第20話 まずはこっち
「オルガはソフィアさんの援護を。カティンカの相手は無理だよね?」
「……助かる」
前にカティンカを目の前にしたオルガは震えてまともに動けなかったので、オルガはソフィアさんの方にいくのがいいのは間違いない。
オルガにソフィアさんと同じように家族として決着をつけたい気持ちがあるのならともかく、出来れば関わりたくないと思っているのなら、向こうに当てる方がいいからね。
「オラオラオラ! [鬼神]っつってもその程度か?」
「速さも力も咲夜が上なのに、この人やっぱり
「腕を分捕られたあのロボ娘をサイラスに取られちまったのが癪だから、てめえはもっと俺を楽しませろ!」
右腕を失っている上に咲夜の方が身体能力は上回っているらしいにもかかわらず、カティンカは咲夜を圧倒していた。
カティンカの実戦経験が段違いな上、咲夜は対人戦闘なんて数えるほどしかしていないことを考えると、経験の差が如実に出ていると言える。
「鹿島先輩。私は四月一日先輩の援護に行くぞ。以前の雪辱、ここで晴らしてくれる。〈
オリヴィアさんは僕の返事を待たずに〔
獣耳や尻尾を生やすことに抵抗して前は使う時に躊躇していたけど、今は羞恥心よりもカティンカへの雪辱を晴らすことに気持ちが傾いているのか、使用することに迷いなど一切なかった。
オリヴィアさんの頭部に長いウサギ耳が生え、尾てい骨部分から真っ白な丸い尻尾がポンッと生える。
「あん? てめえはあん時の雑魚って、なんかふざけたモンつけてやがるな」
「これが伊達や酔狂だと思うなよ!」
「おっと、ちったぁマシな動きするじゃねえか」
あの時と比べ、レベルは大幅に増している上に〔
勇者の紋章の力も合わさり、少なくとも2倍は強くなっていると言っても過言ではないだろう。
「だがまだ弱えな!」
「くっ!?」
しかしそれは相手も同じ。
【後鬼】の力を手にしたカティンカも以前より強化されている。
腕が1本無い程度ではハンデにもならないほど力の差があるのか、オリヴィアさんは戦斧を剣で受け止めたところ、そのまま吹き飛ばされてしまった。
「勇者の紋章の差もあるはずなのに咲夜達と互角以上って、【後鬼】になってどれだけ強化されたっていうんだよ……」
「これはマズイですね。まずは真っ先にカティンカの方を倒してその後でソフィア先輩の助太刀をするのはどうでしょうか?」
「いくら強化されたって言っても、片腕が無い分多人数相手なら余計に不利になるでしょうから、私はそれに賛成よ」
乃亜と冬乃のどちらかをソフィアさんの方に行ってもらおうかと思ったけど、確かに片方を優先して倒した方がいいか。
向こうにはオルガもいるし、少なくともある程度の時間は稼げるはず。
『ワタシは〔
「アヤメ、もう大丈夫?」
戦力をどう割り振るか決まったところで、アヤメがようやく元に戻ったようだ。
しかし先ほどまでの様子を思うと、いくら援護しかしないし干渉されない状態とはいえ心配になる。
『問題ないのです。まずはここをさっさと片付けて、パパとママの元にご主人さまを連れて行くのです!』
そう言ってアヤメはソフィアさん達の方へと向かって行ったのだけど、僕が【四天王】になった2人の元に何故行かなければならないのか聞きそびれてしまった。
まさか倒せと?
「……まあ今はいいか。よし、それじゃあまずはカティンカからだ。でも冬乃は接近戦になるけど問題ない?」
「当り前よ。[狐火]だけしか能がないわけじゃないところを見せてあげるわ」
〔
しかし本当に大丈夫だろうか?
乃亜の[損傷衣転]があるから、いざとなれば全員巻き込んで〔
そんな風に心配していたけれど、その心配は不要だった。
「いくわよ。[獣化][複尾][
[獣化]により獣の色が濃い獣人形態となり、[複尾]により
さらに[空狐]によって髪や尻尾が薄く銀色に発光し、冬乃が[獣人化(狐)]で自身を強化する全てのスキルを使用していた。
[空狐]は中国ロシアでの
尻尾はともかく見た目は[気狐]の時と変わらないけど、強化率が上がっているようでさらに強力な攻撃ができるようになっている。
「それにしてもまさか[獣化]まで使うなんてね」
[獣化]は手足どころか顔まで狐に変身するせいで、冬乃はあまり好き好んで使いたがらないけど、今はそんな事を言ってる場合じゃないと判断したんだろう。
油断せずに速攻で敵を沈めるつもりのようだ。
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