第18話 センシティブ判定?
「ちっ、結局1人も殺せなかったか」
「許せない……。〝臨界〟」
「面白そうなもん、まだまだ持ってんじゃねえか。だが残念だが俺はここで引くぜ。
てめえらもとっととここから逃げた方がいいぞ」
「待て! まだワタシの質問に答えてない!」
「もうちっと強くなったら教えてやるよ。そんじゃあばよ」
「逃がさない」
「逃がすか!」
痛みで周囲を把握できていないけど、声からしてどうやら咲夜とソフィアさんが逃げようとするカティンカを追いかけているのか。
「あっ痛たた……」
死ぬほどのダメージじゃないから謙信と戦った時みたいに自動で発動しなかったな。
そう思いながら〔
痛みも無くなり抱きしめていたオルガと一緒に起き上がって、その場に座り込む。
カティンカはどこかに逃げて行ったようだし、一先ず安全かな。
まあもうしばらくしたら魔物達に囲まれるからあまりゆっくりしてられないんだけど。
「……なんで?」
「ん?」
まだ僕の傍から離れていなかったオルガが僕を見上げる様に問いかけてきた。
「……なんで、助けてくれたの? ボク、役立たずだったのに」
そんな事言われてもなぁ。
咄嗟に動いてしまったというか、知り合ったばかりだけど危険な目に遭いそうな人がいたら助けるよね?
そんなに深く考えての行動ではなかったし、強いて言えば友達だから?
「……友、達?」
あれ、今口に出してたかな?
オルガがまるで僕が言ったことを復唱するように呟いてきたことに疑問に感じていたら、視界の端にこちらに駆け寄ってくる人物達の姿が映ったので、そちらに視線を向ける。
「先輩、大丈夫ですか?!」
「蒼汰、怪我はない?」
乃亜と冬乃が僕に近づくと、座り込んでいる僕に視線を合わせる様に膝をついて、身体をベタベタと触りだした。
「あはははっ。ちょ、止めて! くすぐったいよ」
今の僕[損傷衣転]のせいで服が破けて上半身裸だから、手が肌に直で触れてるせいでこそばゆい!
「〔
「ズボンは無事なのに傷を負ったのね」
「わたし達の場合は[損傷衣転]で服が破けてもすぐに先輩が直してくれますから気になりませんでしたけど、自分のスキルながらちょっとよく分からない部分ですよね」
ダメージが服にいく関係上、本来ならズボンはおろかパンツも破れてもおかしくなかったんだけど、場所や周囲の人の多さで[損傷衣転]の効果が変わるのか、今回は上半身だけで済んだ。
センシティブ判定みたいなものでもあるのかな?
そんなどうでもいい事を考えながら、[ガチャ]で出たアイテム一覧から服を取り出して着ていたら、フラフラとオリヴィアさんがこちらにやって来た。
「すまない、鹿島先輩。守らなければいけない立場だったのに、ろくに守る事も出来ず怪我をさせてしまった」
「いや、あれは仕方ないんじゃない? 相手が強すぎたよ」
5人がかりでようやく腕1本とか、マジもんの化け物だったし。
「もっと、もっと強くならねば……」
僕が慰めの言葉をかけたけど、オリヴィアさんはどこか思い詰めたかのように強くなりたいと唱えていた。
確かにオリヴィアさんは腕を折られてから戦いに参加できていなかったし、自分があまり戦力になれなかったことを悔やんでいるんだろう。
でもあまり気にしすぎて、焦ったりしないといいんだけど。
「ただ、いま……」
「はぁ……」
「あ、咲夜、ソフィアさん。どうだった?」
「逃げられちゃった。煙幕とか古典的な物使ってくるなんて……」
「クソッ……!」
今にもキレそうになっているソフィアさんはとりあえず置いておいて、〝臨界〟を使った影響で、今にも倒れそうな咲夜がペタンと僕の近くに座り込んだので、〔
「ん。ありがとう」
『ワタシが付いて行けば索敵できたかも、ってそんな喋ってる場合じゃないのです。いったんここから離れないと危険なのですよ!』
アヤメに言われ周囲を見渡すと、まだ暴れている“平穏の翼”もいるけれど概ね倒されているようで、他の人達も一旦下がろうとしているので僕らもこの場から離れることにした。
ここで僕らだけ取り残されて魔物に囲まれるのは厄介だからね。
引率兼護衛兼翻訳の人とは合流出来ていないけど、安全な場所で待機していればその内合流できるはず。
気がかりな事と言えば、安全地帯が壊されてしまった事で中央付近に取り残されてしまった冒険者達の事とあの光の柱だ。
最悪冒険者達は矢沢さんの力で生き返れるとして、あの光の柱は一体……?
冒険者達が何かをしたというより、カティンカの様子からして“平穏の翼”が何かしでかしたんだろうけど一体何をしたんだ?
『キシシシ』
『クシシシ』
疑問に首を傾げていたら、何度か聞いた事のあるような感じの声が突然頭に響いてきた。
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