第11話 パトリシア・ブレイスガードル
「んっ? ああ、パティか。お前も【四天王】の討伐に来たのか?」
「当然じゃない。うちらが【四天王】を倒してやるんだからあんたの出番なんてないわよ!」
パティと呼ばれた金髪ツインテール少女は屈強な男の人達3人の先頭に立ち、オリヴィアさんに指さしていた。
乃亜やオルガよりは身長がありそうだけど、それでも150センチあるかといったくらいだろうか?
一見中学生くらいに見えなくもないけど、ダンジョンに入れろうとするのであれば16歳は超えてるのは間違いないか。
『どなたなのです?』
「あいつはパトリシア・ブレイスガードルといって、私とはいわゆる幼なじみというやつだ」
「親同士が同じ職場でその関係でね」
オリヴィアさんの紹介を引き継ぐように、パトリシアさんは肩をすくめながらそう続けた。
「そうなんだ。ということはパトリシアさんもオリヴィアさんと同じで国に仕えている感じ?」
僕がそう尋ねるとパトリシアさんは眉をひそめて、オリヴィアさんを睨んできた。
「なんであんたがそれを知ってんの? もしかしてリヴィ、あんた喋った?」
「そうだな」
「バッカじゃないの! そんなんだからあんたはわざわざ日本に行かされるのよ!
あの時はまだうちらはレベル上げに専念するべきだったのに、人手不足だからって命令されたんでしょうが」
「パティはまだレベル100にもなっていなかったからそんな命令をされることはなかったが、私はパティより誕生日が早くてレベルをある程度上げられていたからな。
まあ上からの命令なら従うしかあるまい」
「あんたみたいな扱い辛い脳筋バカ、惜しくないところに送られただけじゃん。だからあんたは――」
オリヴィアさんとパトリシアさんが口喧嘩、というかパトリシアさんが一方的にオリヴィアさんに対して怒鳴りだしてしまった。
この状況どうしようかと思った時だった。
――パンッ!
「「っ!?」」
「はいはい、こんな所で仲良く喋ってるんじゃないよ」
マイラさんが手を叩いて2人の注意を自分に向けていた。
「あんたらここで時間を潰してどうするんだい。いつこの〔ドラゴンのダンジョン〕で
「「わ、分かりました……」」
2人ともマイラさんには逆らえないのか、下手に言い返したりせずに素直に頷いていた。
「それじゃあ行くわよ。うちについてきなさい。先に行った連中に追いつくわよ」
「「「分かりましたお嬢」」」
パトリシアさんは後ろから付いて来ていた3人の男の人と共に結界を素通りしてダンジョンの奥へと向かって行った。
さすがにここで通れなくなる人がいるような人選はしていないようだ。
それにしても僕ら以外にも当然すでにこのダンジョンに入っている人がいて、“嫉妬”の魔女を討伐しようとしているのか。まあ当然か。
もっとも今さっきサラが目の前に現れたし、まだ攻略は難航しているのかな?
「それでは私達も行くとしよう。1人足りないが他のパーティーと共に行けばある程度戦力不足は補えるだろう。
それではお祖母様、行ってまいります」
「ああ、気を付けて行ってきな。
ま、地上の方は私に任せな。
万が一デスパレが起きても1日くらいは持たせてやるさ」
やだカッコいい。
50過ぎてなかったら惚れてたかもしれない。年齢知らないけど孫が高校生なら確実に超えてるのは間違いない。
うん、さすがに年齢の壁は厚い。
見た目20代だから錯覚しそうだけど。
「先輩、わたし達は〔ドラゴンのダンジョン〕の入口で待っていますので、気を付けて行って来てください」
「最悪“嫉妬”の魔女の試練とかクリア出来そうなかったら、すぐに逃げて戻ってくるのよ」
「冬乃ちゃんの言う通り。命大事に、ね」
「……死なない程度にガンバ」
「アメリカも残ってるんだから、これ片付いたらそっちだからねー」
みんなに生きて帰ってくるように言われ……、え、アメリカも行かなきゃいけないんですか?!
ソフィがさらっと紛れ込ませるように言ってくれるけど、もう勘弁してくれませんかねぇ。
もっと大人たち頑張ってくれないかな!!
「なんであんな明らかに結界に阻まれそうなやつが結界に通れてるの?」
周囲からボソリとそんな言葉が聞こえてきたけど、それは気にせずにアメリカの事も一先ず頭の片隅に追いやってダンジョンの中へと進むことにした。
ダンジョンは今まで入ったことのある所と違い、入り口が結構広く、中の空間も広い。
ドラゴンが通れるだけの空間となると、この広さも当然かもしれないな。
――~♪
警戒しながら周囲を見渡してパトリシアさん達の後ろを付いて行くと、ふとどこからともなく
そういえば彼(?)も来てたっけ。
色々インパクトがありすぎてすっかり忘れていたよ。
『みんな聞いてくれてありがとー!』
「「「わああああああっ~~~~!!」」」
アイドルのコンサート会場かな?
アイドルのコンサート会場だったわ。
ダンジョン内にもかかわらず、野外ライブのような立派な設備で歌って踊って愛想を振りまいている矢沢さんの姿がそこにあった。
ステージの周囲に護衛にしてはあまりにも多い大勢の人とともに。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます