第2話 一気にレベルが増えた弊害。それは情報過多(2)

 

「次は咲夜だけど、咲夜はあまり変わってない感じかな?」

「うん。身体能力は確かに上がってるけど、それは[鬼神]で慣れてるから。

 新しいスキルはほとんど耐性系だし、目新しいのはないかな。

 一応ラミアクイーン相手に〝臨界〟がどれだけ強化されたか試してみるけれど」


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 四月一日 咲夜

 レベル:304

 HP(体力) :957/957

 SV(技能値):740


 スキルスロット(9)

 ・[鬼神]

 ・[治癒術]

 →派生スキルⅠ:[手当]

 →派生スキルⅡ:[風邪特効]

 →派生スキルⅢ:[状態異常五種回復]

 →派生スキルⅣ:[自然治癒向上]

 →派生スキルⅤ:[瞬間回帰]

 →派生スキルⅥ:[全体治癒]

 ・[ダンジョン操作権限(1/4)]

 ・[スタミナ強化]

 ・[スタミナ自然回復強化]

 ・[混乱耐性]

 ・[気絶耐性]

 ・[睡眠耐性]

 ・[ダメージ貫通]

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 咲夜が元々持つユニークスキル[鬼神]と[治癒術]は何も変化は無く、スキルスロットの空きが4つ増えたくらいだ。

 なので新しいスキル、[混乱耐性][気絶耐性][睡眠耐性][ダメージ貫通]を手に入れたのが唯一の変化と言える。


 咲夜は[治癒術]の派生スキルⅢ[状態異常五種回復]を持っているので、毒、麻痺、眠り、石化、恐慌の5つの状態異常を治せるけれど、肝心な咲夜がそのスキルを使えない状態だと意味がないので3つの耐性スキルを手に入れた。

 4つ目も耐性系でいいんじゃないかと思ったけど、上杉謙信と戦った際に全く歯が立たなかったのが悔しかったらしく、少しでも相手にダメージを負わせられるスキルが欲しいと思ったようなので[ダメージ貫通]を選んだみたいだ。


 正直、あのありえないくらい強い謙信相手だったら仕方ないと思うんだけど、生死のかかっているところで仕方ないなんて言えないから、咲夜がもっと強くなりたいって気持ちは分かる。


 ……本当によく分かる!

 ちくしょう!!


「先輩、急に苦虫を嚙み潰したような顔してどうしたんですか?」

「戦えるようになりたい……」

「無理なんじゃない? 蒼汰のスキルスロットの空きが出来ない限り、まともに戦えないでしょ」

「無理しなくていい。咲夜達が頑張る」


 咲夜達が慰めてくれるけど、新しい派生スキルが増えるたびにこれじゃない感が凄い。

 いや今回1つだけなかった訳じゃないけど、あれはちょっと違うと思う。


『ご主人さまは贅沢なのです。適材適所で戦える人が戦えばいいだけだと思うのですよ?』


 2頭身の和服を着た少女、アヤメがフワフワと僕の近くを漂いながらニコニコと笑顔でそう言ってきた。


「ガチャ……」

『まだ言うのです? 今月分はワタシ達家族の住処を快適にするために課金をすでにしたのですから、今更なのです』


 アヤメ達にはダンジョン探索で索敵などしてもらい手助けして貰っている上に、【魔女が紡ぐ物語織田信長】討伐の際には大いに活躍してくれたので、約束通り[放置農業]に課金を行った。


 ・川……………2500円

 ・家……………1000円

 ・風呂…………500円

 ・トイレ………400円

 ・キッチン……400円

 ・ベッド………100円×2


 お前ら元は玉なのに、風呂、トイレ、キッチン、ベッドいるの?

 食料はどこからって、放置農業内なら農業や畜産が出来るし、川を作らせたのはそこで魚が取れるのか。


 ……いやでもこんなんに課金させるとかひどくね? というか川はもっといらんだろ。


『家のできがイマイチなので、次の課金はそこを改善してもらうです』

「どんだけ人から金をむしり取ってくつもりだこの家族!?」


 石の欠片を集めるのに100万使ってる上に、子作りして喋れないくらい消耗したクロとシロのためにまた買い取らないといけないんだよ?


『家の中の家具がベッドしかないのです。今後は月2000円で我慢するです』

「ガチャ1回はできる金額だけ残すあたり、姑息さを感じる……。あと月にいくらそっちに回すかは要交渉だから」

『別にそれでも構わないのです。活躍したらその月の課金は全て頂いていくのです』

「二か月前に生まれたばかりとは思えない交渉をしてくるな。2000円定額にしておいた方がマシなんじゃないかと思えてきた」


 索敵をある程度冬乃が出来るようになったとはいえ、性能で言えば圧倒的にアヤメに任せるのが一番いいのは間違いない。

 すねられたりグレられるくらいなら、2000円は月間パスのようなものと思って諦めるしかないか。


「アヤメちゃんだってまともな場所に住みたいと思うのは当然でしょうから、そこに課金をすることになるのは仕方がないんじゃないですかね」

「そうよね。それに無報酬で働かせるのはどうかと思うわよ」

「アヤメちゃんも咲夜達の仲間だもん、ね」

『みなさん……』


 女性陣は全員アヤメの味方である。

 いやいいんですけどね。


「じゃあ月2000円ってことで。もしも課金できる金額が増えたら応相談で」

『分かったのです。ご主人さまがたくさん課金できるようになるためにワタシも頑張るのです!』


 ……あれ? 結果的にそれ僕が得してない?

 損して得取れとはよく言ったもので、これでアヤメのやる気が出てレベル上げが捗るのなら、悪い事ではなかったかな。

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