エピローグ2


≪蒼汰SIDE≫


 大樹や矢沢さん達があまり病院に長居するのもいけないと言って、僕が目を覚ましたのを確認してしばらく話したら帰っていってしまった。

 今ここにいるのは僕以外には乃亜達だけ。


 ちょうどいいので、今回起きた出来事についてと今後の方針などについて話し合う事にした。


「それじゃあ今回、【典正装備】を手に入れられたのはわたし以外ですか……」

「落ち込まないでよ乃亜。正直それが手に入るのって運次第だし、狙って手に入れられないよ」

「分かってはいますが、なんか1人だけ除け者にされたような気分です……」


 今回ミノタウロスで【典正装備】を手に入れられたのは咲夜、穂玖斗さん、矢沢さん、智弘デッキさんの4人で、ヤ=テ=ベオの【典正装備】を手に入れられたのは僕と冬乃だった。

 ヤ=テ=ベオ相手にまともに戦ったのが僕と冬乃だけだったので、僕らだけが手に入れられたんだろう。


 矢沢さんや不川さんからバフを受けていたけれど、僕は直接戦ってないし、冬乃の[狐火]をチャージした〔籠の中に囚われし焔ブレイズ バスケット〕にはさほど影響がなかったから貰えなかったんだと思う。


「乃亜ちゃんには悪いけど、咲夜は嬉しい。これでみんなとお揃い」


 そう言いながら左腕を掲げて、そこには左手首を一周して刻まれている入れ墨があった。


 模様は若干違うけど、これで確かに全員が【典正装備】持ちでお揃いだと言える。

 今まで気にしてたんだね……。

 今回咲夜が手に入れてくれて本当に良かったと思うよ。


「今回の件でレベルも上がって新しい装備も増えたし、どこのダンジョンに行くか悩むところだね」

「あー、それなら安全にレベル上げがしやすい〔ミミックのダンジョン〕のままでいいんじゃないかしら? あの校長が今回の件で巻き込まれた留学生全員に、お詫びの名目で転校しなくても〔ミミックのダンジョン〕の探索を許可してきたから」

「え、そうなの!?」


 冬乃の話を聞いて思わず驚いてしまった。

 まさか僕が寝ている間にそんな話が出ていたとは。


「わざわざBランクダンジョンに行かなくても、〔ミミックのダンジョン〕の方が危険も少なくて稼げるわよ」


 お金はともかく危険が少ないのはいいな。

 今回危ない目に遭って死にかけたし、しばらくは多少安全な場所でレベル上げをするのがいいかも。


「うん、それが良さそうだね。それに今回助けてくれた謎の石達の回収も出来るし」


 ミミックからドロップする謎の石。

 これがなかったらスムーズに人が集まれなかったことを思うと、あの時より少ない人数でミノタウロスに挑むことになったかもしれない。

 そう思うと出来るだけ早く石を回収しきってあげたいと思うので丁度いいね。


 みんなとアレコレ話していたら突然病室の扉がノックされた。

 一体誰が来たのだろうか?


「どうぞー」


 僕が病室の外にそう呼びかけると、ノックをした人物が扉をガラッとスライドさせて入ってきた。


「思ったより元気そうね蒼汰」

「え、母さん!?」


 まさかの人物が入ってきた事に驚き目を見開いてしまう。

 どうしてこんな所に?


「なに驚いてるの。親なんだから子供が大怪我したって聞いたら、心配して会いに行くわよ」

「血が少なくなっただけで輸血して貰ったから大丈夫って父さんに電話で話したら、じゃあ行く必要はないなって言われたんだけど」

「それはあの男が非常識だからよ。全く、入院の手続きだけしてろくに顔も見せないとか……」

「まあその時は寝てたし、いつもの事だから」


 母さんが父さんを思い出してかしかめっ面していたけれど、乃亜達に視線を向ける時にはいつものキリっとした表情に戻っていた。


「それでこの娘達が蒼汰のお嫁さん達なのね?」


 親に突っ込まれたくない事を突っ込まれてしまった。


「いや、ちょ、なんで!?」

「テレビで言ってたじゃない」


 あれ見てたの!?

 乃亜がハーレム宣言したやつ!


「あ、はい。高宮乃亜と言います。初めましてお義母さん」

「お義母さん、四月一日咲夜です」

「白波冬乃です。よ、よろしくお願いしますお義母さん」


 冬乃が否定せずにそのまま受け入れてる!?

