第12話 渋!?
〈ガチャ〉の空間の熱量がさっきと今で有り得ないくらい違っているのだけど、一体何があったのか分からなかった僕らはすぐにオリヴィアさんに聞くことにした。
『ねぇオリヴィアさん。随分とガチャを回したがってるみたいだけど、一体どうしたの?
もう服はまとも(?)なの着てるよね』
「ん? ああ、鹿島先輩か。実はさっきウサギと猫がまた来て、新しいガチャの説明をしだしたんだ」
『ほう……!』
新しいガチャとな?
そのフレーズだけで心が躍ってしまう。一体どんなガチャなんだ……!
「先輩の目が元からデフォルメ化してて人形みたいな綺麗な目をしていたのに、さらに澄んだ目になりましたよ」
ガチャが好きなんだからいいじゃないか!
僕の目なんかよりガチャだよガチャ。
僕がオリヴィアさんを見つめていたら、まるで圧に負けたかのようにたじろぎながら、オリヴィアさんはどこかソワソワした様子を見せる。
「あのガチャの筐体に近づくと持ってるスマホにそれが出て来るからそれで確認してくれ。
私は急いでまた〈クエスト〉をこなしてポイントを貯めなければいけないからな」
いつもより少し早口で、すぐにでもガチャを引きたいのがありありと伝わって来た。
そっかそっか。ウエルカム。こちらの道へようこそ。
「先輩、そんな同志を見る様な目で……」
『ガチャは人が考えた最高の文明』
「大袈裟すぎません?」
大袈裟じゃないよ乃亜。
ほら、見てごらん。みんな
意欲が強すぎて目がギラギラしすぎている人がたまに殴り合いをしている光景が見えるけど、それはスルーで。
「さて、私はもう行くぞ」
「あっ、待ってくださいオリヴィアさん。一緒に行動しませんか?」
「悪いが断る。これはもう
オリヴィアさんはそう言うとすぐさま今度は先ほどとは別の黒い渦へと入っていく。
倒した敵の種類が一定数に達するとかその辺りの〈クエスト〉をこなすためかな?
「残念ですが止められませんでした」
「あれはもうしょうがないでしょ。それよりもオリヴィアが言っていた新しいガチャが気になるね。
何がそんなに周囲をここまで熱狂させるんだろ?」
ソフィアさんがスタスタとカプセルトイへと近づいていくので、僕らも一緒にそちらへと向かう。
「10連いくぞ!」
「甘いな、俺は30連分用意してきた。これで勝つる! ――――爆・散!!?」
「草」
筐体へと近づくにつれさっきまでと違い、10連回す事にまるで抵抗感を無くした人々の爆死する声が聞こえてくる。
冒険者や軍人は外の【Sくん】騒動を収めるために中に入ってきたはずなのに、なんだか遊んでいるようにしか見えなかった。いいの、それで?
――ピロン
「〈ガチャ〉の画面に【!】のアイコンが付いた、ね。何が変わったのかな?」
咲夜がそう言いながらスマホをいじりだしたので、僕も何が変わったのか気になるので覗いてみる。
〖限定ガチャ 〈【煩悩の仏】特効ガチャ〉 が解放されました〗
……(ゴシゴシ)……目がおかしくなったのかな? 【煩悩の仏】とかとある魔女がダブルピースしてこちらを見ている姿を思い描いてしまう。
見えている文字に対して頭が理解することを拒絶していた。
何度目をこすってもそこに表記されている文字は残念ながら変わらないけれど、それでも理解したくなくて再び目をこすってスマホの画面を見てしまう。
〖限定ガチャ 〈【煩悩の仏】特効ガチャ〉 が解放されました〗
悲しいことに頭も目もおかしくなったわけではなく、これは現実のようだ。【
『ヘイジョニー。また理解できていないやつらが来たぜ』
『急に変な喋り方してどうしたニャ?』
『キャラ変、かな? 何度も同じ説明したから飽きてきちゃって』
『そういうのは混乱の元だからやらない方がいいと思うニャ』
再びウサギと猫がクルクルと上から縦回転して降って来たと思ったら、着地と同時に妙な小芝居を始めかけた。
いや、そんなふざけてないで、この〈ガチャ〉の説明をしてよ。
『まあわざわざ説明しなくても〈ガチャ〉のヘルプを読めばわかるんだけどね』
『せっかくだから出てきてやったというわけニャ。というわけでヘルプを読むニャ』
『説明してくれないのかよ!?』
説明するために出てきたんじゃなかったの?!
『しょうがないニャ。特別に教えてやるから片膝をついて懇願するといいニャ』
『もうヘルプを読もうか』
こんなのに話を聞いてるだけムダだと悟った。
『冗談だよ冗談。ここからは真面目に話すから話を聞いて欲しいな』
次ふざけたらヘルプを読もうと僕ら一同は口に出さずとも同じ思いを抱いて、仕方なくウサギの話を聞くことにした。
『それじゃあこの〈ガチャ〉についてだけど、この〈ガチャ〉には【煩悩の仏】というボスに対して戦闘の際に
『【煩悩の仏】、というかボスは〝鍵〟を所持しているニャ』
『ボスを倒せるということは、【典正装備】争奪戦において有利にしてくれると言っていいかもしれないね』
なるほど。
だからみんながみんなこんなにも必死になってこの〈ガチャ〉を回そうとする訳か。
『ちなみに排出確率は0.01%だニャ。天井なんてものも存在しないニャ』
「「「『『それは渋すぎる!?』』」」」
実際のゲームなら炎上ものの設定に唖然としながら、僕らは鎮座するカプセルトイを眺めずにはいられなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます