第4話 デメリットスキル


 今回講習を受けに来た人は20人いたけど、その中で女性は5人だけだった。

 中には僕よりも年下に見える人もいたけど、ここにいる以上少なくとも1学年下か同学年ではあるんだろうね。


 まあそんな事はどうでもいい。

 僕は女の人目的でこの講習を受けている訳じゃないんだから。


 大樹はこの講習で組んだ相手が自分と同じでハーレムを目指していると知り、気が合って今もパーティーを組んでいるとか。

 1人でダンジョンに挑むよりも仲間とともに行く方がレベル上げも金稼ぎも捗るらしいので、是非とも誰かとパーティーを組みたいところだ。


 ………。


 ………………………。


 ………………………………………。


 知ってる? 現実ってそんなに甘くないんだよ?


 ここでもデメリットスキルが足を引っ張るとはね……。


 ダンジョンで1レベルでも上げるとスキルを持ってない人の場合はスキルを得ることになる。

 最初は誰もがレベル0で、魔物を1体倒すとレベルが1になり、その時にスキルを1つ習得するんだけど、パーティーを組んでいるので当然どんなスキルを手に入れたかが話題になるわけだ。

 しかし僕は元からスキルを持っているためスキルは手に入らず、初めから持っているスキル名を言うしかなかった。その結果――


「あ……、あ~そうなんっすか」

「大変ですね、頑張ってください」

「次も一緒に? あ、いや、俺はほら、前々から一緒にダンジョンで稼ごうって言ってくれてるやつらがいて、そいつらと一緒に行くつもりだから」


 使えないスキルを持っていると知ったら、また一緒にパーティーを組もうなんて思ってくれるわけないよね!

 そりゃ僕だって逆の立場だったら足手まといと一緒に潜りたくないのは分かるけど、少しくらい考えてくれてもいいじゃん!!

 世の中って世知辛いよ……。


 講習で色々な人に声をかけたけど、今パーティーを組んでくれている人と一緒に今後ダンジョンに行く事になったから、と断られるか、ストレートに足手まといはいらねえよ、と言われてしまい、残念ながら一緒にダンジョンに行ってくれる人は見つからなかった。

 最後のはさすがに少し傷ついた。


 講習を終え家に帰ってから、仲間が1人も出来なかった事実に打ちのめされ、大きくため息をつく。


「仕方ない、今度から1人でダンジョンに行くしかないかな」


 だからといってダンジョンに行くことを諦めはしないけど。

 スキル[無課金]を変質させるまでは――課金でガチャが引けるようになるまでは諦めてたまるか!


 僕はそう思いながら何となしに半透明のボード、ステータスボードと呼ばれているそれを開いて恨みがましくスキルを見た。


 ───────────────

 鹿島 蒼汰

 レベル:1

 HP(体力) :18/18

 SV(技能値):1


 スキルスロット(1)

 ・[無課金]

 ───────────────


 相変わらずスキルの箇所にある[無課金]の文字が腹立たしくて仕方がないね。

 しかしこのステータスの表記、ゲームみたいにSTRとか魔力とかそう言うのが無くて単純だけど、HPは想像がついてもSVは講習を受けていなかったらサッパリ分からなかっただろうな。


 HPはゲームと同じで、単純に0になれば死ぬというもので命の数値と言える。


 そしてSVだけど、これはスキルが関わってくる項目だ。

 SVはskill valueの略で、レベル1の者は例外を除いてほとんどの者が1であり、レベルが上がるごとに個人差はあるけどSVが増える。

 そしてこのSVが増えると、現在覚えているスキルが成長したりスキルスロットが拡張され、覚えられるスキルの数が増えたりする。

 言わばスキルの成長を示しているものだ。

 しかしスキルスロットの拡張は、レベルが1上がった程度では拡張されることはほぼないらしいけど。


「つまり僕は何の能力も持たず、いくつかレベルが上がらないと新しいスキルを覚えることもない役立たず、と」


 自分で言ってて悲しくなってきた。


 ちなみにスキルスロットだけど、横にある数字は覚えられるスキル数を示している。


「とりあえずレベルを上げて新しいスキルを覚えることを目標にしよう。そうすれば僕もパーティーを組めるようになるだろうし」


 幸いにも明日は日曜日なので、こうなったらとことんレベル上げを頑張ろう。




 この時の僕は知らなかった。

 ユニークスキルやデメリットスキル持ちが、実はスキルスロットの拡張がしにくい性質を持つことに。


 それゆえに、他の冒険者が新しいスキルを覚えづらいデメリットスキル持ちを敬遠しているということに。


 1、2レベルどころか10レベルは上げないとスキルスロットが増えることはないと知った時どれほどの絶望を受けるのかを、この時の僕はまだ知らない。


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