第11話 負ける要素はない

 

『『『ギャッ!?』』』


 ――チュートリアル 敵を倒そう をクリアしました。


 〖クエスト〈チュートリアル 敵を倒そう〉をクリアしました〗


 デフォルメスケルトン達を倒した後、スマホに〈クエスト〉達成の表示が出て1ポイント入手できた。


 バトル時にデフォルメされた自分のキャラのHPが表示されていたけれど、咲夜のを見ていた限りスケルトン達に30回以上は攻撃されないと倒されないくらいだった。

 スケルトン達は2ターンで倒れてしまったというのにこの温さよ。


 戻って来た冒険者の人達が10連回しとけばよかったと言いたくなる気持ちが分かるくらい、大した事がない相手だった。


「ドロップアイテムとして〔成長の種〕が出て来ましたね。

 〈育成〉で使うのがすぐに分かりますが、この辺も先輩のスキルが元になってますね」

『なんとなく予想できていた事だけど、ちょいちょい自分のスキルが不特定多数に露呈されてて微妙な気分だ』

「安心しなさい。蒼汰のスキルがいくつか知られたところで誰もなんとも思わないから」

『酷いよ冬乃!?』


 まあこの世界での出来事だと思ってくれるだろうし、誰も気にしないだろうから気にするだけ無駄なんだろうけど。


 チュートリアルで敵との戦い方を学んだ乃亜達は、早速手に入れた〔成長の種〕を〈育成〉で使い、自らのキャラを強化。

 その際に再び〈育成〉を使用したことによる〈クエスト〉から1ポイントゲットできた。


「なんだか拍子抜けするくらいポイントが貯まりやすいね」

「最初の内だけだと思う、よ」


 ポイントの貯まりやすさに少し緊張感が緩んだ様子のソフィアさんは肩の力が抜けていたけど、咲夜の言う通りさすがにとんとん拍子でポイントが手に入るのは序盤だけだよね。


『それでもこれだけポイントが貯まりやすいなら、あと1回くらいは10連を回しても良さそうなのです』


 ボディコンを着ているアヤメがスマホを見てそんな事を言っていた。


 ……やっぱり改めて見ても思うけどアヤメのボディコン姿って凄まじく似合わないな。

 元がぺったんこだからボディーラインを強調する服がどこも強調されていない悲しさ。泣いていいよ。


『今のご主人さまなら殴り倒せそうなのです』

『お願い止めて』


 僕の視線を敏感に感じ取ったのか、怒り顔でこちらにフヨフヨと近づいて僕の頭をペシペシと叩いてきた。

 生まれて数カ月も経ってなくても女ということか。


「まだここに入ったばかりですから何とも言えませんが、〈クエスト〉の報酬は1つのクエストごとに後から受け取れますし、10ポイント+〈クエスト〉内で5ポイント貯まったら一度戻って〈ガチャ〉をしてみましょう」

「そうね。〈ガチャ〉のアイテムで強化していった方がこの先も順調に進めそうだし、乃亜さんの提案に私は賛成よ」


 冬乃の発言後、全員が冬乃に続いて賛同したので、乃亜の提案通りに建物内をある程度見たら元いた巨大なカプセルトイのある場所へと戻る事にした。


 その後の戦闘もチュートリアルの時同様余裕の一言であり、出て来る敵はデフォルメスケルトンだけで戦闘が終わる度にキャラのHPも回復しているので、負ける要素がどこにもなかった。


 思った以上に拍子抜けした僕らは、10ポイントと5ポイントが貯まったので元いた場所に戻ろうとした段階で、ふとおかしなことに気付いた。


『あれ? そういえばここに何人も入ってたと思うけど、全然遭遇しないね』

「もしかしたらほぼ同時に入った人とのみ共に行動出来るのかもしれない、ね。

 サーバーが違うとか、レイドボスの時のみ全員が同じ敵と戦えるとかみたいな感じで」


 あーなるほど。

 その辺はゲームによって違うから何とも言えないけど、ここまで人と遭遇しないとなると咲夜の言う通りなのかもしれない。


 しかしそうなるとオリヴィアさんと遭遇するのは難しそうだな。

 〈ガチャ〉が回せる空間でなら合流できるかな?


『オリヴィアさんと合流できるかは運次第ってことか』

「まあこの試練なら死ぬような事はよっぽどな事がない限りないし、合流できなくても大丈夫じゃないかしら?」

「そうだね。フユノの言う通りそこまで心配しなくていいでしょ。オリヴィアも引き際くらいわきまえてるだろし、今から〈ガチャ〉の空間に戻るのだから合流できたなら一緒に行動すればいいよ」


 冬乃もソフィアさんも楽観的だけど、確かにそこまで心配する要素が今のところないからね。

 そんな訳で誰一人焦る事なく〈ガチャ〉の空間へと戻り始めた。


 そうしてしばらく後に僕らは〈ガチャ〉の空間に戻ると何故かそこは先ほどまでと違い、人の熱気が凄い事になっていた。


「このガチャは逃せられねえ!」

「あの装備はオレのモンだ! 誰にも譲らねえぞ!」

「アレがあればボス戦も余裕じゃないの。これはもう回すしかないわね!」


 なに、これ?


 異常なまでに冒険者の人達のテンションが高いけど、一体何があったと言うんだろうか?


「くっ、ポイントを使い切ってしまったから私ではあのガチャを回す事が出来ない……!

 仕方ない。すぐに〈クエスト〉をこなしてポイントを貯めなければ!」

『あ、オリヴィアさんだ』


 幸いにもすぐにオリヴィアさんを見つけれたのはいいけど、他の人同様にテンションが高くなっているのは何でなんだろ?

 今は工事現場で着られているようなズボンのダブついた作業服を着ており、魔法少女のコスプレからは脱しているからもうガチャを回す目的は達しているはずなのに。


 ……魔法少女のコスプレ姿はちょっと見ていて可愛いと思ったのは内緒の方向で。


「……分かった」


 オルガは人の心を読んで発言するのは極力止めてね。心臓に悪いから。


「……善処する」


 それはともかくオリヴィアさんだ。

 彼女は、というかここにいる人達は一体何に興奮しているんだろうか?

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