第27話 あざとい。だが男だ
昨日と同じように慎重にダンジョンを探索した僕らは、キチンと寮の門限に間に合う様に余裕を持って帰還した。
大樹達と同じ様な目に遭うのは嫌だからね。
「おかえり。今日は早かったね」
「あ、はい、ただいま戻りました矢沢さん。今日も門限に間に合うかのチェックですか?」
生徒会長の矢沢さんが昨日に引き続いて男子寮の玄関にいた。
「そうだね。とは言えそれも君ら留学生がいる間だけだけど。普段は管理人さんがチェックしてくれるんだけど、留学生の相手は基本的に生徒会が担当だからね」
「なるほど。でも今日は1人でチェックしてるんですね」
「2人で見張るのは留学生が来た初日だけだよ。もっとも門限を超えちゃうのが留学初日で、後は今日の鹿島君のように余裕を持って寮に戻ってくるからさ」
門限破りの罰則が重すぎるから、誰だって余裕を持って行動すると思う。
「そう言えば鹿島君。あのゴミって言われてる石を集めてるってホント?」
「あ、はい、そうですけど」
「何に使うの?」
「スキルで有効利用出来るかもしれないんです」
今のところ集めろとしか言わないけど。
「鹿島君のスキルって[無課金]だけだよね? そのスキルとあの石を組み合わせての利用方法が全く思いつかないな……。
ねえ鹿島君。もし良かったら石をどんな風に使うのか教えてくれないかな?」
「えっ?」
「鹿島君が自身のスキルについて人に話せる範囲でいいからお願い。ダメかな?」
男だと自称するなら首を軽く傾げて、あざとくこちらを見てこないでください。
矢沢さん、内面までスキルに侵されてるんじゃないだろうか?
「もちろん自分が渡す石の代金はいらないし、生徒会長として他の生徒に積極的に持ち帰ってもらうよう指示しておくからさ」
強権まで発動するとか、どんだけ知りたいんだこの人。
「何でそこまでして知りたいんですか?」
「……正直な話、
だから自分にどう利用するつもりなのか聞いてきて欲しいと言われたんだ」
「それなら校長が自分で聞きに来ればいいのに」
というか、お金を払ってでも集めるって言い始めたの、今日大樹に放課後遭遇した時なのに、校長の耳が地獄耳すぎない?
「そこは大人が聞きに行くより、同年代に聞きに行ってもらった方が威圧しないし、言いたくないのに無理に言わせることのないよう配慮したんじゃないかな?」
見た目アメコミの校長で脳筋っぽく見えるのに、キチンと配慮出来る大人だったとは意外だ。
「まあ隠すほどでもないから構いませんが。ですが僕もどんな風に利用できるか分かりませんよ?」
「わざわざお金を払ってまで集めてるのに?」
確かにそうなんだけど、ソシャゲと同じでコンプ欲が刺激されて、ただ集めたいだけだったりする。
何に利用できるかは謎だけど、有効活用できればラッキー程度に思ってたし、これが少しでも自身の強化につながるのであればやらない手はない。
……100万あればそこそこの魔道具が買えるけどね。
〔毒蛇の短剣〕が確か3万だから、100万あればかなり良い近接装備は買えそうだけど、僕がそんな装備を買っても宝の持ち腐れだし、かといって遠距離武器の魔道具は100万程度では買えない。
まあ下手に援護するより、スキルで服とか武器とか直すのに集中している方が敵を効率よく殲滅出来てしまうのだけど……。そのため遠距離武器は未だにスリングショットしか持っていない。
それはさておき、僕はスキルのスマホを取り出すと、矢沢さんにも大樹と同じように[放置農業]を見せて説明した。
「……よくそれに100万近くもお金を使おうと思ったね」
説明したら呆れた目で見られてしまった。
1個100円で集めている事を知られているからか、すぐに100万使ってまで集めようとした事に気が付いたようだ。
「集めてからのお楽しみってのは分かったよ。じゃあ自分が見つけたら鹿島君にあげるから、集めきった時にどう利用できるか、教えられる範囲でいいから教えてね」
「分かりました。ありがとうございます」
ラッキーだね。これで少しお金が浮くよ。
「こんな所で長々とごめんね。それじゃあ夕食やお風呂にいってくるといいよ」
「はい。それじゃあ失礼します」
矢沢さんと玄関で別れると、夕食とお風呂を済ませて割り当てられた個室へと向かう途中、パブリックラウンジで大樹のパーティーと模擬戦をした智弘さんのパーティーが談笑しているのを発見した。
「おう、蒼汰。今日も門限破らずにダンジョンから帰ってきたんだな」
「今日は結構余裕を持って帰ってきたからね。ところでこんな所で何してるの?」
「ああ、オレ達留学生どうしで、この学校に来る前に何をしてたかの情報交換をしてたんだよ」
「ボクらの互いのスキルとか、教えられる範囲でだけどね」
僕がダンジョンへと行っている間に、ちょっと興味深い事をしていたようだ。
「へーそうなんだ。僕も話に混ざっていいかな?」
「もちろんだぜ蒼汰」
「むしろ君とは話してみたいと思っていたから、丁度いいよ」
他の6人も、うんうんと頷いて僕を歓迎してくれたので、適当に空いてるソファーに座る事にした。
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