エピローグ2


≪蒼汰SIDE≫


「シクシク、シクシク」

「もうこの最近こいつが机に突っ伏して泣いてるのがデフォなんじゃないかと思うようになったぞ」

「そうだね。テストも終わって解放されたけど、これ絶対テストの結果が悪かったとか、そんな理由で泣いてるんじゃないよ」

「じゃあ何で泣いてるか当ててみるか。負けた方ジュースおごりな」

「いいけど、絶対同じ答えになるよ」

「オレもそう思うが、せーの――」

「「ガチャ」」

「………………正解だよチクショウ」


 泣いてる人の左右で好き勝手言うとか酷すぎる……。


「また爆死? 懲りないね~」

「ガチャ石全損するのなんて慣れっこだろ。いい加減泣くの止めたらどうだ?」

「慣れてないやい。石は買えばいくらでも補充出来てたから全損なんて、無課金石しか手に入らない、ここ最近のことでしかないよ」

「こいつ、課金出来てる時は全損してる自覚がなかったのか」


 ガチャを回すための弾丸なら、現実からいくらでも補充できるから実質全損じゃないやい。


「でも今回は全損が理由で泣いてるんじゃないんだよ……」

「欲しかったキャラが手に入らなかったとか?」

「違う。欲しかったキャラはすんなりと出た」

「はい? なら泣いてる理由が余計に分かんねえんだが?」


 大樹は首を傾げて彰人の方へと視線を向けるけど、それに対して彰人は首を横に振っている。


「ボクにも見当がつかないね。結局どうして泣いてたんだい?」

「……欲しかったキャラが単発3回回しただけで出た」

「おう、良かったじゃねえか」

「3回しか回してなくて物足りなさを感じた」

「おや? いきなり怪しい流れになったね」

「もしかして後数回回せば、もう1体出るんじゃないかと思った」

「あ~」

「そこからは回しても回しても、欲しいキャラはおろか装備もロクなものが出なくて、気が付いたらガチャ石が無くなった……。なんであの時に止めておかなかったんだ……!!」


 あの時止めておけば次のガチャを沢山回せて欲しいキャラが出る確率が上がったのに……!


「自業自得じゃねえか」

「自制って言葉をどこかに置き忘れたんだろうね」

「ガチャに自制なんていらない」

「自制しなかったから後悔してるのに何言ってんだこいつ?」


 呆れた目で大樹にけどそんな事が気にならないくらいショックだ。


「そんな事よりも、だ」


 そんな事扱いされた。酷すぎる。


「なんでてめえの後ろで四月一日わたぬき先輩がさっきから頭を撫でて慰めてんだよ!」

「よしよし」


 分からないよ。

 放課後になって、昨日のガチャのダメージが抜けなかったから机の上で脱力してたら、急に現れたんだもん。


「咲夜はなんで窓から来たの?」

「今日は一緒にダンジョン行くんだよね? だからショートカットして来た」


 だからの意味が分からない。

 どんだけ早くダンジョンに行きたかったのさ。


「ちなみに頭を撫でてる理由は?」

「蒼汰君が悲しそうにしてたのと――」


 なんかそれで頭を撫でられるのは照れる――


「好感度アップのため」


 なんか彰人みたいな事言い始めたぞ。

 大樹の表情は怒りへと変化し、彰人は楽しそうな表情でワクワクしだした。


「あっ、咲夜先輩早いですね。もうここにいたんですか」

「うん。蒼汰君と接するにはスキンシップが大事なんだよね?」

「はい!」


 うおぃ!!


「いや乃亜。なに自信満々に頷いてるのさ。と言うか、咲夜のこの行動は乃亜のせいなの?!」

「う~ん半分はそうですが強制した訳ではないですよ」


 何ですと?

 本当なのか背後を振り返って咲夜を見たら、頷いた。


「実は乃亜ちゃんに相談してた」


 何を?


「どうやったらハーレムに入れるのかを」


 ワッツ?!

 咲夜がとんでもないことを教室内で言い出したためか、周囲がざわめき始めた。


「咲夜は蒼汰君が好き。乃亜ちゃんも好き。冬乃ちゃんも好き。ずっと、ずっと一緒にいたいと思った。

 その時ふと、乃亜ちゃんがテレビの取材の時にハーレムに賛同してる発言してたのを思い出して、みんなで結婚すればずっといられると思ったの」

「そして相談を受けたわたしは2つ返事でオッケーして、一緒に先輩を篭絡しましょうと誘って今に至ります」

「そこで普通オッケーだす?!」

「わたしですから」

「凄い説得力!」


 思わず、ですよね、って言いたくなったよ。


「でも先輩。わたしは誰でもいいからオッケーした訳ではなく、咲夜先輩となら先輩と共にいい家庭を築けると思ったからオッケーしたんですからね」

「いや、そもそも勝手にオッケーしないで欲しい」


 ハーレムとか作る気これっぽっちもないんですけど!?

