第12話 盛り上がってるかー!(やけくそ)
「な、何だこれは……?!」
オリヴィアさんが驚愕の表情を浮かべてステージの方を見ていた。
そう言えば中国ロシアの時は遠くでライブしてたから、オリヴィアさんが近くで見るのはこれが初めてになるんだっけ。
矢沢さんが生き返らせるスキルを持っている話を聞いていても、具体的なスキルの内容は知らなかったんだろうな。
『あれは蘇生に必要な儀式なのです。
あの歌を聞かないと蘇生出来ない上に、あのステージを展開する大元のスキルを使用し続けなくても蘇生出来なくなってしまうのです』
「そ、そうか……」
アヤメが簡潔に矢沢さんの最終派生スキル、[
「「「わあああ!!」」」
それにしても矢沢さんの歌を聞いている人が無駄に多くない?
護衛にしても日本で【織田信長】の【
「あら、蒼汰ちゃんじゃない。こんな所で会うだなんて、あなたも国にここに来るように命令されたのかしらん?」
「あ、和泉さん。やっぱり和泉さんもいましたか」
「もちろんよ。恵を1人異国の地に行かせることなんて出来ないわよん」
オネエ言葉で喋るサラサラのロングヘアー巨漢、和泉さんが僕に気付いて声をかけに来てくれた。
「あ~鹿島君だ~」
「今日は別の女と一緒?」
「人聞きの悪いことを言うのは止めてくれませんかね」
和泉さんがいると言うことは当然同じパーティーで生徒会のメンバーでもあるこのみさんと鈴さんも当然いた。
「ところで
「ああ、あれねぇ……」
和泉さんは顔に手を当てて苦笑いしながら、矢沢さんのいるステージの前で歓声を上げている人達を見た。
和泉さんの話によると、どうやら彼らは魔女の討伐にダンジョンに入ったものの色々あって討伐に失敗したようだ。
そして討伐に失敗した後、生き残っていた者の中で引き返してた時に矢沢さんのコンサートを見てハマってしまったらしい。
他にもパーティーと共に入ろうとしたところ、パーティー内で何人かがダンジョンに入れなかった――つまり非リアだけがダンジョンに入れてしまい、悲しい気分を抱えていたところに
いや、そいつら何のためにダンジョンに入ったんだよ。
こんな入口から少し入ったところで足止めとか、新手のトラップになってるじゃないか。
「うわ~なにこの子? 新手の【典正装備】~?」
「飛んでる。不思議」
『ちょっ、止めるのです! それと人を【典正装備】扱いしないで欲しいのです!』
和泉さんの話を聞いている間に、アヤメがこのみさんと鈴さんに絡まれていた。
そういえばアヤメが生まれたのは冒険者学校に短期留学していた後だったから知らないんだっけ。
「この子はアヤメ。〔ミミックのダンジョン〕で手に入れた黒と白の石から生まれた存在だよ」
「はぇ~、あのゴミ扱いされていた石からね~」
『ゴミとは失礼だの』
「白い石が出てきて喋った」
シロがあんまりな言われようにスマホから飛び出してきた。
どの道呼ぶつもりだったからいいけど、君らホント僕のスキルの中で生活しているわりに気軽に出入り出来てるのってどういう事なの?
自分のスキルなのに自分以外の存在が好き勝手出来ていることに若干納得いかない――まあ今更だから気にするだけ無駄なのだけど――と考えている間に、お互いの自己紹介をしたのかアヤメとシロについて、和泉さん達はどういう存在なのかを認識していた。
「そうなの。お父さんを助けるためにここまで来たのねぇ。
あたし達は恵の傍を離れるわけにはいかないから協力してあげられないけど応援はしているわ。頑張ってねん」
『ありがとなのです』
「さっきはゴミなんて言ってごめんなさい~。死んでも生き返れますけど気をつけてくださいね~」
「がんば」
『うむ。そなたらも護衛の任、励めよ』
和泉さん達と別れる際チラリと矢沢さんの方を見ると、向こうもこちらに気が付いたのか小さく手を振って見送ってくれた。
その時の顔が半泣きになっており、まるで「このライブ自体が目的に変わっているんだけど助けて欲しい」と言外に滲ませるように見えたけど、きっと気のせいだろう。うん。……頑張れ。
ライブを止めるわけにもいかないので、そのまま放置して僕らは先へと進んで行く。
ライブの音のおかげかこの階層に現れるレッサードラゴンはそちらに意識が向いており、それらは親衛隊らしき熱狂者達が倒してくれているので安全に進めれた。
もちろん[画面の向こう側]で僕は退避し、[チーム編成]でオリヴィアさんとアヤメにはそれぞれ玄人用メイド服と初級学生服(メガネ付)を装備してもらっている。
「せ、せめて私が学生服の方を……」
などと言ってオリヴィアさんが抵抗していたけど、あっちは知能が100%上昇するだけで戦闘力にあまり直結しないから、全能力20%上昇するメイド服を諦めて着てもらった。
そうして進んで行くと先に進んでいたはずのパトリシアさん達が立ち止まっている姿が見えた。
一体どうしたんだろうか?
「何をしているんだパティ?」
「ん? ああリヴィね。それは、ってあんたこそなんて恰好してんのよ?」
「後生だ。そこには触れないでくれ……」
「そ、そう……」
何とも言えない表情を浮かべているパトリシアさんの前にはある物があった。
なるほど、これを見ていたから立ち止まっていたんだな。
そこにはどこかで見覚えのある看板が立っていた。
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