事に苦戦していた。
『『『起きろー!!』』』
「うるさい」
ちっちゃい蒼汰君達が寝ようとする
そのせいでウトウトしだしても目が覚めてしまうの繰り返しだった。
『ご主人さまを何とかしないといけないのは分かるのですが、数が多すぎるのです!』
「これは捕まえても捕まえてもキリがないぞ!」
「……人手がいる?」
攻撃ではなく捕まえようとするのなら、対戦が始まらないからすぐに
咲夜達4人だけじゃ次から次へとやってくるちっちゃい蒼汰君達に対応できない。
どうすればいいんだろう?
『くっ、このままじゃ埒が明かないのです。というか4人でやるミッションじゃないと思うのですが、【泉の女神】のミッションの時のように何かクリアするための要因が存在するんじゃないのです?』
「なるほど」
かなりの時間ちっちゃい蒼汰君達を捕まえてたけど、アヤメちゃんの言う通り【泉の女神】の時のようなおっきな蒼汰君みたいな存在がいてもおかしくない。
「うむ、では一度ここは放置して周囲を散策してみるか」
『えっ、そんな……』
オリヴィアさんの発言に
それよりもクリアするための要因をたった4人で探さないといけないのだから、時間がかかりそうなのが心配だ。
「もしかして二手に分かれたのは失敗だった、かも?」
「……今更それを言っても仕方がない。早く探そう」
乃亜ちゃん達は順調なのかな? 咲夜達も頑張らないと!
≪三人称視点≫
――バシャバシャバシャ
ある地点から扇状に広がるように海を泳いでいた存在達の内、一部のそれはニヤリとほくそ笑んでいた。
『『『ガチャ~』』』
そう。【Sくん】である。
彼らは自身の求める物がそこ、日本にあると感じ取れていたがゆえに、喜びの笑みを浮かべながらその短い手足により力を入れて前へと進む。
もはや陸から肉眼でも確認できるほどにまで近づいた【Sくん】達はまるで魚の群れのようであったが、それらが近づいてくるのを歓迎する人間などいやしなかった。
「うわー! き、来たぞ!?」
「ううっ、覚悟を決めるしかないというの……?」
「壊したくない。壊したくないよ……」
誰もかれもが悲鳴を上げながら、今更ながら少しでも距離を取ろうとする者、スマホを隠そうとする者、SIMを外して別々に保管しようとする者など、ニュースで散々【Sくん】の存在があげられていたにもかかわらず、あまりにも遅すぎる上に見当違いな行動を取っていた。
日本海側に住む人達の内、その地から離れられなかった、離れようとしなかった人たちだ。
しかしこれを自業自得だと責める事はできやしない。
何故なら【Sくん】はスマホのみ、しかもゲームが入っている入れた事のある端末のみを狙うだけであり、命に危害を加えられることはない。
その地でお店を営む人や、漁師、農家など、その場所を離れてしまえば生活の糧を得られないというのなら、たかがスマホ1台と諦めた人の判断が間違いなどとは言えないのだから。
――バシャン!
『『『ガチャーーー!!!』』』
陸へと上がって来た【Sくん】達はようやく着いたと言わんばかりに歓喜の声を上げる。
ついに、辿り着いてしまった。
何故か泳ぐのは異様に速かったためにクロールで進んでいたにもかかわらず、何百キロとある距離をたった3日で横断してしまっていた。
そして悲劇の始まりの合図でもある。
「「「嫌だーーー!!」」」
『『『ガチャーー!!』』』
世界で一番嫌な鬼ごっこが日本でも始まってしまった。
捕まれば自分のスマホは奪われ、究極の二択を迫られることになる。
10万の課金を受け入れるか、【Sくん】を倒しスマホを破壊するか。
幸いにもこの時点で緊急メンテナンスの措置を取り、ゲーム自体にログインできなくしている会社のアプリしか入れた事がないのであれば、【Sくん】にスマホを奪われても課金されないし、スマホを破壊する必要もない。
しかしこの騒動が終われば即座に会社を畳んで返金処置などを行わない考えの悪徳会社のアプリを入れていたら最悪だ。
「ああっ、ゲームが出来る……。こ、壊すのか? それとも10万払うか?」
どちらを選ぶにしても少なくない金銭が失われるのだから。
日本人に対しても恐怖を与えているそんな【Sくん】だが、たとえ【Sくん】が不眠不休で動き続けられるといっても道中の
果たして蒼汰達は自身の住む地へと【Sくん】が辿り着く前に、この騒動を治めることが出来るのだろうか?
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