第36話 特別報酬
「【
『ええ。ちなみに私は理性のある状態であなた達の言う【
確かにエバノラの試練はこちらにほぼ被害を与えてこなかった。
羞恥という面では冬乃がかなりの大ダメージを負っているけれど、肉体的には与えられたダメージ0だ。
せいぜい自分で噛みついた腕が負傷したくらいか。
「じゃあさっきまでの試練では【
『それは違う。我は試練に組み込まれただけだし、そもそも我の前で問答していた時にも言った通り、あの試練に貴様らの言う【
「うわっ?!」
「「「きゃっ?!」」」
試練の時の大仏と同じ口調の黒猫が、突然現れたので驚いてしまった。
『アンリ、あまり余計な事言わないで』
アンリと呼ばれた黒猫はエバノラが寝そべっているところに近づくと、チョコンとお座りした。
『はぁ~。主がそう言うのであれば従いますが、別に余計な事ではないと思いますよ』
「……猫が喋ってる」
『その子は私達魔女が創った使い魔よ。本当の猫じゃないから、人間みたいに喋るし賢いわよ』
魔女のおともと言えば猫だし喋ることもあるか――なんて納得できない!
けど【
『おい貴様ら。貴様らは【
ゲームでたとえたからか、咲夜が少し目を輝かせて黒猫を見ていた。
「猫でもゲーム、知ってるんだ」
『主に、付き合わされてな』
この黒猫、エバノラに振り回されているのか、その一言に随分と哀愁が漂っていたぞ。
『分かりやすく言えば、貴様らが今まで対峙してきた【
「環境?」
『1つの世界と言ってもいい。ボスの方はそれを倒すことが試練となり、環境の方は提示されたお題をこなすことが試練となる。言ってることは分かるか?』
「まあなんとなく」
マ〇オでいうところの、ク〇パを倒すか、ゴールまでたどり着いてステージをクリアするかの違いなんだろう。
そう考えると【
「それにしてもエバノラ以外の魔女が怒りで【
憎い相手に塩を送るとか、普通しないよね。
『それは制約だからよ。倒された相手に報酬を与える制約をつけることで、より強力な【
もしもつけなかったら、生み出した場所のダンジョンと同じ程度か、それ以下の強さの【
なるほど。そのお陰で僕らは【典正装備】を手に入れられた――、それがなかったら死ぬような目に遭わなかったんだけどな……。
『ま、そんな話はどうでもいいわ。それよりも特別報酬の方よ!』
「そういえばさっきも言ってましたね。報酬が【典正装備】だけじゃないって言ってましたけど、何をくれるんですか?」
【典正装備】だけでも十分……、むしろ【典正装備】も別にいらなかった。
あの【典正装備】ならマジでいらなかった。うん――
「やっぱりいらないです」
『そんな事言わないでよ!? メインのご褒美なのよ!』
え、今、
「この【典正装備】がメインの報酬じゃないんですか?」
『そっちも確かに重要なのだけど、さっきも言った通り性欲に抗って試練を突破できたあなた達には、スペシャルなご褒美を渡す事ができるのよ』
「……嫌な予感がするから、受け取り拒否できません?」
『受け取り拒否却下! というか、ここであなた達を逃したら、この先いつ次の攻略者、しかも性欲に流されない子が来るか分からないのよ!』
『主が“三枚のお札”で試練を作って、攻略されるのに50年くらいかかってますからな』
もうそこまで経って攻略されてなかったら、試練の方が悪いと思うよ。
『日本人に分かるように現地の物語で作ったのに、察しが悪すぎると思うわ』
あの試練で“三枚のお札”と分かれと?
それに発情させられるせいで頭が全然回らないのに察しろとか、無茶ぶりもいいとこでしょ。
『まあ何だかんだでクリアできた子が現れたから良かったわ。それじゃああなた達、私に向けて手を伸ばしなさい』
「何をするんですか?」
エバノラにそう尋ねると、涅槃のポーズから起き上がってベッドに腰かけたエバノラが、その豊満な胸を突き出ように逸らして不敵な笑みを浮かべてきた。
『ふふん。特別な報酬、それはね――』
エバノラが言葉を区切って、こちらにビシッと指をさしてくる。
『ダンジョン操作権限のスキルよ』
……えっ?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます