第27話 偶然の必然

 

 僕らは学校を出ると直接ダンジョンへと向かった。

 冒険者組合の施設に到着した僕らが早速いつも通り装備に着替えようと中に入った時だった。


「あっ」

「「あ」」


 ロビーには制服姿の白波さんがいた。


 この地域で最も近く手頃なダンジョンは〔ゴブリンのダンジョン〕であり、最初に白波さんと出会ったのも放課後だったのでこの流れは必然だったのかもしれない。


「あ、あなた達も今からダンジョンに?」

「そ、そうですけど……」


 なんとも気まずい雰囲気が僕と乃亜、そして白波さんの間で流れる。

 先ほど謝罪され、受け入れて別れたばかりなのに、こんなにもすぐに再会することになるとは思っていなかっただけに、どうしようといった気持ちが全員に漂っているのを感じる。


 うーん、白波さんとは今後会う機会がないのであればこのままでもいいかもしれないけれど、同じ学校である以上こうして遭遇することは少なくないだろうし、遭遇するたびに微妙な空気を醸し出すことになるのはよろしくない。


 同じダンジョンに潜る以上、前にモンスターハウスの罠にハマった時みたいに手助けがいる時がないとは言えないし、どうしても仲良くなれないのであればともかく和解したのであればそれなりに仲良くしておきたい。


 そうだな……。


「そういえば白波さんは誰ともパーティーを組まないの?」

「えっ?」

「いや、ほら、最初に会った時も前回も1人でダンジョンに潜っていたからそうなのかなって思って」

「え、ええ。初めて講習でパーティーを組んだ時、ナンパまがいの誘われ方をして以降あまり誰かと組みたいとは思わなくて……」


 軟派な男を嫌っていそうな白波さんがそんな目に遭えば、そりゃパーティーを組みづらいよね。

 女性冒険者の数って男に比べるとだいぶ少ないから女性同士で組むことってなかなかないだろうし。


「そうなんだ。それならもし良かったら僕らとパーティーを組まないかな?」

「「えっ!?」」


 2人が僕を驚いた目で見るけど僕は構わず話を進める。


「僕らは今2人だけでしかパーティーを組んでないけど、人数が多ければ戦力が増えてそれだけ下の階層にも行きやすくなると思うんだ」

「せ、先輩。それは確かにそうかもしれませんが、わたし達2人ともデメリットスキルだから白波先輩が何と言うか……」

「乃亜が懸念していることは分かるよ。

 僕らはデメリットスキル持ちで他の冒険者からはあまりパーティーを組まれたがらないから嫌がられるかもしれない。

 けど、最近はレベルが上がって出来ることが増えたんだし、デメリットスキル持ちだからってあまり遠慮していたら誰ともパーティーを組めないよ」

「それはそうですが……」

「それに僕らの目的はレベルを上げることだ。それなら出来るだけ下の階層で魔物を倒す方が効率がいいし、ついでにお金も稼げるからね。

 それで、どうだろうか白波さん。一緒にダンジョンに潜ってみないかな?」


 僕が白波さんへそう問いかけると彼女は顎に手を当てて少し考え、すぐにこちらに視線を向ける。


「いいわ、1度だけ試しに一緒にダンジョンに潜ってみましょう」

「え、本当に?」


 まさか本当にOKしてくると思わなかった。

 白波さんは明らかにユニークスキル持ちなので即戦力になることは分かり切っていたので、組んでもらえたらラッキー程度だったのに。

 断られても少なくともこの場から離れやすくなると思っていただけなのに、これは嬉しい誤算。


「なによ、冗談だったの?」

「いやそんなことはないよ。乃亜もいいよね?」

「はあ、先輩がそう言うのであれば」


 乃亜が若干しょうがないといった感じではあるけど許可が出たので、これから3人でダンジョンへと潜ることになった。

 早速僕らはダンジョンへ行く準備をしてロビーへと集まると、いつも通り多目的トイレへと入る。


「ちょっと、なんでこんな所に3人で入らなきゃいけないのよ」

「ここ以外だと乃亜が恥ずかしい目に遭うし、白波さんもダンジョン内でやるのは勇気がいるよ?」

「はい? どう言うことよ?」


 意味が分からず首をかしげる白波さんだけど実際に見せた方が早いか。


「いいかな乃亜」

「はい、いつでも構いませんよ先輩」


 僕は乃亜に背を向けて、スキルでスマホを取り出すと乃亜の方へとそれを向ける。


「なっ!?」


 背後では乃亜が一瞬全裸になったのを白波さんが目撃したんだろう。


「ちょっ、あんた一体何やってる、というか何やったのよ!?」

「簡単に言えばスキルのための前準備なんだけど……、僕は別にスキルを開示してもいいけど白波さんは?」


 一時的にパーティーを組むだけならばスキルを具体的には教えないことはよくある話だ。

 でも誰にも喋らないと約束してくれるのであれば白波さんなら教えていいと思っている。

 律儀に謝ってくるくらい誠実な人なので、むやみやたらに人のスキルを言いふらしたりはしないだろうし。


「……分かったわ。だけどスキルは他言無用よ」

「分かってるよ。乃亜は?」

「はい、わたしもOKです。むしろわたしのスキルの説明がなければ、先輩が何故か後輩をトイレで全裸にした人になってしまいますから」


 ……む、無実だ!!

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