第29話 メッセージ

 

 僕は左上のメールのマークをタップした。


『派生スキル[カジノ]の解放おめでとうございます。

 ろくでもないスキルにも拘らずよくここまで成長出来ましたね(笑)』

「喧嘩売ってんのかこらっ!!」


 あんまりな文面に思わずキレた。

 [無課金]スキルとかいらねえんだよ!!


『そんなあなたに特別なプレゼントとして1000枚のメダルを贈呈いたします。

 [カジノ]ではこのメダルを賭けて増やしていき、ガチャのためのコインに交換することが出来ます。

 しかし万が一メダルは無くなってしまった場合、このスキルはなんの価値も無くなってしまいますよね。ぶふっ』

「一々こっちを煽ってくる文面は止めろよ!」

『でも大丈夫。[フレンドガチャ]には新しくメダルがアイテムとして入荷されています。

 頑張って人にペコペコ頭を下げてポイントを増やしてガチャを回しましょう!』

「………っ!!!」

「先輩が今まで見たことのない凄い形相になってます……」


 い、怒りでスマホを地面に叩きつけてしまいそうだ……!

 まさか自分のスキルでこうもおちょくられる時がくるとは思ってもみなかったよ。

 僕は怒りを抑えながら、戦闘中にきていたアナウンスを思い出す。


「ふぅ~。ああそう言えば確か2回プレゼントが来てたから、メイド服とメダルがそうなのか」


 そして解放された派生スキルが[カジノ]で、アップデートがあったのが[ガチャ]と[チーム編成]なのかな?

 一応残りの派生スキル[放置菜園]を確認してみたけど、これに関しては変更はなかった。

 むしろこれが一番アップデートして欲しかった。


 日に6個しか〔成長の種〕を〔成長の苗〕に出来ないので、肥料とかもっと色々な要素が増えて、手に入れやすくならないだろうか?

 ちなみに〔成長の苗〕は現在28個持っている。


 [放置菜園]を手に入れた日から地道に〔成長の種〕を〔成長の苗〕に育てているので、本来なら108個なければおかしいのだけど、残りの80個はすでに乃亜と冬乃に使っている。


 〔成長の種〕は1人30個までだけど〔成長の苗〕は1人40個まで与えられるようで、40個溜まった段階で一気に与えたらレベルが5は上がったくらい強くなったらしい。


「凄いですね先輩のスキル。わたしでもゴブリンメイジの結界を正面から砕けるようになりましたよ!」


 乃亜に与えてゴブリンメイジと戦闘をしてみたら難なく倒してしまった。

 元から冬乃がゴブリンメイジの結界を壊せていたけど、乃亜まで壊せるようになり、余計に僕の【典正装備】は〔ゴブリンのダンジョン〕では使う必要がなくなってしまったんだよね……。

 ふふっ、いいんだ……。


 ちなみに咲夜には〔成長の種〕を限界まで与えているけど、〔成長の苗〕はまだ1個も与えていない。

 一応まだ仮のパーティーメンバーという事もあるけれど、単純に僕がキャラクターを育てる時は1個1個与えるのではなく、まとめて与えて育てる派というだけだけど。

 ソシャゲでレベルアップ素材を一気に与えて、レベル1のキャラクターを一瞬でMAXにするのって気持ちよくない?


 いや、それはともかく今は[カジノ]だ。


「色んなソシャゲはやってきたけど、ド直球で賭け事するタイプのゲームはやった事ないんだよね……」

「蒼汰君もソシャゲするんだ?」


 僕がポツリと呟いたら咲夜が少し僕に近づいて尋ねて来た。


「うん。小学校の時からガッツリと」

「ああ。だから課金したがるのね」


 いや別に長くやってるからって課金をする訳じゃないから偏見だよ!


「咲夜もいっぱいゲームする。ソシャゲとか1人で遊べるタイプのばかりやってた」


 理由が分かるだけに泣けるね。


「……咲夜先輩。今度一緒に遊びましょう」

「い、いいの!?」

「先輩たちもこの“迷宮氾濫デスパレード”が終わったら、たまには息抜きがてら遊びましょう!」

「いいわね。そう言えばずっと働いてばかりだったし、今回の件でかなり稼げそうだから1日くらいいいかしら?」


 咲夜は目を輝かせ、冬乃も乗り気なようだ。

 まあ3人がいないとレベル上げも効率が悪いし、たまにはいいかな?


「そうだね。これが終わったら一緒に遊ぼうか」


 しかしよくよく考えてみると、大樹と彰人以外と休日にまともに遊んだ記憶がないな。

 ……ぼっ、ボッチじゃないし。ちゃんと友達2人いるし!


「そ、それじゃあその件はとりあえず後で詳細を決めるとして、今はスキルの方かな」


 僕は改めてスキルで出したスマホを見ると、下のタブのところにある[カジノ]をタップした。

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