第34話 魔力と魔素

 

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 〔緊縛こそノーボンデージ我が人生ノーライフ


 縛った対象の性欲を徐々に増幅させ理性を溶かす。

 ただし縛られた対象は、〔緊縛こそノーボンデージ我が人生ノーライフ〕以外では拘束されなくなる。


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「使えねえ!!?」

『何言ってるのよ! 大当たりじゃない!!』


 いやこれ産廃じゃん!

 どの場面でこれを使う機会があるんだよ!?


「しかも名前もひでぇ!」

「先輩に同意です。わたしのアイマスクも〔閉ざされた視界フォーリン開かれた性癖プロクリヴィティ〕なんて名前なんですよ」

「私のもなんだか妙に意味深だわ。〔溶けた雫はバーン オブ素肌を伝うキャンドル〕って……」

「咲夜のは〔傷跡のない恍惚なるアンフォゲッタブル痛みペイン〕だった」

「ネーミングセンスが色欲に塗れすぎでしょ!?」


 試練の内容といい、頭が年中発情期なのを疑う、いや、もう発情期確定と言っていいくらいエロ方向に突出してるよ。


『ちょ、それは誤解だわ。名前なんてランダムで勝手に決まるのであって、私が決めてるわけじゃないのよ』

「え、ホントに?」

『当たり前なのだわ。もしも私が決めていたら、あなたの【典正装備】は〔女体を縛るための紐〕とかにしていたわ』

「ランダムで本当に良かった!」


 そうじゃなかったら何があっても絶対に人前では到底出せないところだったよ。

 女性の前で取り出しただけで、セクハラ案件になる代物になっちゃうじゃないか。

 ……今も似たような気がしなくもないけど。


『私があげた【典正装備】をそんなに嫌がる事ないじゃないのよ~。しょうがないじゃない、とは違って私の場合は“色欲”の特性にどうしても引っ張られちゃうんだから』

「特性? 引っ張られる?」


 一体何の話?


『あ~、うん、訳の分からない事を言ってごめんなさい。大まかになら話してもいいんだけど、魔女やダンジョンに関わる話だから少し長くなるわよ。それでも聞く?』


 中途半端に言われて気になるし、ダンジョンに関わるというのなら興味があるし、聞くだけ聞いてみたいところではある。

 乃亜達の方をチラリと見ると、3人とも頷いてくれたのでそのまま話を聞くことにした。


『そうね。それじゃあ何から話そうかしら』


 エバノラは少し悩んだ素振りを見せると、そのまま淡々と語り始めた。


『まずは私達魔女の話をしましょうか。あなた達は魔女についてどの程度知っているのかしら?』

「え、そんな事言われても。せいぜい物語に出てくる存在としか」

『魔女はフィクションの存在じゃないわ。実際に存在し、人々を陰ながら支えてきたわ。……魔女狩りのせいで隠れざるを得なくなって、人々からは本当に存在したことを忘れ去られてしまったようね』


 魔女狩りって不当な理由で人を裁いていたやつだよね。

 まさか本当に魔女を狩っていたなんて……。

 でも魔女狩りって18世紀までのことであると考えると、エバノラって何歳なの?


『私達魔女はそれぞれ自分に合った特性を身に着け、それに関する魔法を行使できてたわ。

 特性というのは分かりやすく言えば、ゲームでいうところの炎属性とか水属性とかそんな感じよ』

「ゲーム、やるんだ」


 咲夜がボソリと呟き、どこか仲間を見るような目で見ていた。


 ゲームとかスマホ以外では久しくやってない気がするな~。

 冒険者になる前はそんな物を買うお金なんてないし、ダンジョン入るようになってからはやる暇がないし。


『私の場合“色欲”という特性を身に着け、家畜の繁殖を促す魔法を使っていたわね』

「ま、まともな魔法の使い方をしているだと……!」

『私をなんだと思っているの。あと昔は魔法を行使するための魔力、いえ、魔素がほとんどなかったせいで、ちょっとその気にさせる程度でしかなかったわよ』

「魔力に魔素、ですか?」


 乃亜が首を傾げて、エバノラに問いかけていた。


『魔力は魔法使いが魔素を取り込んで加工した力のことよ。ま、その2つはほとんど同じものなんだけど。例えるなら砂糖と角砂糖かしら?』

「その2つだと、もう呼び方を分ける意味がほとんどないわね」

『一応あなた達にも関係してるのだけどね。

 スキルを行使する上では魔力に加工していない魔素でなければいけないわ』

「スキルで[光魔法]とかあるんですけど、それはどうなんですか?」


 確かに乃亜の母親、穂香さんがそのスキルを持ってたね。


『あれは名前に魔法ってついてるけど、スキルだから必要なのは魔素よ。魔法使いが使う魔法とは別物だわ』


名前に魔法ってついてくるせにややこしいな。

まあ魔法使いなんてエバノラ以外見たことないから気にしなくていいんだろうけど。


『それとダンジョンの中は魔素で満ちているけど外は魔素が薄いわ。ダンジョンの外ではスキルが使えないのはそれが理由ね』

「あれ? でもそれじゃあ何でユニークスキル持ちはスキルが使えるんですか?」


 魔素というのが薄いのなら、ユニークスキル持ちも同じはず。


『あなた達みたいな子はレベルを上げる前から魔素の貯蓄量が元々多いから、周囲の魔素が薄くても体内の魔素でスキルを使えるのよ。だけど魔素の使用が多い強力なスキルは連発できないわね』


 なるほど。つまりユニークスキル持ちじゃなくてもスキルをダンジョンの外でも使えるようになった人って、魔素の貯蓄量が一定以上になったからなのか。


『まあ私達としては想定外のことよ。スキル持ちが現れることも、ダンジョンが生まれてしまったこともね』


 その口ぶりだと、エバノラと他の人達が何かをした結果、今の世界になってしまったということになるのだけど、一体何をしたと言うんだろうか?




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・あとがき

作者のやらかしが止まらない。

5章エピローグ2で【典正装備】が手に入る数が最大3つになっていました。

本来は4つです。

そしてそれを直した直後で【典正装備】を与えているメンバーの中で穂玖斗が手に入れていると何故か勘違いしていて、4人目を大樹しているミスが発覚。


作者、やらかすと連鎖して何かミスるタイプなので、本当に申し訳ありませんでした。

正しくは大樹ではなく、穂玖斗が装備を手に入れています

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