第7話 ダブルエンカウント
聞き覚えのある老婆のような“声”。
そして見覚えのある魔女の格好をした骸骨。
忘れたくても忘れられるはずがない。
なにせそれと遭遇した証が、左手に残っているのだから。
「【
『っ!? 全員逃げて! 【
スピーカーから矢沢さんの切羽詰まったような声が響く。
ほとんどの人がそれが何かを理解していなかったけど、矢沢さんは近くにいた僕の発言から即座に周囲の生徒へと退避するよう呼びかけた。
「先輩、逃げましょう!」
「うん。あんなのと何度もやり合いたくないよ」
かれこれ既に【
いくら何でも運が悪すぎるよ!
【
冒険者学校にあるシミュレーターで、ただのBランクの魔物を相手に一杯一杯だったことを考えると、Aランク相当の魔物になんか敵いっこない。
以前は逃げきれなかったけど、身体能力が上がった今度こそ――
「おい、どうしてこっちに向かってくるんだ!? あっちには【
「何を言っているんだ! 【
なんでこんな時に揉め合っているんだ!?
避難する前の方で、こんな緊急事態にも関わらず口論しているのが見えたが、その周囲にいた人間がその意味を瞬時に理解して叫び出した。
「おい、こいつら真逆の方向を指さしてるぞ!」
「なっ、じゃあまさか【
はあ!!?
「嘘でしょ!? そんな事ってあり得るの!?」
「わ、分かりません! そんな話聞いたことも……」
「咲夜も知らない……」
3人とも【
だけど悠長に驚いてる場合じゃない。一体どこに逃げれば……!?
逃げたいけれど僕ら300人の集団の前後をおそらく挟むように【
今の状態の【
他の生徒たちは敵が【
今ならまだ近づけるだろうけど、対峙したことが無ければそれを知らない人が近づけるわけもないし……。
ヤバい。逃げられない!
僕の焦りなど関係ないとでも言う様に、僕らが遭遇した【
『9年ごとの生贄は誰? 14人の少年少女は誰のせいで生贄になる?
嫌だ嫌だ。食べられ――ザッ――たくない!
生贄に選ばれた少年少女は切に願い逃げ惑うも、出口はどこにも見つからない。
ああ、その願いは何度目の生贄で叶うのか』
一瞬ノイズが走ったかのように、見えている方の【
そしてそれは反対側からもだった。
『キャハハハハハ! 人間ハ皆エサ!
大きくたって関係ない。
絡めとってあげる。丸呑みにしてあげる。
飢えた大蛇が暴れるかのように、ぐるぐるに絡みついて吸い取ってあげる。
ああ、暴れるあなたの悲鳴は心地いい。ニッコリ笑いながら絞め落とそうか』
遠くて見えないけれど、確かに遭遇したのとは別の“声”が響いて来る。
2体同時に出現してしまったのは間違いないってことなのか!
『ラビュリントスからは逃げ出せないよ。
だってあなたは糸玉を持っていないのだから』
『逃げ出したくてももう遅い。
だって私はすでにあなたを見ているのだから』
前に遭遇した時はいきなり別の空間に移動してから語り始めていたけど、今回の【
だからまだ逃げるチャンスはあるはず!
語りが終わった直後、両方の【
「どこ、ここ?」
たった1人で石畳の上に立っていた。
≪馬渕校長SIDE≫
「校長! 【
「何だと!?」
バカな。ありえん!
【
いや、今はそんな事を考えている場合ではない!
「遠征は中止! すぐさま一部の生徒と教員を除き、地上に戻るんだ」
「一部の生徒というのは?」
「この緊急事態だ。実力のある生徒には協力してもらわないといけない。シミュレーターでBランク以上の魔物と相対して打倒したことがあるかを基準に生徒を残し、それに劣る力しかない生徒は地上に戻すんだ」
「了解しました!」
【
だが亜空間へと閉じ込められてしまっている場合、助けに行く手段など用意していない……。
急いで地上に戻り、亜空間へと侵入できる手段を用意しようにも、丸一日はかかってしまう。
不幸中の幸いは生徒会のメンバーが巻き込まれていることだが、彼らでも【
いや、今は亜空間に閉じ込められていないと信じて、なんとか生徒達を見つけなければ!
しかし私は最悪のケースも考慮にいれ、この中で最も移動の速い教員の元へと向かい、亜空間に干渉できるアーティファクトの入手を指示した。
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