第38話 満たされなかった者
「この部屋にドッペルマスターはいないから、別の場所を探しに行こうか」
『ご主人さま。一瞬しか見てなかったのです』
「大丈夫。この部屋には女王と豚しかいなかったから」
『いやどんな部屋なのです?!』
世の中知らない方が良い事もあるよ。
アヤメ以外は分かったのか特に何も言わないでくれていることだし、出来れば一刻も早くこの場所から立ち去りたいんだ。
アヤメが知りたそうにしているのをなだめた後、他の場所を探し始める。
いくつもの場所で取り込まれた人達がいるのを確認したり無人の部屋を物色したりした後、廊下を歩いている時だった。
『小っちゃい女ーーー!!』
「はっ?」
突如として現れたパンイチの中国人の男が僕らに向かって襲い掛かって来た。
というか、乃亜を目指して向かって来た。
「乃亜!」
「大丈夫です。はあっ!」
『ぐふっ!』
男の人は乃亜に大楯を振るわれて殴り飛ばされたけど、強力な一撃を受けたのにすぐに立ち上がって来た。
『ロリーーー!!』
「効いてません?! というか、近づかれたくないのですが!」
何度も何度も復活してくるゾンビみたいな変態は乃亜に執拗に迫っていくので、乃亜は大楯で幾度となく殴り続けて反撃。
何度目かの攻防でようやくそれは殴り倒された。
「何なのですかコレは?!」
「まあ乃亜がそう言いたい気持ちは分かるよ」
『ロリーーー!!』って叫びながら襲ってきたんだから、コレ扱いは仕方ないよね。
『これはもしかして、この人の欲求が小柄な女性を求めることだったんでしょうか?』
「多分そうよね。乃亜さん以外目もくれなかったもの」
「アヤメちゃんに目がいかなかったのは小さすぎたから、かな?」
冷静に考察しているけど、襲われた乃亜としては堪ったもんじゃないだろう。
なんせロリコンに襲われたのだから。
「大丈夫、乃亜?」
「すっごく嫌な気分です」
そう言いながら乃亜が僕に抱き着いて来て慰めて欲しそうだったので、頭を撫でてあげる事にした。
「うみゅ~」
「この小動物感」
見た目が幼いのも相まって、余計に子供っぽく見えるのは黙っていることにしよう。
『『『女ーーー!!』』』
まあそんな事言う暇もないんだけど。
ロシアと中国、両方の国の男の人が『女』と叫びながらこっちに向かって来た。
「何なのこの人達? 女の冒険者なら取り込まれている人達の中にもいたし、今まで見てきた部屋には大勢でそういう事を致していた場所もあったからそこに行けばいいじゃん!」
『年増しかいねぇんだよ!』
『20歳超えたらババアです』
『小柄な子以外は抱けない』
なるほど。
要するにこの城の中に用意されているものでは満たされない連中なわけだ。
そのため高校生である乃亜達はこの人達のターゲット足り得る存在ということか。
「逃げるよりもぶっ倒しましょう! おそらくさっきの人みたいにしつこそうですから」
「賛成ね。それになんか女の敵って感じがするし」
「同意」
『殺っちゃうのです!』
殺したら何のためにここに来てるのか分からなくなるよ。気持ちは分からなくもないけれど。
目的はソフィアさん達だから、最悪いいと言えばいいのかもしれないけどさ。
『『『やれるもんならやってみな!』』』
……なんでそんなに自信満々なのだろうか?
この人達、さっきの人と同じでパンイチで武器も持ってないんだよ?
そんな人達が相手だからか乃亜達がボコボコにするのに時間はかからなかった。
「殺りました!」
「いや殺しちゃダメだから」
襲ってきた男達は顔とか膨れ上がり体は青あざだらけにはなったけれど、呼吸はしてるし生きているから問題ないかな。
『見つけたぜ!!』
「うわっ、またですか……」
今度は端正なイケメンのロシア人が現れ、乃亜はその人物を辟易した表情で睨みつける。
「かかってくるなら相手になりますよ!」
『あっ? オレはロリ趣味じゃねえ!』
「はぁ。どんな趣味にしろ私達の誰かが目的なんでしょ」
嘆息しながら冬乃が呆れた目で現れた男を睨みつけるけど、その男の返答はあまりにも予想外であったため目を見開く事になった。
『違うな。オレにはケモ耳も巨乳女子高生も人形趣味も無い!!』
『「「「……まっ、まさか!?」」」』
乃亜達4人がゆっくりと僕を見た後ロシア人の男に再び視線を戻す頃には、男の顔が僕を見つめてとろけた表情になっていた。
『うほっ、いい男。……ヤらないか?』
「最悪だ!!?」
凄いゾワッてきたんだけど!?
なんて残念なイケメンなんだ。
『嫌がる顔も中々いいじゃないか。ここにはガチムチの男ばっかでいい男がいなかったんだよ』
……帰ったら体、鍛えよ。
「ヘルプ!!」
「任せてください先輩。先輩の貞操はわたしが守ります!」
その大楯は本来であればけしてあんなものから守るために使われるものではないけど、お願いです守ってください!
「ヤらせるわけないでしょうが!」
「蒼汰君を、困らせないで!」
『……ちょっと見てみたくありません?』
裏切り者が1人いるんだけど!?
「そういうのは二次元だけで十分です!」
「蒼汰のそんな姿は見たくないわ」
「興味ない、かな」
『味方がいないのです……』
いや、アヤメが勝手に敵側に寝返っただけなんだよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます