第28話 前準備

 

 僕らは早速互いのステータスも含めて教えあった。


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 鹿島 蒼汰

 レベル:11

 HP(体力) :40/40

 SV(技能値):17


 スキルスロット(1)

 ・[ソシャゲ・無課金]

 →派生スキルⅠ:[フレンドガチャ]

 →派生スキルⅡ:[チーム編成]

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 高宮 乃亜

 レベル:13

 HP(体力) :44/44

 SV(技能値):22


 スキルスロット(1)

 ・[ゲームシステム・エロゲ]

 →派生スキルⅠ:[損傷衣転]

 →派生スキルⅡ:[重量装備]

 →派生スキルⅢ:[強性増幅]

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 白波 冬乃

 レベル:21

 HP(体力) :62/62

 SV(技能値):33


 スキルスロット(1)

 ・[獣人化(狐)]

 →派生スキルⅠ:[狐火]

 →派生スキルⅡ:[幻惑]

 →派生スキルⅢ:[獣化]

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 レベルはここ数日でそれなりに上がり、残念ながら僕はスキルが増えなかったけど乃亜にはまた1つ派生スキルが増えていた。

 ただ乃亜はそれがどんなスキルなのかは何故か教えてくれなかったんだよね。


「すみません先輩。これを使うにはちょっと勇気がいるので、ここぞという時には使いますからお願いですから調べないでください……」


 こうまで念入りにお願いされたら、[チーム編成]で知ることはできるけどさすがに自重している。

 [強性増幅]がどんなスキルなのか気になるところではあるけれどね。


 とりあえず白波さんには自身のスキルがどんな効果なのかを説明し、乃亜も派生スキルⅡまでの効果をデメリットも含めて説明した。


「……なっ、何と言うか変わったスキルね」

「顔が引きつってますよ」

「だ、だってしょうがないじゃない。そんな酷いデメリット聞いたことないもの。大変だったのね高宮さん……」

「僕は?」

「課金しないでガチャすればいいじゃない」

「死ねと?」

「なんで私の周りは1つのことを止めるよう言ったら死んでしまうのばかりなのかしら?」


 それが生きがいだからさ。


「あんたのスキルも結構変わっているわね。自身が全く強化されないけどパーティーメンバーを強化したり物資をだしたりするスキルなのね。急に挨拶するのに目覚めた変人じゃなかったわけだ」

「なんで今、サラッと罵倒したの?」

「じゃあ急に毎朝校門前で1人で挨拶してる人見たらどう思う?」

「何してんだろこいつ? って思うね」

「つまりはそう言うことよ」


 言いたいことは分かるけど解せない。


「2人のスキルは分かったわ。高宮さんが裸にされた理由もね」

「異議あり! その言い方だと僕が率先して乃亜を脱がして全裸にしたみたいじゃないか」

「却下よ。どのみち全裸にした事に変わりないじゃない」


 ジト目で白波さんが僕を見てくるけど何も言い返せなかった。


「まあまあ先輩。白波先輩はこれから自分も全裸にされるんですから、この程度の意地悪くらいは許してあげてください」

「えっ?」

「えっ、って先輩に衣装を登録しておいてもらわないとわたしのスキルでその服がボロボロになってしまいますよ?」

「うっ、それは困るわ……」


 少し葛藤するも背に腹は代えられない、と言わんばかりの表情で僕を見る。


「ほら」

「ほら?」

「やるなら早くやりなさいって言ってんのよ!」


 言ってないよね。


「先輩が白波先輩の方に顔を向けたままですけどいいんですか?」

「いいわけないでしょ!? さっき高宮さんにしたようにやってよ」

「分かってるよ」


 僕は後ろを向くとすぐに[チーム編成]で白波さんの服の衣装登録をした。


「先輩、もうこちらを向いていただいて大丈夫ですよ」


 乃亜にそう声をかけられたので振り向くと白波さんは顔を赤くしており、どうも恥ずかしいと感じているようだ。

 そりゃいくら背を向けていたとは言え異性の前で裸になったらそう感じるだろうけど。


「んん゛っ。それじゃあ次は私のスキルの説明ね」


 白波さんが恥ずかしさを誤魔化す様にして咳払いをすると、可視化したステータスボードを指さす。


「私のスキルは想像している通り[獣人化(狐)]よ。そしてその派生スキルが[狐火][幻惑][獣化]の3つね。

 [狐火]は前に鹿島に見せたように、ファイヤーボールのように炎の塊を射出するスキルね」

「ゴブリンメイジが使ってたファイヤーボールよりも威力が高くて、40体近くいたゴブリンをまとめて倒せるくらい凄かったけどね」

「ふふん。まあね」


 褒められて嬉しかったのか自慢げに胸を反らし、尻尾をユラユラと揺らしていた。

 あの尻尾や耳は結構感情が表に出てて面白い。それを言ったら怒りそうだから言わないけど。


「次に[幻惑]だけど、これはまあ名前の通り幻を見せる程度のスキルよ。今までゴブリン相手に1回しか使ったことないけど」

「便利そうなスキルなのに?」


 幻を見せてそれに気を取られている隙に攻撃できると思うけど?


「ゴブリン相手じゃ牽制のつもりで撃った[狐火]一発でもほとんど倒せちゃうのよ」

「納得の理由」

「8階層以下とかなら使う機会もあるかもしれないけど、1人で行くには危険だから自重してることもあってね。

 そして最後に[獣化]なんだけど……ごめん、これはあまり言いたくないわ」


 おや? 字面からなんとなく予想がつきそうなスキルだけど言い渋るくらい嫌なのかな?


「構いませんよ。わたしも1つ言っていませんしお相子です」

「そう言ってくれると助かるわ。いざとなったら使うけど極力使いたくないのよ」

「了解しました。あと確認するのはポジションですかね?」

「そんな大きな盾を持ってるくらいだから高宮さんは前衛でタンクよね?」

「そうですね。いつもはわたしが敵の攻撃を防いで先輩がシャベルで攻撃してます」

「私が言えたセリフじゃないけど、もっとマシな武器は用意してないの?」

「シャベルで十分倒せるからね~。一応短剣ならあるけどシャベルで殴る方が速いし威力もあるし」

「そりゃ短剣と比べたらそうでしょうよ」

「ところで白波先輩は何の武器を使うんですか?」


 確かに白波さんは手ぶらで何も持っていないけど現在背負っているカバンにでも何か入れてるのだろうか?


「何も持ってないわ。[狐火]で倒せるから。……あとお金ないし」


 レベルから考えると結構稼いでいそうなのだけど、お金に関してはあまり突っ込んで聞かない方がいいだろう。


「そうなんだ。じゃあ白波さんは後衛だね」

「獣人になって力が人並み以上にあるから素手でもゴブリンを倒せるし、前に出ても問題ないわよ」

「その時々に合わせて臨機応変でいいと思いますが、とりあえずは後ろから攻撃していただくという事でいいですか?」

「もちろんよ。じゃあ前衛は2人に任せて、私は後衛を務めるわ」


 もろもろ決まったので僕らはトイレから出て早速ダンジョンへと向かった。

 しかし毎回トイレからの出発だから、なんだかしまらないと感じるのは僕だけだろうか?

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