第5話 3人の【典正装備】
「じゃあ今度は咲夜達の番」
『ふーっ! ワタシの【典正装備】が火を噴くのです!』
いや、アヤメの【典正装備】自体は攻撃能力ないじゃん。
主人に似ているのか、アヤメの1つ目の〔
……ないんだけど、主人である僕より直接戦闘に使えそうな【典正装備】なのはズルくない?
僕6つも持ってるのにどういう事なの?
「キシャ―!」
「次の獲物が来た。咲夜が行く。〔
甲冑ミミックが現れたのを見た咲夜はそう言いながら取り出したのは鍵だった。
咲夜は目の前の何もない空中に鍵を刺し込むとその箇所が不自然に歪み、鍵を捻って回すことでその歪みは大きくなり直径30センチほどの黒い渦が発生する。
『ワタシもやるのです。〔
そう言うアヤメの手には懐中時計が存在しており、それを手にしたアヤメは咲夜へと近づいていく。
『〈
「てい」
気の抜けた掛け声とともにいつの間にか持っていたこぶし大の石を黒い渦目掛けて投擲した、ようだ。
僕の支援がないにもかかわらず、腕の振りが早すぎて見えなかったんだ。
――ドゴン!
「キシャー!?」
そう思ったのと、同時に硬い物同士がぶつかるような音とミミックの悲鳴が響く。
ミミックはまるで
ミミックのいた場所の上をよく見るとそこには白い渦が存在しており、【アリス】の時に空間を移動する際によく見ていたものと酷似していた。
「まあそこそこ便利、かも。生物が通れないって限定が無ければもっと良かった」
「元々直径30センチの大きさの渦しか生成できないんだから、生物はどの道無理じゃないかな?」
僕はそう言いながら咲夜の手に持っている鍵、〔
〔
もっともその範囲は使用者の視界の範囲内だし生物は通れない仕様だけど、インターバルは存在しない。
直径30センチまでだから楯のように使うのは微妙だけど、相手に不意打ちを食らわせたりするにはいいんじゃないかな?
『これ、効果範囲が狭いのが微妙なのです。しかも1人にだけ倍速に反比例した時間、時を加速させますが、たった2倍でも7.5秒はないと思うのです。しかも最大5倍速ですし、時間は効果を受けた人物の体感時間なのですから』
いや強いよ。
現実では一瞬でも、体感たった3秒だけとはいえ最大5倍速で動けるのなら、十分以上のアドバンテージと言えるよ。
確かに効果範囲が1メートルだしインターバルも1分あるけど、その制限を含めて考えても戦闘を有利にしてくれる。
う、うらやましいとか思ってないし……。
僕が仮にそれを手に入れていたところで、アヤメのような小柄な体じゃないから咲夜に引っ付いて移動しながら使うのは難しかっただろうからね。
〔
「……シンプルな効果は羨ましい。ボクのはちょっと使いにくい」
「オルガのは戦闘で使えるからマシなんじゃないかな?」
僕のはどう戦闘に使えばいいんだろ?
「……相手の精神を乱すのには使える」
「それは効果で言ってる? それとも
オルガが[マインドリーディング]で僕が思っていた事に反応してきたけど、思わず過敏に反応してしまった。
だってしょうがないじゃん。
まだ習字道具シリーズだった方がマシな代物だったんだから。
「キシャ―!」
「……ん、今度はボクの番。〔
オルガが取り出した【典正装備】は1枚のカード。
しかしそこには何の絵柄も書いて無く真っ白なカード。
そのカードをオルガは自身の腕に貼り付けると、そこに浮かび上がるのはスペードの6。
「……速さが上がった」
そう呟きながら普段よりも速い動きでぬいぐるみミミックへと近づくと、そのまま短剣で切り刻んで消滅させた。
「……やっぱり使いにくい」
「貼り付けるまで何が強化されるか分からないからね」
オルガの【典正装備】はトランプであり、その効果は自身に貼り付けた際浮かび上がる模様によって変動する。
ハートはスタミナ向上、スペードは速度向上、クラブは攻撃向上、ダイヤは防御向上で、トランプの数字2~13、そしてエースの順に能力の強化が上がるようだ。
効果時間は1分固定であり、途中で切り替えることは出来ない。
インターバルは53回使った段階で12時間使用できなくなるけど、仮に20回までしか使っていない状態で12時間経てばリセットされるらしい。
そしてトランプである以上ジョーカーが存在するわけだけど、その効果は不明だ。
「結局ジョーカーがどんな効果なのかは分からないんだよね?」
「……そう。ジョーカーは完全なランダム。能力の向上は他の4種類のエースよりも強いけど、決まった効果はない、ゆえに不明」
52枚全て使い切った後にのみ使えるジョーカー。
「……じゃあ最後は蒼汰」
え、やだ。
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