 僕は複数の女性と結婚する気はないと言おうとしたところで、咲夜が回り込んで僕の手をギュッと握ってきた。


「蒼汰君は咲夜のこと、嫌い……?」


 そんな悲しそうな目で見ないで欲しい。

 咲夜が寂しがりやなのは分かってるのに、ここで拒絶とか出来る訳がない。


「いや、嫌いじゃないけど」

「じゃあ好き?」


 二択オンリー!?


「え、ええ、まあ……はい」


 なんとも締まらない返事をしてしまったけど、それでも咲夜は嬉しそうに笑った。


「えへへ。嬉しい」


 そう言って咲夜は僕の顔を両手で包むと、教室であるにもかかわらず僕にキスをしてきた。


「「「はああああああああああ!!??」」」

「「「きゃあああああああああ♪」」」


 男子たち怒声と女子達の黄色い声が教室へと響くけど、僕はキスされたことに頭が一杯で気にしている余裕はなかった。


「蒼汰君、だ~い好き。乃亜ちゃんに一杯キスしてたみたいに咲夜にもしてね」


 どこからかブチッという音が複数教室内から聞こえた。

 何も千切れていないはずなのに、何故そんな幻聴が聞こえてきたんだろうか、なんて現実逃避したかったが無理なようだ。


「「「蒼汰ーーーーーー!!!」」」


 彰人以外の男子たちが血の涙を流さんばかりの表情でこちらを睨んでいた。


「高宮さんに続き、四月一日わたぬき先輩までその毒牙にかけ、しかも一杯粘膜接触しただとーー!!」

「悪意のある言いかた!?」

「ちょっ、なによ。騒々しいわね」


 よほどうるさかったのか耳を押さえながらこの間の悪いタイミングで冬乃が教室に入ってきた。


「はっ!? まさかお前、白波も既にハーレム入りしているのか!?」

「してないわよ!」


 即行で否定した冬乃の発言は気にされず、男子たちが血走った目で僕を睨みながら徐々に近づいて来る。

 いや、怖いよ。


「処する?」「処する?」「処する?」「処する?」「処する?」「処する?」「処する?」「処する?」「処する?」「処する?」「処する?」「処する!」「処する!」「処する!」「処する!」「処する!」「処する!」「処する!」「処する!」「処する!」


 途中から確定事項になってる!?


「残念だよ。今日がお前の命日になっちまうなんてな」

「ならもっと残念そうな顔しない?」

「へっ。そりゃ無理な相談だ。なんせ心の底から嫉妬心に染まっちまってるからな。お前らやるぞ!」

「「「おう!!」」」


 一斉に僕を捕えようと無数の手が伸びてきて――


「だめ」

「駄目です」


 咲夜と乃亜はあっさりと大樹達を蹴散らしていた。


「先輩はわたし達とハーレムを築くんです!」

「絶対に蒼汰君は傷つけさせない」


 教室の端に寄せられるように次々と男子たちが積み重ねられていき、僕は指一本触れられずに済んだ。


「ううぅ、チクショウ。なんで蒼汰ばかり……」

「いや知らないよ」


 僕だって疑問に思ってるくらいなんだから分かる訳がない。


「じゃあ蒼汰君、ダンジョンに行こうか」


 咲夜は僕の手を取り、嬉しそうに笑ってそう言った。

 その表情はとても眩しく、誰よりも明るかった。

 もう1人ぼっちじゃないとでも言う様に。



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・あとがき


……長かった。

ホントは1章と同じ文書量にするはずだったのに、気が付けば4万文字くらい多くなってた。

[カジノ]とかふざけたスキル身に着けたの誰だよ……。


蒼汰)「いや、あなたが決めてるんでしょ!?」

作者)『そうだけど、そんなスキルが身に着くお前が悪くない?』

蒼汰)「理不尽な責任転換された!?」

作者)『デスパレード中にそんな話が入ったせいで、無駄に文字数持ってかれたし。

 うん、作者は悪くない。賭け事を未成年がするとか良くないよ?』

蒼汰)「そんな諭すように言わないでくれません?

 したくてしてる訳じゃないですし、実際にお金はかけてませんし」

作者)『はぁ~。反省って言葉を知らないやつはこれだから』

蒼汰)「あなたが言わないでくれますか!!」

作者)『作者は何も悪くない。ハーレムくそ野郎は黙ってて』

蒼汰)「望んでそうなってる訳じゃねええええ!!!」


と、叫んでいる主人公は置いておいて今章はいかがでしたでしょうか?

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