幕間(4) 敗北の確定しているもう1つの戦い
モンスターハウスを作るリソースはこちらが消費しなければいけないが、生み出される魔物はダンジョン側が消費することになる。
本来であれば部屋に入り込むことで発動するトラップだが、今回は設置と同時にトラップが発動する仕組みに変更しているので、それでダンジョン側のリソースが一時的にだが減る。
モンスターハウスで生まれた魔物は生まれた瞬間、周囲の魔素を吸収し、倒された時に生み出した時よりも多くのリソースが放出されることになるので、出来ればやりたくなかったが仕方あるまい。
これでなんとか凌げる。そう思った時だった。
『――ドガンッ!』
「さらに下層の魔物が出現! あれを今倒されたら【
部下から悲鳴にも似た報告が聞こえた次の瞬間には、画面の向こう側では動きがあった。
『しょうがないわねん。こうなったらあたしが行くわ』
トランスジェンダーの者が動き出し、下層の魔物へと向かっていてる。
ぐっ、あれは[アイドル・女装]の彼の仲間。
そちらもついでに調べているが、あの者が動くとなると一刻の猶予もない!
くそっ、手が足りない!
3人いないだけだが、そのわずかな人手が今は切実に欲しいのに!
『一撃で決めるわよん!』
頼むから止めてくれと叫びたかったが、こんなところで騒いだところで向こうに届く訳もない。
これはもう無理だ!
「プランB中断! プランDへと至急移行しろ!」
「正気ですか課長!?」
「ならば600人と300人、どちらがいいか今すぐ選べ!」
「っ! 分かりました!」
プランD。
それは【
「ダンジョン側の【
このプランには2つの意味がある。
「課長、【ミノタウロス】創造準備出来ました!」
「よし! タイミングを見計らって“種”を送り、ダンジョン側の【
「はい!」
1つはダンジョン側の【
しかしその為には少なくともあの場にいる半数の人間を巻き添えにしなければ、捕らえた人間を殺しつくした【
つまり、300人の生贄で残りの300人は確実に生き残らせる非道なプラン。
だがこのまま放置すれば600人の大半が死ぬ。
仕方がない犠牲とも言えるが、このプランの肝はそこじゃない。
生贄となった300人の内、上手くすればその大半が生き残れる――
「課長、“種”の出現位置がずれました!」
「なんだと!?」
「あの場に出現したダンジョン側の【
「なっ、それではあの校長を巻き込めないじゃないか! どうにか位置をずらせないのか!?」
「無理です! すでにあの場に出ているんですよ。どうやって移動させればいいんですか!?」
くっ、これは想定外だ!
2つ目の意味。2体もの【
つまりCランクの〔ミミックのダンジョン〕であればBランクの力を持つ【
あの校長であればBランクの【
何とか手段を講じようにも何も手段は思い浮かばず、時は無情にも過ぎ去っていき、300人の学生達は別の空間へと呑み込まれてしまった。
――バンッ!
「くそっ! 前もって【
思わず私は机を思いっきり叩いてしまっていたが、この胸の内の衝動を抑える事は出来なかった。
なにせこの失態は取り返しのつくものではない。
私1人のクビで済むのなら御の字。
最悪魔術師全体の立場が悪くなってしまう。
「課長、それは無理だったじゃないですか。以前試した時には“種”を送ってもダンジョン側は反応しなかったんですから。
今回こちらで意図的に【
「そんな事は分かっている」
【
「せいぜい亜空間に干渉できるアーティファクトを入手しやすいよう手を回しておくくらいか」
こちらは完全にしくじったが、せめて異界の住人の捕獲は達成していて欲しい。
「白石君達は上手くやっただろうか?」
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