第3話 遊びに行こう!
「先輩、遊びに行きましょう」
「え、突然どうしたの?」
ダンジョンからの帰還中、突然乃亜にそんな事を言われたので思わずどうしたのか尋ねていた。
「
「確かにそうね。前に【
「その通りです冬乃先輩。そして何より一緒に遊ぶ約束をしていたはずなのに、未だそれを果たせていません!」
言われてみれば[カジノ]の派生スキルを確認していたときにそんな話をしたっけ。
「ちょうど明日は土曜日ですし、ダンジョンに潜ってばかりもあれなので、みんなで遊びに行きませんか?」
乃亜の提案に僕は顎に手を当てて考えるけど、すぐにその答えは出た。
「そうだね。僕は賛成かな」
「もちろん私もよ」
「咲夜も」
こうして僕らの明日の予定は決まったわけだけど、女の子3人に男1人で遊びに行くところを大樹達に見られたら何言われるか分かったもんじゃないよ。
◆
遊ぶと決めた翌日、とある駅で僕らは待ち合せた。
しかし誰かと遊ぶなんて何か月ぶりだろ?
ふざけたスキルが身に着いてから大樹達とは遊んでないことを考えると、3カ月ぶりじゃないだろうか。
3カ月前はこうして女の子と、しかも複数人と遊ぶことになるなんて想像もしてなかったからなー。
そう考えると少し緊張してきたかも。
あれ、おかしいな?
ガチャにしか興味がなかった僕がこんなことで緊張するだなんて。
「あっ、先輩おはようございます。お待たせしましたか?」
自分の心情に若干困惑していたら乃亜がやってきたので、その考えは頭の隅へと追いやる。
「おはよう乃亜。待たせるのは悪いと思ったから早めに来てただけだよ」
家にいても何もすることがないだけでもあるけど。
やはりテレビくらいは買うべきか。
「おはよう」
「おはよう3人とも。みんな随分と早いわね?」
乃亜が来て立て続けに咲夜と冬乃もやってきた。
どうやら僕ら全員は待ち合わせの時間より少し早めに集まるタイプのようだ。
普段ダンジョンに潜ってばかりだったから、互いの事をこうして知れるのも楽しいと思う。
長いこと一緒にいるような感覚だけど、起きた出来事が濃いだけでまだ知り合ってそれほど経ってないことを今更ながらに実感した。
「それでどこへ行くのかしら?」
「あまり明確に決めてませんでしたからね。何かしたいことはありますか?」
僕らはノープランで集まっていた。
遊ぼうと決めたはいいけど、互いの趣味をいまいち理解していないのもあって特に決めていなかったんだよね。
「僕は特にないけど……。強いて言うならアドベンチャー用品店で買い物かな~」
本日の趣旨に外れるだろうけど、咲夜の装備をいい加減整えたいのと、
そう思っていただけなんだけど、何故か冬乃からジト目で見られていた。
「あんたまたガチャ回したいの……?」
「いや違うから」
確かに僕はガチャが好きだけど、アドベンチャー用品店に置いてあった現実のガチャは所詮代替品程度の物であって、アプリゲーのガチャとはまるっきり別物だ。
好きなゲームでガチャをするのがいいんであって、ヒリヒリ感も高揚感も少ない現実のガチャにはいまいち燃えないんだよ。
萌えではなく心が燃えるかどうかだ。
しかし僕のこの心情は全く理解されなかった。
「先輩、どうしてもやりたいのであれば5万までですよ」
「いや本当に違うんだけど……」
まるで子供に言い聞かせるような口調で言われた。解せぬ。
「したいことでふと思ったのが、咲夜の装備を整えるのと何かいい魔道具がないか見たかっただけだよ」
「確かにそうね。咲夜さん、今でも蒼汰が渡した普通の指ぬきグローブ使ってるから、少しはまともなのにしないと」
まさかないよりマシだと思って渡したのをずっと使い続けるなんて思わなかったから、昨日のダンジョンで
咲夜なら[鬼神]のスキルの効果で生半可な攻撃じゃ傷つかないだろうけど、見てるこっちが不安になるのでちゃんとしたのを買って欲しいと思ってる。
「あれがいいのに……」
「使ってくれるのは嬉しいんだけど、咲夜は拳や蹴りを主体で戦うから、もう少し身を守って欲しいんだよね。ただ今日は遊ぶのが目的だから、今度一緒に買いに行こう」
「分かった」
あのグローブに執着していた割に素直に頷いてくれた。
「一緒に買い物~♪」
ただ必要な買い物をするだけなんだけど、それだけでも嬉しいのか上機嫌になったね。
出来ればもう少し自分の事に頓着して欲しいけど、まあそれは僕らが見ていればいいか。
「さて、それじゃあ何をしようかしら? 私、ほとんど遊んだことないから何がしたいのか全く思い浮かばないのよね」
冬乃が困った表情をして、本当に何をすればいいのか悩んでいた。
冬乃とは違う意味でかもしれないけど僕だってそうだ。
大樹達とならともかく女子と遊びに行くことなんて今までなかったから、何で遊べばいいのかいまいち頭に浮かばない。
大樹達とならカラオケか家でゲームとかかな?
そんな風に悩んでいたら、咲夜がおずおずと手を上げた。
「あ、あの、咲夜行ってみたいところがあるんだけどいい?」
「どこですか咲夜先輩? 今いい案がないので言ってみてください」
乃亜が咲夜を促す様に言うと、咲夜がコクリと頷いて口を開いた。
「ゲームセンター」
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