第8話 我らの出番
≪蒼汰SIDE≫
いきなり【
逃げるチャンスがあると思っていたばかりに、どことも知れない所に飛ばされたのはショックが大きかったけど、今はそんな事を思っている場合じゃない。
僕はすぐさま周囲を見渡して自身の置かれた状況を確認する。
まず立ってる場所だけど、いつものダンジョンと同じような石造りでも構造がまるで違う。
いつも潜るダンジョンは通路と部屋が組み合わさり、上や下への階段は基本的に1つか2つ。
だけど今いるここはいくつもの階段があり、強いて言えばピラミッドの中に階段をいくつも足したら、こんな感じになるんじゃないかと思うような造りで今まで見た事ない、つまり未知の場所。
そしてそんな場所で周囲には人の気配が一切ない、つまり1人ぼっち。
それらの事実を改めて認識し、僕は背中にドッと冷や汗をかいていた。
「……ヤバい。死ぬんじゃないのか、僕?」
たいてい誰かが傍にいて僕の代わりに戦ってくれていたけれど、今は僕1人だけ。
今のところ周囲には魔物らしきものはいないけど、もしも【
「それに乃亜達もこのままじゃマズイ」
どうやらここに転移してしまった影響のせいか、手元に出現させた僕のスキルのスマホに表示されている、[チーム編成]のチームメンバーが3枠とも白紙になっている。
強化されている状態でBランクの魔物と相対出来ていた事を考えると、当然乃亜達だって【
「早く合流しないと!」
恐怖で震えそうな体を引っ叩いて、僕はこのダンジョンを
「……どこに行けばいいの?」
今までダンジョンと言えば、下へと向かって行く場所だったのでまだ迷わなかった。
しかしこの場所は、上下左右どこに行けばいいのか皆目見当もつかない
みんなを探しつつ出口があればそちらに向かいたいところだけど、絶対見つけられないだろう。なんせ――
「ラビュリントスとか言ってたし、どう考えても【
ミノタウロスもしくはミーノータウロスの物語は凄く有名だし、つい最近あらすじだけだけど見たことはある。
【
そしてそれこそが脱出が不可能だと悟っている理由でもある。
「アリアドネの糸玉とか持ってる訳ないし、持ってても意味ないし」
色々端折るけど、大雑把に言えばラビュリントスはミノタウロスを閉じ込める為の迷宮であり、一度入ったら二度と出てこられない場所だ。
ミノタウロスを倒した英雄はこの迷宮に
「入口から入った訳でもないのに糸なんか垂らせる訳ないじゃん!」
もう色々詰んでる。
「どこに向かえばみんなと合流出来るかも分からないし、下手に動くのもマズイのかな?」
どうすればいいのか困っていたら、突然手に持っていたスキルのスマホが震えた。
「え、なに?」
本物のスマホではないので通信機能とかないから、誰からか連絡が来るわけがないし一体何なんだろうか?
そう思いながらスマホを見るとそこには――
『我を集めよ』
『妾を集めてくれぬか?』
「このタイミングで何言ってんの?」
ミミックから出てきた謎の黒い石と白い石の欠片。
スキルのスマホが勝手に吸い込んだ結果、集めて欲しいと訴えてくる本当に謎の石だけど、今この緊急事態に言う事じゃないよね?
「いや、今集めてる余裕なんて……ん?」
僕は画面をよく見ると、この2つの石の横に矢印が表示されていて『石の在りか』と書いてある。
僕が体を動かすとそれに合わせて矢印も動いているので、石限定で探知する機能が増えたと言う事だろう。
いや、スキル自体の機能ならメッセージとか届きそうだから、この石自体が示しているのかな?
「石を集めるのに効率がよくなるんだろうけど、今そんな場合じゃ、ってああ!!」
石はミミックからのドロップアイテム。
つまりミミックを倒さない限りは出現しないので、石はその場で放置するか倒した人間が持っているかだ!
「この矢印の先には必ず人がいるんだ」
なんせここは【
新たにミミックが倒されないなら、石は【
「まさかこんな形で、このよく分からない石に助けられるなんて思わなかった」
『我を集めよ』
『妾を集めてくれぬか?』
「よく分からない石発言にちょっと抗議してるの?」
集めてくれしか言わない石だから、よく分からないって思うのは仕方がないと思うんだけどな。
「ごめんごめん。ここから出られたらちゃんと1万個集めきるから、今は協力してよ」
『我を集めよ』
『妾を集めてくれぬか?』
矢印は変わらずどこかの場所を示しているので、おそらく了承してくれたのだろう。
僕は意を決して矢印の方向へと向かって行った。
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