第1話 一気にレベルが増えた弊害。それは情報過多(1)


「それで先輩は昼休みわたし達以外の女の人と一緒にいたんですか」

「言い方にトゲがあるよ。僕だって気が付いたらその人に指名されてたんだし、決して他意はないのに」


放課後になったので、僕らは住んでる場所から一番近いDランクの〔ラミアのダンジョン〕を訪れていた。

そしてそんなダンジョン内で、まるでキャバクラに行った夫を見る様な目で見られている。解せない。


「何でその人は蒼汰を指名したのかしらね?」

「なんでも他の男子と違って自身に興味を持ってない態度だったから怖くなかったとか」


昼休みに校内を案内している最中に聞いてみたらそんな風に言われた。

確かに大樹達はギラついた目をしてたけど、彰人だって興味なさそうにしてたはずなのでは? と聞いたら、僕だけソフィアさんに視線すら向けてなかったから、それはそれで女として悔しかったとか。


いや、そんな理由?

そのせいで大樹達から「またお前か……」みたいな目、いやもう口に出して睨まれたんだけど……。


「蒼汰君のところに転校生が来たみたいだけど咲夜のクラスにも転校生が来た、よ」

「あ、わたしのクラスにも来ました」


転校生ラッシュか。

10月のこの微妙な時期に転校生が複数人来ることなんてあるもんなんだな。


「まあ今は転校生の事よりも、ダンジョンの探索に集中しようか。

あのSランクダンジョンに行ってから久々にダンジョンに潜るんだし、一気にレベルも上がってるから感覚を掴まないと」


僕らは1週間前、日本に唯一あるSランクの〔スケルトンのダンジョン〕にて【魔女が紡ぐ物語クレイジーテラー】討伐に参加した。

その時に一気に100レベルほどレベルアップをしてしまったので、感覚の違いを把握するために以前通っていた〔ラミアのダンジョン〕を訪れたんだ。


とはいえ、僕は全く戦闘しないので感覚の違いなど無いに等しいのだけど。


「レベルが一気に上がったけどみんな普通に動けてるね。乃亜は問題ない?」

「そうですね。大楯を振るうとラミアが思ったより吹き飛びますが、だんだん慣れてきたので問題はないです」

「新しいスキルとかも使ってみた?」

「[相関図]は学校で先輩を探すのには大変便利なスキルでした」

「道理で大樹達と教室じゃない場所にいた時も見つけられたわけだよ。まあそれはいいとして戦闘で使えるやつはないんだよね?」

「[オートモード]くらいですけど、[第三者視点]同様に扱いが難しいです。他のは戦闘で直接効果を発揮するものじゃないんですし」


大幅なレベルアップにより新しい派生スキルが一気に増えたわけだけど、微妙に使いづらいものだったりする。


 ───────────────

 高宮 乃亜

 レベル:302

 HP(体力) :793/793

 SV(技能値):744


 スキルスロット(2)

 ・[ゲームシステム・エロゲ]

 →派生スキルⅠ:[損傷衣転]

 →派生スキルⅡ:[重量装備]

 →派生スキルⅢ:[強性増幅ver.2]

 →派生スキルⅣ:[足跡地図化]

 →派生スキルⅤ:[第三者視点]

 →派生スキルⅥ:[クイックセーブ&クイックロード]

 →派生スキルⅦ:[思い出の場所]

 →派生スキルⅧ:[システム設定]

 →派生スキルⅨ:[オートモード]

 →派生スキルⅩ:[相関図]

 →派生スキルXI:[選択肢]

 →派生スキルXⅡ:[セーブ&ロード]

 ・[ダンジョン操作権限(1/4)]

 ───────────────


[システム設定]:五感の感度を操作できる。

[オートモード]:戦闘時肉体と精神を完全に分離し、自動で戦闘することができる。

[相関図]:自身と関係のある人物の自身との関係性を矢印で見ることができる。

[選択肢]:スキル所有者が分岐点に立った時、自動で発動。出てきた選択肢を選んで未来を決定する。

[セーブ&ロード]:自身が死んだ時に自動で発動。1日に1度だけ記録した日時に戻ることができる。


どれも微妙に扱いに困る能力だ。

とくに[セーブ&ロード]なんて死んで初めて使える能力なのだから、試したくても試しづらい能力である。下手したら一生使わないんじゃないかな?


「あと試していないのはコレですかね」


そう言って乃亜が取り出したのはどこかで見た事のある《毘》の文字が刻まれている印籠。

魔女が紡ぐ物語織田信長】討伐の際に乃亜が手に入れた【典正装備】で〔武神ゴッズ毘沙門天プロテクション〕。

能力はシンプルで毘沙門天の加護を1分間得られるというもの。

まだ使ったことはないけれど、謙信が使っていたのと同等の効果だとすれば強力なバフが期待できそうだ。


「中ボスがいる部屋で試してみるといいかもね。さすがにそこら辺のラミア相手じゃ効果が実感しにくそうだし」

「そうですよね。時間はありますから、十分身体を慣らした後、戦ってみましょう」

「うん、そうしよう。それじゃあ次。冬乃はどんな感じ?」

「私は新しいスキルをもらったものと、後はスキルが強化されていたくらいだから。

身体能力は確かに一気に強化されたけど、そっちはすぐに慣れたわ」


冬乃は派生スキルの1つが強化されたのと、スキルスロットの数が8になって新しいスキルを増やしたのが大きく変わったところかな。


 ───────────────

 白波 冬乃

 レベル:305

 HP(体力) :768/768

 SV(技能値):778


 スキルスロット(8)

 ・[獣人化(狐)]

 →派生スキルⅠ:[狐火]

 →派生スキルⅡ:[幻惑]

 →派生スキルⅢ:[獣化]

 →派生スキルⅣ:[複尾]

 →派生スキルⅤ:[天気雨]

 →派生スキルⅥ:[変化]

 →派生スキルⅦ:[気狐]

 ・[ダンジョン操作権限(1/4)]

 ・[気配感知]

 ・[精神強化]

 ・[スタミナ自然回復強化]

 ・[混乱耐性]

 ・[浄化]

 ・[瞬動]

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[スタミナ自然回復強化][混乱耐性][浄化][瞬動]はスキルオーブを使って覚えたものだ。

耐性系をもっと身に着けられると安心ではあるけど、毒とかは咲夜が治してくれるので混乱を防げる程度にして、戦闘力の強化と汗や汚れでべたつく身体を[浄化]で綺麗にしてダンジョン内で快適に過ごせるようにしたわけだ。


スキルオーブを買えるお店では[浄化]の女性人気が高く、品薄で高額なのだけど今の僕らには値段も在庫も関係なく手に入れられた。

このスキルを乃亜達3人がとても喜んだのは言わずもがな。


「さっきの戦闘で[気狐]は使ってなかったけど、それは試さなくて良かったの?」

「[野狐]の強化版だから私も乃亜さんと一緒の理由で、ここのラミア達じゃどれほど強化されてるのか分かりづらいから」

「それは確かに」


派生スキル[気狐]は[野狐]が強化されたスキルだ。

[気狐]以外の派生スキルを強化する能力であるため、[狐火]とかがどれほどの威力になっているかが楽しみである。

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