 そして3人とも母さんを呼ぶ発音がおかしくないかな!?


「……それなりに普通の暮らしをしていたはずの息子が、いつの間にこんなハーレム野郎に……」

「本人の前で言わないでくれない?」


 あと、意図したことじゃないよ。


「でもほとんど放任してきたんだもの。今更文句も否定もする気は無いわ。と言うかあなた達、本当にうちの息子でいいの? ガチャ馬鹿よ?」

「なんで急に褒めたの?」

「……これよ?」


 眉間にしわを寄せて親指で人をささないでくれない? これって言わないでくれない?


 呆れた口調で母さんが乃亜達へと問いかけるけど、それに乃亜達は即答した。


「はい、先輩じゃなきゃ嫌です!」

「蒼汰君がいいん、です」

「わ、私も……!」


 乃亜と咲夜に続いて、顔を真っ赤にして狐耳と尻尾をピンっと立たせながら、ハッキリと冬乃が肯定した事に対し、僕は嬉しいと思う気持ちが湧いてくる。

 母さんの前だから気恥ずかしいけど、自分に好意を向けられて嬉しくならない人はいないと思う。


「……なるほど、分かったわ。息子との婚姻は認めるし、何か問題があったらいつでも頼りなさい。義娘ですもの」

「「「親公認!」」」


 ははっ。外堀が埋められすぎててもうなくなってない?

 逃げ出すとか不可能なくらいで、平らどころかそこに築城すらされてる勢いなんだけど?

 嫌ではないけど、追い込まれてる感が凄い……。


「蒼汰。この3人に不誠実な事をしたら、親失格と言われてもおかしくない私でも、そんなの関係なく容赦なく締め上げるわよ」

「……らじゃーっす」

「分かればいいわ。じゃ、私は帰るわ」

「え、もっとゆっくりされていっても。もしもわたし達がお邪魔なら席を外しますが」

「気にしなくていいわ。仕事を抜けて来てるからそんなに時間がないし。後はお若い2人、じゃなく4人でごゆっくり」


 母さんは言いたいことを言い切ったからか、そのまま病室を後にした。


「ふあ~、いきなりでビックリしましたね」

「連絡も何もなくいきなりだったからね。当然と言えば当然だけど」

「でもこれで、なんの気兼ねもなくハーレムを目指せますね!」

「まだ父さんがいるけどね」


 もはや最後の砦とも言える。


「先輩の話を聞く限り、放任主義っぽいので大丈夫なのでは?」

「否定できない……」


 ベニヤで出来た石垣並みに期待できそうにないね。

 好きにしろって言われそう。


「それにしても冬乃先輩もようやく認めましたね」

「な、何よ。悪いの?」

「いえいえそんな事は。ただ先輩にキチンと伝えてないんじゃないですか?」

「うっ……」

「冬乃ちゃん、ファイト」


 乃亜と咲夜に発破をかけられたからか、意を決したような表情で僕を見てくる冬乃は、顔を真っ赤にして狐耳と尻尾はピンっと立たせていた。


「そ、蒼汰」

「う、うん」

「私、蒼汰の事が好きよ。ハーレムも、認めるわ。だから私も蒼汰のお嫁さんにしてください!」


 そう言って冬乃は僕へとギュっと抱き着いてきた。


 彼女を飛び越えて嫁宣言をされてしまっただけに、ちょっと困惑してしまう。

 すでに3回目ではあるけれど、こんな事慣れないからなんて返事をすればいいのか分からないよ。


「先輩先輩。勇気を出して冬乃先輩が告白して下さったんですから返事をしないと」

「蒼汰君は冬乃ちゃんの事、好き? 嫌い?」


 またその2択ですか?!


「蒼汰……」


 不安げな顔で見上げてくる冬乃。

 狐耳も尻尾も不安そうに垂れてる姿が愛おしく感じるほど可愛い。


「す、好きだよ……」

「蒼汰!」


 これ以外言えるはずない!


 パッと華が開いたかのような笑顔を見て、後悔など湧くはずもない。

 周囲と勢いに押されたけど、冬乃の事は憎からず思っていたのだから、むしろ嬉しい結果だとも言える。


「えへへ。これで完全にハーレムパーティーですね!」

「みんな一緒。すごく嬉しい!」

「「わぁっ!?」」


 乃亜と咲夜も冬乃と同じように抱き着いてきて、冬乃と一緒に驚いてしまう。


 狭い上で3人に抱き着かれるものだからみんなが苦しい思いをしているけれど、全員が幸せそうに笑っていた。



≪蒼汰母SIDE≫


「蒼汰のパーティー、凄いメンバーね。デメリットスキル2人、ユニークスキル2人でその内1人は魔素親和症候群、ね」


 蒼汰はとは言え、これだけのメンツが揃う事ってまず無いんじゃないかしら?


