第9話 私の嫉妬力は53万です
『何、これ。有り得ない。こんなにも高い数値でどちらも拮抗しているだなんてどういうこと!?』
おそらく僕のリア充具合と嫉妬心の数値がサラさんにだけ見えているんだろうけど、その数値、知りたくないなぁ。
『リア充値が通常のカップルの30倍なのに、それに拮抗する嫉妬心を抱えているってなに?!』
はて? そこまで言われるほど嫉妬してるかと言われると自覚がないんだけどなぁ。
ああ、でもそう言えば普段から乃亜達が戦闘で活躍したり、まともに戦闘に使えそうな【典正装備】が出ているたびに羨ましいと思っていた――
「どうせガチャでしょ」
「「「「あ~」」」」
ですよね。
背後から冬乃で呆れているような声が聞こえ、それに対してみんなが納得していた。
まあ確かに。僕が[無課金]スキルのせいで課金できずに満足にガチャを回せないのに、フレンド登録している連中がイベントキャラをこれ見よがしろに助っ人キャラにしていることに何も思わなくもないし?
加えて言うならそれが完凸(※同じキャラを限界まで合成していること)状態だったらなおのこと羨ましいと思わなくもないし?
『し、嫉妬心がドンドン増えていってるですって!?』
ん? さっきまで指の第一関節までが限界だったのにもっと入れそうな感じだなぁ。
そう思って結界に手を押し込むと手首のところまで入っていった。
なるほど。こんなのでいいのか。
僕はスマホを取り出しとあるゲームを起動させた。
そのゲームではちょうど恒例のぐだぐだイベントが開催されており、そのイベント特有のガチャには新キャラと新装備が実装されている。
当然僕はこのガチャを回したのだけど、無課金のガチャ石なんて回せる回数は微々たるもの。
そんな少ない回数では新キャラはおろか、新装備すらろくに手に入らなかった。
『そ、そんな……! 嫉妬心が15万、いや16万!? それもまだ上昇するの!?』
イベント画面を開くと、そんな僕をあざ笑うようにフレンド登録している連中は「新キャラ出てないやつおりゅ?」「装備完凸は当たり前だよな!」とでも言わんばかりに助っ人キャラに登録してあるのが目に入る。
………。
………………。
………………………。
「羨ましい……!!」
『ぎゃっ!? 嫉妬心がついに20万の大台を超えた!?』
あまりにも妬ましい光景に思わず声が漏れてしまった。
壁に手を叩きつけたい衝動に駆られるも、手首までだったのがついに右腕全てが結界を素通りしていて空振りしていた。
おっ、ついに腕まで入るようになったな。
『『アハハハハハッ!!』』
『ちょっ、お姉さま達、笑っている場合じゃないんですけど!? なんだかよく分からない理不尽な方法で結界が突破されそうなんですけど!?』
『キシシシ、無理よ無理。その子の侵入を阻止するとか絶対無理だから』
『クシシシ、私達の試練の時だってこんな有り得ない方法で突破されたもの。というか、自分で妨害すればいいんじゃないの?』
『それが出来たらとっくにやってますよ! 今のわたしは入ってきたばかりの侵入者には直接危害を加えられないんです!』
『『じゃあ諦めたら?』』
『素っ気なさ過ぎる!!』
魔女達が話している間にも僕は嫉妬心を沸き立たせていく。
やってるソシャゲが1つだけだと思うなよ?
僕は次々にイベント開催しているソシャゲを起動していく。
その画面を見る度に歯ぎしりしたり手を強く握りしめすぎて血が滲んでしまっていたのだけど、それに気が付いたのは結界の中に完全に入った時だった。
『そんなバカな……』
『キシシシ、普通じゃないわ。嫉妬心ってこんなにも簡単に沸き立たせられるものじゃないのに』
『クシシシ、全くもってそうね。こんなにも自由自在に変動させられるとか、逆にその嫉妬心がいつ爆発するか分からなくて怖いわ』
サラが膝をついて泣きそうな表情で僕を見ており、マリとイザベルはため息交じりに予想通りの結果だと肩をすくめていた。
『わ、わたしの結界がこんなリア充に負けるだなんて……』
「なんかごめん」
でもこれ僕が悪いんだろうか?
嫉妬心次第で入れる結界の方が問題じゃない?
『やっぱりあの時協力しないで正解だったわね』
『まあこんな規格外な事が出来る人間はほぼいないでしょうけど』
マリとイザベルが膝をついて嘆いているサラを冷ややかな目で見下ろしていた。
「先輩、いつもながら無茶苦茶ですね。
ところでこの結界の原因でもある“嫉妬”の魔女が目の前にいますが、何もしないんですか?」
結界の向こう側で乃亜にそう言われハッとした。
せっかくこんなに近くにいて攻撃する機会だというのに、ソシャゲが頭の大半を占めていたせいで忘れていたよ。
「無理だ高宮。私が先ほどから攻撃を仕掛けようとしているのだが、そうしようとするたびに体が動かなくなる」
僕よりも先に結界を通り抜けていたオリヴィアさんが、いつの間にか剣を手に持っているけれど、サラに斬りかかりに行こうとせず立ち尽くしていた。
まるで“怠惰”の魔女のように攻撃する気を無くしているかのよう。
『そ、それはそうよ。わたしが入ってきたばかりの人間に攻撃できないというルールに縛られている以上、ここに入ったあなた達にだってルールが適用されるのは当然だわ』
魔女特有の能力というより、エバノラの時のような試練内でのルールがダンジョンに入った時から適用される感じなのか。
『もったいないわね。そのルールだって3体分のリソースを結界に使ってしまってるから、1体分の【
『そうよね。確かにリア充って基本的に成功者だから結界を通れなくするのは理にかなっているかもしれないけど、強い人間が必ずしも入れないわけじゃないのだから、普通にその3体をそのまま運用した方が良かったわ』
『も、もういいじゃないですか……』
そう言えば今通り抜けた結界は【
だけど魔女達は元々自身が生み出した【
僕はふと疑問に思ったことをサラに向かって聞いてみたら、マリとイザベルに好き放題言われて半べそになりかけていた時だったせいか、まるでそこから逃げるように僕のふった話題に飛びついた。
『フヒッ、いいわ教えてあげる。わ、わたしが結界に使ったのは【朱雀】【四天王】、そして【白虎】よ』
この魔女、自分が元々同化している【
「え、【白虎】ってクロのことじゃないか!?」
え、まさか生贄にでもされてしまったというのだろうか?
もしかして手遅れ……?
--―--------------------
・あとがき
今まで“嫉妬”の魔女と出くわした時の伏線として、蒼汰に常日頃からみんなが羨ましいという心情を書いてきたというのに、その伏線がガチャ関連での嫉妬によって潰されてしまった……
ガチャに執着しすぎるせいで伏線にならなかったんだけど!?(´;ω;`)
だからサブタイでふざけてやった。後悔はない
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます