第7話 宿まで不思議空間
あれから僕らは何だかんだで海で遊びつくした。
一緒に泳いだり、水を掛け合ったりとかなりはしゃいでいたと思う。
思い返すとかなり恥ずかしい事をしていた気がするけど、少なくともクラスメイトの誰かに見られた訳ではないからセーフ。
あいつらすぐに人を処してくるから、知られたら夏休み明けに学校に行けなくなるところだった。
――ブブッ
ん? スマホに何か通知が来たな。大樹からラ〇ンか。
――次に会う時が楽しみだな……
不穏なメッセージと共に、乃亜が自撮りしてSNSに上げたであろう写真が載っていた。
その写真は3人が僕にくっついてはしゃいでいる写真であり、何時の間にこんなのを撮ったんだと思うと同時に、何故これをSNSに上げてしまったんだと言いたくなったよ……。
クラスメイト男子で作られたラ〇ンのグループには次から次へと僕への殺害予告に等しい何かが来て通知が止まらない。
僕はそれを見なかったことにして、そっと通知をOFFにした。
未来の事は考えない。気にするだけ無駄だから。
どうでもいい事は頭の片隅へと追いやり、僕らはいい時間になったので宿泊所のような建物へと向かうことにした。
このレジャー迷宮は強制的に水着にさせられるけど、パーカーなど羽織る程度であれば問題ないみたいなので、今は全員上に何かを着て移動している。
「ホテルとか予約してないんだけど、ホントに大丈夫なんだよね?」
「はい、問題ありませんよ。なにせ誰かが経営している訳ではありませんから」
実はずっと気になってたんだけど、それが分からない。
誰も経営していないってどう言う事?
その答えはすぐに建物の中に入って理解した。
というか理解させられた。
「……なんで建物の入り口に入った途端、僕らは部屋にいるの?」
「ここはダンジョンみたいなものですからね。この建物は集団ごとに1つの部屋が割り当てられ、その集団にあった部屋が自動で与えられるそうですよ」
なるほど。ダンジョンの不思議空間か……。
いや、これで納得しろと?!
「なんでこんな場所があるんだよ……」
「その気持ちは分かるけど、宿泊料金が取られないから悪くないわよ」
「レジャー迷宮は入場料がありますから、ある意味それが宿泊料金のようなものですね」
入場料2000円だったから、カプセルホテル並みに安い宿泊料金だね。
「ご飯とかお風呂もあるみたい、だよ?」
「露天風呂があって源泉かけ流し――え、源泉?」
咲夜がリビングみたいなこの場所に置いてあったパンフレットを渡してきたので、そのまま受け取って読んでみたらこの施設の説明が書いてあった。
ところでこの不思議空間の源泉って、源泉と言えるの?
「お風呂ですか、いいですね。海に入った後シャワーを軽く浴びただけなので、ご飯の前に入りに行きましょう!」
「確かにそれが良さそうだね」
乃亜に言われ、早速部屋を出てパンフレットに記載されているお風呂の場所へと来たのはいいのだけど……。
「嘘でしょ?」
・家族風呂
・カップル用
・お目が高いですね(ハーレム用)
・あなた、正気なの……?(1人用)
何なのこの4択!?
暖簾が4つかかっていて、そこに文字が書かれているのだけど、最後の2つは悪ふざけにしか思えない。
「なんで“男”“女”じゃなくて、妙な4択なの!?」
「作った人の趣味、でしょうか?」
「ある意味いい趣味してるな!?」
特に最後の1人用にはこれだけ注意書きがあり、桶にお湯が張ってあるだけの描写がしてあって、本当にここに入るつもりなのかと記載してある。
「ではわたし達はこれですね」
「躊躇なくハーレム用に入ろうとしないで!」
「だけどこれ以外入れるとこない、よ?」
咲夜の言う通り他に入れそうなのは1人用だけで、他のお風呂は何故か入ろうとすると、見えない壁があるのか阻まれてしまう。
条件に合致しない人は入れないとか徹底してるな。
「こ、ここ以外に入る場所がないのならしょうがないのかしら……。1人用は嫌だし」
「それは確かに」
冬乃が1人用の注意書きを見てげんなりとした表情を見せているけど、誰だってこんな風呂とは言えない物には入りたくないだろう。
「先輩達、あまりお風呂の前で騒ぐのは周りの人に迷惑ですよ。ほら、人が来ましたし」
おっと、乃亜の言う通りか。この建物には当然他の宿泊客もいるんだし。
ただ、場所が共同なだけで何故かお風呂とかの施設は集団ごとに個別の空間となっているため、貸し切りにはなるとパンフレットには書いてあったけど。
他の客がいると宿感が強いけど、何故にそんな中途半端なのかと言いたい。
そこまでしたなら集団ごとに個別の宿にしたりは出来なかったんだろうか?
「おいおいお前ら。なに風呂の前で騒いでんだよ」
「まー君、そんな奴らに絡んでないで早く入ろうよ」
「まこっちは私達だけを見てればい~の」
ギャルっぽい女性2人連れて僕らを横切った男の人が、平然とハーレム用の暖簾をくぐっていった。
僕ら以外にもハーレムの人がいたのか。
何だかんだで乃亜の家族以外は見た事なかったな。
「先輩が一緒に入ってくれないと全員が1人用のお風呂に入らないといけないので諦めてください。冬乃先輩、咲夜先輩」
「りょ」
「わ、分かったわ」
「あ、ちょっ!?」
他の事に気を取られた隙に冬乃と咲夜に両側から腕を取られ、強制的にハーレム用の暖簾をくぐる事になってしまった。
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