「普通の暮らしをするか、を選択させるはずが、どうしてああなったのやら」


 ……理由は分かってるけど。


「私が引き取るべきだったかなー」


 蒼汰が小学生の頃に孤独になった結果ガチャにハマったのだから、離婚してあの男に親権を渡すんじゃなかったと少し後悔するわね。

 収入がなく魔術師としてブランクのある母より、安定した稼ぎのある一般人と一緒の方がいいと思ったのに失敗したわ。


 あまりにも酷くハマってるのに気が付いたのがあの子が中学生の頃だから、もう手遅れ。

 ほとんど中毒状態で、少しは控えて食事や生活にお金を使うように言っても全然言うことを聞かなかったわ。


 このままじゃ将来どうなるかなんて火を見るよりも明らかだったから、魔術師の才能を少しいじって[無課金]のスキルを得るようにしたのに、ホントどうしてああなったのか……。


「まあ蒼汰はすでにスキルを得てしまって魔術師になれないから、将来どう生きるかはもはやあの子次第だわ。

 もっとも――」


 小、中学生の時に暗い目をしながらいつまでもスマホをいじっていた時と、今の蒼汰の目を比べて私は安心した。


「楽しそうだから問題ないわね」


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・あとがき


結局5章も話が長くなってしまいましたが、みなさんいかがだったでしょうか?

4章あとがきで長くなったり短くなったりしたらどうしようとか言ってましたけど、なんだかんだで他の章と同じ程度になったのにはホッとしております。


蒼汰)「(゜o゜)ポカン」

作者)『ん、どうした?』

蒼汰)「……え、母さんが魔術師?」

作者)『裏設定だったし本編にどれだけ絡んでくるか未知数だから……取り敢えず忘れろ』

( っ・∀・)≡⊃ ゜∀゜)・∵.グハッ

蒼汰)「は! 僕は一体……」

作者)『気にするな重症者』

蒼汰)「え、今その怪我人殴りませんでした?」

作者)『気のせいだ。そんな事より今章の事だが……まあ今回も反省することは多々あるな』

蒼汰)「だから何故ここで反省会をする」

作者)『記録しとかないと忘れるからかな?』

蒼汰)「あとがきを記録帳にするんじゃない!」

作者)『新キャラ増やし過ぎた……』

蒼汰)「人の話を聞きなよ」

作者)『デッキ君のパーティーがいなかったら、間違いなくちょっと長くなるけど4章で終わってたんだよな~』

蒼汰)「いなかったらミノタウロスを倒せなかったのでは?」

作者)『それは、ほら……頑張れ』

蒼汰)「行き当たりばったり過ぎる!?」

作者)『IFのことは考えない。だって書かないから』

蒼汰)「もうダメだこの作者。早くなんとかしないと」

作者)『そんな事言っていいのか?』

蒼汰)「ひっ!? い、嫌だ! 無課金は嫌だ!!」

作者)『え、いや、違うんだけど……。そんな無課金ばかり押し付ける訳じゃないからな』

蒼汰)「じゃあ一体何をする気なんですか?」

作者)『作中の日付を言ってみ?』

蒼汰)「7月後半くらいですよね?」

作者)『そう、夏だよ! 水着回だよ!』

蒼汰)「ダンジョンでレベル上げして、[無課金]をどうにかしたいんですが……」

作者)『会長がデメリット克服してたもんな』

蒼汰)「だからいち早くレベルを……」

作者)『おバカ!』

( °∀ °c彡))Д゜) スパーン

蒼汰)「既視感のある一撃!?」

作者)『嫁を3人も手に入れたんだから、少しは読者にサービスしなさい!』

蒼汰)「なんで自分の人生なのに他人目線を考えて生きなきゃいけないんだー--!!」


そんな訳で次回水着回をやります。それだけは決まっています。


そう……。それだけしか決まっていません!


4章、5章の事を思うと、きっちりプロットを考えねば……。

今までそれなりに書いてきたけど、水着回は初めてなので上手く書けるかの不安もありますが頑張ります。

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