第10話 次話にてついに
「魔女についてですか? 僕らが知っていることは逐一報告していますが……」
今回の件がどう見ても魔女がかかわっている事が分かるので、詳しい事を聞きたいがために僕らを呼び止めたんだろうか?
しかし残念ながら、報告出来る範囲の事はすでに話しているのでこれ以上は何も話せる事がないのだけど……。
そう思っていたらおじさんが首を横に振った。
「いや、そうじゃない。もし君らが問題なければ1人だけでも構わないから、その人間を明日にでも“色欲”の魔女のところに連れて行って欲しい」
そんな不思議な事を言われてしまった。
だってそうだろう。
“色欲”の魔女に会いに行くのは条件さえそろっていればそれほど難しくは無いし、その方法はすでに報告済みなのだから。
「レジャー迷宮に行ってハーレム用のお風呂に入るだけで会えますよ?」
「それが向かった人間がことごとく覚えてないといって帰ってくるんだ」
それを聞いて察した。
また変な試練作ったな、と。
僕らが攻略するまで50年経ったくらいだし、次の試練もおそらく酷いものなんだろう。
「……未成年の僕らにあの場所の引率を頼むんですか?」
「すまない。だが君らしかいないんだ。【魔王】が現れる直前から一切連絡がつかなくてな」
あれ? エバノラの話しぶりからはかなり昔に国の人間に色々伝えたとは言っていたけど、最近まで連絡を取り合っていたのかな?
「ほとんどこちらから一方的に月一で連絡を取る程度のものだったから、向こうもそこまで重要視していないんだろう。
だが今回の件がある以上少しでも情報が欲しいんだ」
言いたいことは分かった。問題があるとすれば――
「また学校休むのか……」
明日は金曜日なので学校は休まなければいけない。
そろそろ出席日数足りなくて留年するんじゃないだろうか?
「公欠扱いにするよう働きかける」
「授業についていけなくなりそうなのが問題なんですよ」
もう公欠だけで何日休んでることやら。
「すまない。しかし人類が滅亡したら勉強も何もかもが無駄になってしまうんだ」
まあそりゃそうだけどさ。
お金はあるし、別に将来就きたい職業があったわけじゃないから構わないと言えば構わないけど。
人類滅亡までのタイムリミットが3カ月であり、1日でも無駄に出来ない以上は仕方ない。
これもガチャのためと思うしかないね。
こうして僕らは3カ月ぶりにエバノラに直接会いに行くことになった。
◆
「それでなんであんたが一緒に来てるのよ」
「そんな冷たい目で見られると照れちゃうさね」
「どこに照れる要素があるのよ桜」
ポッと頬を器用に赤く染めて両手を当てながらくねくねしている桜さんに対し、冬乃はそんな友人を呆れた目で見ながらツッコんでいた。
「私が冬っち達と面識があるからって事で選ばれたのさ。ただのバイトに対して任せる仕事じゃないと思わないかい?」
「バイトって、あんたどんな仕事してるのよ」
「それは秘密。冗談抜きで守秘義務で言えないのさ」
「ガチガチの守秘義務のあるようなところでなんで学生のあんたがバイトしてるのよ」
「親が関わってるのさ」
「ああそういった繋がりなのね」
疲れていそうなおじさんが連れて行って欲しいと紹介された人物は、なんと桜さんだった。
まあ僕らとしても自分よりも1回り上の大人と共に行動するのは気を使うから、ありがたい人選だと思うよ。
桜さんを引き連れて僕らはすぐにレジャー迷宮へと向かった。
その道中、ソフィアさん達が興味津々でレジャー迷宮にいる魔女や試練について聞いてきた。
「ワタシはレジャー迷宮に行くの初めてなんだけど、そんな所に本当に魔女がいるの?」
ソフィアさんがそう尋ねてきたので、乃亜がそれに頷き答える。
「いますね。わたし達も遊びに行った時はいるなんて欠片も思わなければ、そんな場所で試練を受けることになるとすら思いませんでしたから気持ちは分かりますけど」
「ほう、そうなのか。それじゃあ高宮が受けた試練というのは私達も受けられるのか?」
興味深げにオリヴィアさんが言うけど、あれを受けるとかマジ?
「止めた方がいいわよ。試練の内容が本当に酷いし、その前に蒼汰と混浴しないといけないけど出来るの?」
「こ、恋人でもない者に肌を晒すのか……」
「その程度で怯んでいては到底あそこの試練は突破できませんよ」
「色々と大変だったもん、ね」
「……興味深い」
オルガは興味を持ってるみたいだけど、もし受けるとなると僕が大変なんだけど!?
あそこの試練は必ず男女で受けないといけないから、僕が確定で参加することになるので勘弁してくれませんかね?
あの試練、本当に色々な意味でギリギリな試練なんだよ。
「……諦める」
「うん、そうしてくれると助かるよ」
僕がさすがにこういう場で肉体関係になるのは違うと考えていたら、オルガがなんとか諦めてくれた。
が、まだ諦めてくれない人もいた。
オリヴィアさんとソフィアさんだ。
「諦めるのか? いや、まあ確かに肌を晒すのには少し抵抗があるが、試練を突破すれば【典正装備】が手に入るのなら、試しに受けてみるのもいいんじゃないか?」
「命の危険がなく【典正装備】を手に入れられるチャンスを不意にするのは惜しいよね」
2人は安全に【典正装備】が手に入れられるからか、試練を受けるのもやぶさかではないと思っているようだけど、そこに冬乃がブレーキをかけてくれた。
「代わりに失敗したら貞操を失う上に赤ちゃんまで出来ちゃうかもしれないけど、その覚悟はある?」
冬乃にそう問われたら、2人がたじろぎ困ったような表情を浮かべた。
「それは……止めておくか」
「貞操は諦められても、今赤ちゃんが出来るのは困るからね……」
「蒼汰君のお嫁さんになる覚悟がないとあの試練は受けられない、よ」
それは試練としてどうなんですかね?
幸いにも僕らは一度試練を突破した後、エバノラから施設内で呼びかければ会ってくれると言われているので、そんな倫理を無視したような試練は受けずにすむのだけど。
いや、そこはマジで助かった。
さすがに2度目は突破できる気がしないんだよ……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます