第14話 試験(2)
ゴーレムの大群を前にしてどうするかだけど、白線を超えられたら終わりなのであんまり悠長に考えている暇はない。
「私の〔
どうしたものかと考えていたら白波さんが剣を見せながらそう言った。
「確かに僕らの中じゃ一番威力のある攻撃が出来るのって、白波さんのそれだけだよね。
じゃあ乃亜は僕らをゴーレム達の攻撃から守って、白波さんはそれを連射する方向でいこう」
「分かりました」
「オッケー」
白波さんは早速剣先をゴーレム達に向けた。
「〈
[狐火]5発分の倍、10発分の圧縮された[狐火]がゴーレムへと放たれた。
――ドオンッ!!
先ほどは直撃しても少し焦げる程度でしかダメージを受けなかったのに、今回直撃を受けた個体は周囲のゴーレムと共に吹き飛び、明らかにスクラップになっていた。
直撃をまぬがれた個体も、動いてはいるけど手足がちぎれていたりで、まともに前に進むことも出来なさそうだ。
「最初っからこれをぶっ放しておけば良かったかしらね?」
「あまりそれに頼り切りだと、成長しなくなりそうで不安だけどね」
「分かってるわ。でも今は使い時でしょ?」
「それは確かに」
僕は頷きながらスキルで呼び出してるスマホを操作して、乃亜にしたように白波さんの剣のコピーを呼び出した。
「それじゃあガンガンいきましょ」
そう言って白波さんは何度も〔
「なにあれ!? 全然効かないんだけど!?」
何故か1体だけ異様なまでに硬く、〔
僕らとの距離――白線まで10メートルを切ってきていて、このままでは不合格になるのは間違いなかった。
「わたしが止めます! 先輩!」
「なに――んっ!」
乃亜が僕に跳びつき、軽くキスをしてきた。
「あいつらこんな時に何盛ってんだよ」
後ろから試験官の声が聞こえて来た気がするけど、どう説明すればいいやら……。
……スキル[強性増幅]の説明が出来ない以上、どうしようもないと今気づいた。
人前では出来るだけ見せたくないスキルだ……。
「はあっ!」
乃亜が特殊なゴーレムへと近づきその動きを止めるため、大楯を強化された身体能力を駆使し、思いっきり振るってゴーレムを押し返す。
しかしそのゴーレムは押し返された後、乃亜を敵と見定めたのか、拳を握って乃亜へと叩きつける。
――ガンッ!
「ぐっ、〈
ゴーレムは自身の放った攻撃が〔
ゴーレムの拳を大楯で受け止めた時、[強性増幅]で強化されているにも関わらず乃亜は苦し気な表情をしていたので、あのゴーレムの膂力が相当強いことが分かる。
「私の攻撃は
……ん?
さっき乃亜が〔
その疑問はすぐに乃亜が教えてくれた。
「先輩、これ、薄っすらとですが結界を全身に纏ってます! 攻撃するときは消えますけど、それ以外の時はずっと纏ったままです!」
乃亜がゴーレムの攻撃を受け止めながら教えてくれた。
なるほど。それで白波さんの攻撃がまるで効かなくて、乃亜の攻撃だけ通ったのか。
「分かった! 結界ならなんとか出来るから、しばらく耐えて!」
「了解です!」
「私も[狐火]で目くらまし程度に援護するから急ぎなさい!」
僕が何をするのか2人はすぐに察し、【典正装備】の力を使わずに立ち回り始めた。
僕はスキルで呼び出したスマホを1回送還し、〔マジックポーチ〕から練習でしか使用していなかったスリングショットと弾を取り出し、左手首を一周している入れ墨へと触れる。
僕に入れ墨を入れるようなファンキーな趣味はない。
この入れ墨は【典正装備】を会得した際に刻まれ、この入れ墨に【典正装備】が収納され持ち主から離れないようになっているんだ。
入れ墨に触れた状態で【典正装備】を取り出す意思を込めると、【典正装備】が出現する仕組みだ。
僕は現れた固形墨をスリングショットの弾を持っている右手で持ち、そのままキーワードを口にする。
「〈
手に持つ固形墨が途端にドロリと解け、一緒に握りこんでる弾にまとわりついていく。
「乃亜、白波さん!」
僕が2人の名前を呼ぶと、すぐに頷き行動する。
「〈
乃亜が〔
僕はそれを見てすぐにスリングショットで黒くコーティングされた弾丸を発射した。
「侵食しろ〔
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます