第30話 【泉の女神】は良心的だった
乃亜達がボスから〝鍵〟を手に入れるためにこの〈ガチャ〉の空間を出発してからどれだけの時間が経っただろうか?
「「「ガチャーーー!!」」」
昼も夜もなければ眠気も食欲もわかないこの世界では時間の感覚がまるでつかめないけど、先ほど外からの増援が来たのでそれなりに時間は経っているだろう。
「「「ガチャーーー!!」」」
その人達に話しかけた時には僕の近くにいた〈ガチャ〉の被害者と僕自身【Sくん】と同じ見た目なので滅茶苦茶警戒されたけど、なんとか話だけは聞いてもらえた。
もっとも話を聞いてもらえたのはこの世界から出させてもらえなくなることを了承した人達だけだ。
了承せず僕を信用なんてできないと言っていた人達は残念ながら今は目の色を変えて〈ガチャ〉を回してしまっているので、あれはもうダメだろう。
「「「ガチャーーー!!」」」
………………言っちゃダメなんだろうけど、ハッキリ言ってうるさいなぁ。
というか、この悲しき生物を見て〈ガチャ〉を引いた人達は元から正気じゃなかったに違いない。
いくら僕が怪しい見た目をしていても、普通これを見たら〈ガチャ〉を危険なモノだと判断して引かないよね?
『僕以外にも新たに入ってきた人に対して〈ガチャ〉を引かせない様に説得できそうな人達が来たし、うるさいからもう外に放り出したいんだけどダメかな?』
そう呟いたらウサギと猫が上から降ってきて僕の前にロール着地して現れた。
『ダメに決まってるニャ』
『そうだよ。気持ちは凄く分かるし、なんならこっちだって外に放り出したいくらいだけど、この世界から出たら欲求が薄れて正気になっちゃうからね』
『情報をもってるやつを外に出すわけにはいかないから仕方ないニャ。
でもこいつらに関しては放置していたのは完全に失敗だったニャ。お陰で今ボスに挑んでいるあいつらのように〈ガチャ〉に対して警戒する人間が増えてしまったニャ。
とりあえず口を布で塞いでおく事にするニャ』
「「「ふごーー!」」」
まあこれならさっきよりはマシか。
さすがにあれだけ協力してくれた人達にすることじゃないけれど、あまりにもうるさかったから仕方ないよね。
とりあえず悲しき生物達のことはこれでいいとして、新たな協力者達についてはこの世界に入ってきたばかりなのでまずはキャラクターを強化した方がいいと教えてあげた。
ある程度の強さがなければボスの元に辿り着けないので、最低限強化してもらわない事には乃亜達の手助けもしてもらえないからね。
『乃亜達がまだ戻ってこないところを見るに、ボスへの対応に苦労してるんだろうな。
でも急がないと新たな増援が入ってきた以上、もっと被害が増えちゃうよ』
幸いにも増援としてこの空間に入ってきたほとんどの人は悲しき生物を見て〈ガチャ〉に対して警戒できているので、強化できるまでは放置でいいね。
それはともかく乃亜達全然戻ってこないけど、ボスから〝鍵〟を手に入れるのに大変なことをさせられているのかな?
≪乃亜SIDE≫
わたし達は今、石造りの迷宮の中でミノタウロスと相対しています。
と言っても、【
『モウッ~!?』
「よし、だいぶ弱らせたね」
「それならそろそろ捕獲アイテムを使いましょ。さっきみたいにうっかり殺しちゃうわけにはいかないもの」
「ある程度弱らせないと抵抗されてこの手のひらサイズのカプセルから出てしまいますからね。……なんだか凄い有名どころのゲームの既視感が……」
ソフィア先輩と冬乃先輩と共にわたし達はボスの特殊ミッションをクリアするために、迷宮内を駆けずり回っています。
なぜミノタウロスを捕獲しないといけないのかは、ボスの名前で一発で分かりますね。
【空腹のヤ=テ=ベオ】
ボスをお腹いっぱいにすれば〝鍵〟が貰えるのはミッションを聞かなくてもすぐに予想がつきました。
問題はどうやってお腹いっぱいにするのか。
最初は人を食べさせないとダメなのか、と思ったのですがそんな事できるはずもありません。
そもそも【泉の女神】の時のように何かヒント、もしくは手助けがあるはず。
そう思い色々調べた結果、レンジャー服を着た二頭身のデフォルメ化した先輩がコッソリと出店を開いており、ポイントと引き換えにミノタウロスを捕獲できるカプセルを売っていたのです。
何やってるんですか先輩……。
いえ、あれが先輩がじゃないのは分かっていますが。
しかし中々エグイ仕組みですね。
〈ガチャ〉に魅了された人間はポイントを使ってカプセルを買う事が絶対にありませんから、もしも特殊ミッションに気が付いてもやらない可能性の方が高いです。
ミノタウロスの捕獲がすでに100体を超えていますが、それでも『タリナイ! タリナイ!』と叫ぶのですから、相当ポイントを使いますよこのミッション。
「ポイントなんて復活に必要な5ポイントだけ残しておけばいいとはいえ、【泉の女神】のミッションは随分良心的だったんですね」
「そうね。もしかしたらこのミッション、私達だけじゃクリア出来ないんじゃないかしら?」
「その場合はサクヤ達に協力してもらうしかないね。こっちは随分大変だけど向こうは順調に〝鍵〟を手に入れられてるのかな?」
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