第32話 振り向けば奴がいる
≪蒼汰SIDE≫
昨日の夜は有意義かつ、気になっていたスキルの詳細をある程度知ることが出来た。
しかし一番の情報はスキルの詳細ではなく、ユニークスキル所持者のスキルスロットが増えるタイミングだったけど。
決してこの学校に入学しなかった理由とかでは断じてない。
理由が納得のいくものでちょっと面白かったけど、親を説得しきれなかった以上しょうがないね。
それはさておきスキルスロットの件だけど、それが増えるのは派生スキルがあるかないかで大きく違うようだ。
そちらはともかく、派生スキルのある
前に乃亜から、一番遅くてレベル100にスキルスロットが増えたという事例があると聞いていたけど、それが事実であり100になればまず間違いなく増えると分かった以上、よりダンジョンでのレベル上げにも気合が入るというもの。
レベル上げの効率がいい占有ダンジョンを使える今のうちに、出来るだけレベルを上げたいところだ。
「………」
……背後から監視してきてる穂玖斗さんの視線を気にしないようにしないといけないけれど。
「わたし達についてこないで、穂玖斗兄さん自身のレベル上げをしていればいいと思うんですけどね」
「まさか学校内どころか、ダンジョンにまでついてくるとは思わなかったよ」
僕は今日まで気づかなかったのだけど、どうやら初日以降ずっと監視していたようで、ふと背後を見ると必ずいるのだ。
「あの人、一体何が目的なのかしら?」
「みんなと僕が離れたわずかの間でもずっと僕を見てきてたから、僕を監視しているのは間違いないんだけど……」
もしかして乃亜に相応しいか見定めているとか、そんな感じなんだろうか?
まだ付き合ったりしてる訳じゃないし、一応ただのパーティーメンバーなのだけど。
「鬱陶しく感じるようでしたら、手っ取り早く排除しますか?」
「やる、の?」
「やらなくていいから」
こちらに害をなしてきたのならともかく、初日でも直接手を出された訳でもないのに実力行使に出るのは問題だと思う。
ただ出来れば、ダンジョンにまでついて来るのは勘弁して欲しいかな。
「気にしてもしょうがないなら無視しましょ。あ、また宝箱があったわ。[狐火]」
冬乃は宝箱を見つけた瞬間、躊躇なく[狐火]を放って宝箱を吹き飛ばす。
「ピギッ!?」
やはりと言うか、当たり前の様にミミックだった。
[狐火]の一撃でやられたミミックが魔石に変わった瞬間――
――ピロン 『派生スキルを獲得しました』
「「あ、派生スキルが増えた」」
僕と同時に声を出したのは咲夜だった。
「咲夜も派生スキルが増えたの?」
「うん。さっきのミミックが倒れたのと同時に獲得した、よ」
「良かったですね先輩達。……やっぱり先輩は戦えない感じの派生スキルなんですかね?」
「やっぱりって何?! いい加減マシなスキルが身についてもいいと思うんだけど……」
僕は若干祈るような気持ちで、自身のステータス画面を開き、そこに記載されている新しい派生スキルを確認した。
派生スキルⅤ:[ログインボーナス]
「ぐはっ」
「先輩!?」
いや、うん、だろうね。
分かってた。分かってたさ。だけどね。
「[ログインボーナス]はもっと早い段階で手に入れるスキルじゃないの?!」
どう考えても入手のタイミングがおかしいよ!
少なくとも[ガチャ]の後には[ログインボーナス]でしょ。
むしろソシャゲで真っ先に出てくる要素なのに、今更感がありすぎる!
「蒼汰君が直接戦えなくても、咲夜達を援護してくれるだけで十分だ、よ」
優しく背中を撫でながら、諭すように言われるのは地味に辛い。
いや、いいんですけどね。分かってたことだし。
「また変わったスキルを手に入れたわね。どんなスキルなのよ?」
「[ログインボーナス]って字面だから、ある程度予想出来るけどね」
僕はスキルの効果を確認するために、[ログインボーナス]をタップしてスキルの詳細を調べた。
[ログインボーナス]:1日に1度、[ソシャゲ・無課金]使用時に自動でアイテムが入手できる。
やはりと言うか予想通りのスキルだった。
しかしこの効果だと、アイテムによっては[フレンドガチャ]と似たようなものじゃないかと思うんだけど、何が手に入るんだろうか?
僕はそんな疑問を抱きながら、以前メイド服が送られてきた時のようなラッピングされた箱が表示されていたので、その絵をタップするとポンッと音を立てて中から出てきたものは――
――『バニーガール衣装の欠片を入手した』
「何が何でもみんなにコスプレさせたいんだろうか?」
まだ2着しかないから手に入るのはありがたいのだけど、一部だけで衣装としてはまだ使えないとは言え、[ログインボーナス]でも支給してくるとか正気か?
「……うん、僕は今日何もスキルが手に入らなかった」
「そんななかった事にしなくても」
「だって何の役にも立たないし」
今後何が手に入るかによって、このスキルの有難味が分かってくるのかもしれないけど、今は全く有難味を感じないのだから仕方がない。
「僕のスキルよりも咲夜のスキルはどんな感じだったの?」
「咲夜のスキルは[瞬間回帰]ってスキルだった。効果は1日1度だけ、指定した対象の体力を全快にするって効果」
「え、マジ?」
「うん、マジ」
HPではなく
派生スキルに恵まれるって、羨ましいな~。
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