幕間 友人と
≪蒼汰SIDE≫
「久しぶり、彰人」
「ホント久しぶりだね。冒険者学校に行ってる間は仕方ないにしても、夏休みに入ったのにこんなにも遊べないとは思わなかったよ」
今日は彰人と大樹と遊ぶために駅前に集合していた。
ここ数ヶ月ほとんど乃亜達と行動していたので、こうして彰人達と休みに会うのはかなり久々な気がするね。
「ゴメンゴメン。週5でダンジョンに行ったりしてたし、行かない日は宿題を片付けていたから、中々都合が合わなくて」
学校のある日は時間がないから週6でダンジョンに行っているけれど、夏休みなので時間があり1日でダンジョンに潜れる時間が長いのと、宿題が山のようにあるのでそれを片付けるために週5に抑えている。
宿題なかったら毎日のようにダンジョンに行っていただろうな~。
「ダンジョンや宿題だけじゃないよね?」
ニヤリと僕を見て彰人が笑ってきた。
うっ、やっぱりそれを言われるか。
「先週は随分と楽しそうだったじゃないか」
「……彰人もあの写真見たのか」
「そりゃクラスメイトのグループであげられてたんだから、見るに決まってるよ」
乃亜達3人と一緒にレジャー迷宮で遊んだ時の写真。
全員が水着になっているにも拘わらず、くっついてはしゃいでいるところを乃亜が何故かSNSにあげてしまったがために、彰人以外のクラスメイト男子から怨嗟のこもったメッセージが大量に送られたのは記憶に新しい。
「せめて大樹が忘れていてくれれば――」
――ポンッ
「棺桶と十字架、どっちがいいか選べ」
「土葬、火葬、磔刑は勘弁してくれないかな?」
噂をすれば影じゃないけど、名前を呼んだらすぐに現れたのだから内心ビックリしつつも、冷静に返答……処刑されそうな選択肢を提示されたのに冷静に返せる時点で、なんかこういうやり取りに慣れてきたみたいで嫌だなぁ。
「うぅ……、羨ましいぜ……」
「そんな泣きそうな目で見ないでよ」
「大人の階段を数十段飛ばしで常人じゃ到達できない位置まで上り詰めたやつが、嫌そうな目でこっちを見るんじゃねえ!」
「いや、上ってない上ってない。全力で回避したよ」
エバノラの発情試練は本当にキツかったけど、ギリギリ耐えられた。
もしあれで発情に負けていたら、翌朝全員が裸でベッドに寝ていたであろうことを想像するとゾッとする。
既成事実はキチンと責任を取れるようになってからです。
「なんで回避するんだよ!? そこはむしろぶつかりに行くべきだろうが!」
「大樹は蒼汰にその階段を上って欲しいのか欲しくないのかどっちなんだい?」
「当然上って欲しくないが普通抱けるなら抱くだろ!」
暗に一般的思考じゃないと言われているようで解せない。
まあ少しは変な自覚あるけどさ。
「大樹の気持ちは一応分からなくはないけど、あの後大変だったんだよ。具体的にはまた【典正装備】手に入れるような事になった、って言えば分かる?」
「嘘だろ……。確か3つ目じゃねえの、それ?」
大樹が僕の左手首に刻まれた入れ墨を見て愕然としていた。
入れ墨自体は【典正装備】が1個だろうが2個だろうが見た目はそんなに変わらないから、見たところで違いなんか分からないだろうけど。
そのため【典正装備】を1つ手に入れる度に入れ墨がドンドン広がっていくような事はないので、左腕全体が入れ墨に染まるような事にはならないと分かった時にはホッとした。
人が入れ墨を入れることを否定しないけど、僕にファンキーな趣味はないので自分で入れたいとは思わないから助かったよ。
「それよりまた【
「まあ命の危険
「どういうことだい?」
「実はね――」
僕は先週起きた出来事を簡潔に2人に説明すると、大樹が膝から崩れ落ちた。
「相手がいねえから、その試練に参加できねええええええええ!!!!」
「あはははははは!」
「そんな地面を叩いて悔しさを表現しなくても。あと彰人も大笑いしてないで。2人のせいで周囲の目が痛いから」
「ていうか、3人の美少女と混浴とか水着の写真よりも許せねえ!!」
「そんなこと言われてもなぁ」
大樹が試練を受けたいとか言い始めると思って、試練を受ける条件であるハーレム用の風呂に入らないといけないことを伝えたのだけど、失敗だっただろうか?
「でも大樹。大樹がハーレム作ったらそこ行って混浴して試練を受ければいい話じゃないかい?」
「おいこら彰人。だから相手がいねえんだよ、相手が」
切実な問題である。
「冒険者で金稼げれば、モテるはずじゃねえのかよ……。日本で一番の冒険者と言われてる風間さんなんて嫁が8人もいるんだから、このまま頑張ればモテるようになるはず、なのか……?」
段々自信がなくなっていて哀れですらある。
「モテたいなら蒼汰でも参考にすればいいんじゃないかい? すでに3人も恋人がいるんだから」
「僕に聞かれても困るよ。ほとんど成り行きみたいなものだったんだからさ。それよりも彰人に聞いたら? 結構女性に声をかけられること多いんだし」
いや僕なんてホントに参考にならないから、いやいやボクこそ、みたいな感じでお互い押し付け合うみたいな形になっていたら――
「お前ら2人なんて大っ嫌いだーーー!!」
「「うわっ!?」」
大樹が急に起き上がって腕で涙を拭くようにして走っていってしまった。
「ちょっ、待ってよ大樹!」
「今日は一緒に遊ぶんでしょ? あはは、やっぱり大樹は面白いな」
「笑ってる場合じゃないよ彰人。急いで追いかけないと」
その後、大樹をなだめるのに少し時間がかかったけれど、久々に大樹達と楽しい時間を過ごすことができた。
――――――――――――――
・あとがき
次話は1週間後を予定。
頑張ってプロット諸々考えます
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