第31話 女子会

 

≪乃亜SIDE≫


 ダンジョンから帰ってきたわたし達は、先輩と別れて男子寮と女子寮へそれぞれ移動しました。


「おかえり~」

「おかえり」


 そう言って寮の玄関で出迎えてくれたのは柿谷姉妹のお二人。

 今日も門限のチェックかと思いきや、色々話がしたいということだったので、食事とお風呂を済ませたらパブリックラウンジに来て欲しいと言われました。


「言われた通りに来ましたけど、私達に何の用なんですか?」

「狐っ娘ちゃん、そんなに警戒しなくていいよ~。私達以外にも人がいる事を警戒しているんだろうけど~、彼女もあなた達と同じ留学生だから~」

「よろしくですわ」


 なにやら怪しげなお嬢様言葉を使う、茶髪で緩いパーマのかかったミディアムヘアーの目力のある女性がソファーに座っていました。

 身長的には冬乃先輩と同じくらいだと思いますが、自信満々な雰囲気を纏っているせいか、見た目よりもどこか大きく見える人ですね。


 わたし達はこのみさん達と同じようにソファーに座ると、このみさんが女性の方を早速紹介し始めました。


「お互い初めてだろうから私から紹介するね~。彼女は不川ふかわ彩羽いろはさんっていって、私達と同じ3年生なの~」

「ダンジョンに行くのに年齢なんて関係ありませんから、敬語とかはなしでお願いしますわ」


 喋り方と違って意外と気さくな人なのでしょうか。


「それでこちらが高宮乃亜ちゃん、白波冬乃ちゃん、四月一日咲夜さんで、それぞれ1年生、2年生、3年生だよ~」

「「「よろしく」」」

「ええ。それにしても学年は全員バラバラなんですわね。まあ女性で冒険者は少ないですから、そう珍しいことではないですが」


 元から知り合いでもなければ、同性同士でパーティーを組むのが普通ですから、年齢が多少離れていても女性は女性とパーティーを組んでいる光景はたまにみますからね。

 わたしの場合は最初の頃に組んだパーティーが、男性の友達と組んでる女性がいたのでそちらに入れてもらった結果、男女混合パーティーになりましたけど。


「それで話って、なに?」


 咲夜先輩がこのみさんにそう尋ねると、このみさんはニコッと笑って答えてくれた。


「留学生同士の交流の促進だよ~」

「男子寮でも今頃同じことをしてるはず。向こうは人数が多いから、全員が集まって交流してはいないだろうけど」


 鈴さんは相変わらず抑揚なく話しますね。

 別に不機嫌とかそう言う訳ではないのなら問題ないのですが、同じ双子でこうも性格に違いがあるとビックリです。


「交流の促進ということですが、それならば【魔女が紡ぐ物語クレイジーテラー】についての話をぜひしたいですわね。

 わたくしは一度も【魔女が紡ぐ物語クレイジーテラー】に出くわしたことがないので、伝聞でしか知りませんの。

 今後出くわさないとも限らないですし、お二方は討伐経験がおありのようなので教えて頂いてもよろしいかしら?」


 不川さんがわたし達の手首にある、【魔女が紡ぐ物語クレイジーテラー】討伐の証の模様を見ながら、そう言ってきました。


「分かったわ不川さん」

「彩羽でいいですわ。代わりにこちらも名前で呼びますけどいいですわよね?」

「ええ、いいわよ」

「うん」

「はい、構いませんよ」

「敬語はいりませんのよ?」

「あ、すいません。いつもこの話し方なので」

「でしたら構いませんわ。それじゃあ早速ですけど、聞かせていただいてもいいかしら」


 わたし達は最初に出くわした【魔女が紡ぐ物語クレイジーテラー】の話をしたのだけど、目を見開いて驚かれてしまいました。


「たった3人で、Fランクダンジョンとはいえ【魔女が紡ぐ物語クレイジーテラー】を倒しちゃったの……? ……あっ、ん、ん゛っ。ここにはいない男性の方と乃亜さんと冬乃さんでよく倒せれましたわね」


 無理してお嬢様言葉を使っているのでしょうか?

 人には色々なこだわりや事情があるのでしょうから、深くは追求しませんけど。


「正直、先輩がいなければ間違いなく死んでました」

「そうね。蒼汰の援護と機転がなかったら、物量に押されて殺されていたわ」


 わたしの場合はゴブリンにお持ち帰りされているのを先輩が目撃しているくらいなので、殺されるだけならまだマシ、といった目に遭わされる可能性が高かったと考えると、ゾッとしますね。


「そうでしたのね。……ところでつかぬ事をお聞きしたいのですが、その男性とはここにいる3人全員とお付き合いしているという話は本当ですの?」

「そうですね」

「そうなんですの?!」


 実はまだ保留状態なんですけど、もう時間の問題ですからどんどん外堀を埋めていきますよ。


 先輩が初めて穂玖斗兄さんと遭遇した時、穂玖斗兄さんが勢い余ってわたしに抱き着こうとしたのを、その身を盾にして防いでくれました。

 つまり人に盗られまいと行動するくらいには、独占欲を感じてくださっているのでしょう。


 これだけならただわたしを守る為に行動しただけとも言えますが、その後の模擬戦で初めて自ら強化の提案をしてきました。

 命のかかるような危機的状況ではないにも拘わらずです。


 先輩自身はおそらく意識してのことではないでしょうが、少なくとも心理的な距離はかなり縮まっていると言っていいでしょう。


「す、凄いわ。同年代なのにこんな大人の恋愛が出来るだなんて……」

「ハーレム作るのって大人の恋愛でいいんでしょうか?」

「経済力がいるという面では間違ってないんじゃない、かな?」

「ち、違うわ。私はまだ……」


 微妙に煮え切らない感じの冬乃先輩をとっとと堕として、先輩の攻略をしたいものです。


 その夜わたし達は、ダンジョンに関係する話を時々脱線しながら、お互い情報交換をしていきました。

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