第46話 何とも言えない幕切れ
『あ゛あ゛、ガチャしたい! 今まで一度もガチャなんて回した事ないのに、どうしてこんなにもガチャが回したくて仕方がないの!?』
もはや戦闘など続けられる様子ではなかった。
サラは狂ったようにガチャがしたいと呻いており、先ほどまであった戦意が嘘のようにどこかにいっていた。
「か、鹿島先輩……。本当にあれは一体どう言う事なんだ? いい加減教えてくれないか?」
物凄く怖いものを見る様な目でサラを見ているオリヴィアさんが、どこか弱弱し気な声で僕に尋ねてきた。
そんなにあれ怖いかな?
僕にとっては普通のことだから何とも思わないんだけどなぁ。
「〔
〔
その能力が拡張した結果、相手の心に自分自身の人格を浸食して強制的に分身にしてしまう能力になったっぽい。
ただ僕のガチャへの想いがサラには重すぎたようで、その影響が強く出ている状態であると付け加えたら、オリヴィアさん達がドン引きした表情で僕を見ていた。
「鹿島先輩、頼むからそれを私に向かって使うのだけは止めてくれよ!」
『わたしもアレにだけはなりたくないのです!』
『妾もじゃ!』
「そこまで言う?」
というか言われなくても使う気はないし。
人の心を弄り回すだなんて頼まれてもしたくないよ。
サラに使ったのは、僕らに対して散々おかしな嫉妬心を植え付けてきたから、自分がやられる側になって少しは反省しろという意味も込めて使っただけだし。
「それにしてもまさかこうなるとは。せいぜい僕らを味方だと感じて攻撃する気になれなくなる程度だと思っていたのに」
『まあ自分自身や味方を攻撃しようなどとは思わんじゃろうな。だが、故意ではなかったとしてもいくらなんでも惨過ぎるの』
『拷問並みにひでぇのですよ』
酷い……。
僕の人格を植え付けられるのは拷問と一緒って、人格否定されてるのと変わらなくない?
「思いの外効果が出てしまったのはともかく、まともに動けない今の内に倒してしまうべきだろう」
『さすがに心が痛むの……』
オリヴィアさんが剣を持ってサラに近づいていくところを、シロは止めはしないけどかなり哀れんだ声で見送っていた。
クロの件やこのダンジョン内で散々煽られたのによく同情できるなぁ。
これ、そこまで酷いって思われてんの?
『ぐっ、ガ、ガチャ……じゃない! ま、まさかこんな手段を持っているだなんてね……』
「こんな形での決着には申し訳ないと思うが、このまま貴様を放置するわけにはいかん。悪いがここで倒させてもらう!」
『……フヒッ、好きにしなさいよ』
「なんだと?」
え、好きにしなさいって諦めたの?
『残念だけど、これ以上わたしは戦えないわ。敵であるという認識と同時に、仲間であるという感覚が強すぎて攻撃したくないもの』
「ちゃんと思った通りの効果は発揮していたんだね」
さすがに相手をガチャ好きにするだけの能力ではなかったか。
『足もこの有り様で逃げられないし、戦車に乗って逃げようにもガチャ――ぐっ、まともに操縦できそうにないわ』
「何とも言えない幕切れだな」
『フヒッ、その通りね。でもあなた達の相手はとっても楽しかったし、もう十分よ』
サラは清々しく笑っており、とても満足した表情を浮かべていた。
まあ、あれだけ僕らに嫉妬の念を向けられたらそうだろうね。
『お姉さま達が気を付けてねと言った意味、ようやく分かった気がするわ。
……これ、気を付けてどうにかなったのかしら?』
そんな事言われても僕らには答えようがないよ。
こっちも必死で行動した結果なんだし。
「それでは終わりにするぞ」
『フヒッ、【
倒されても死ぬわけではない――いや、大分昔にとっくに死んではいるのだけど、倒されても消滅するわけではないのだからこそ受け入れられるのだろう。
確かに僕だって死ぬわけではなくて、これ以上どうしようもないと分かったら、まあいいかと受け入れてしまう気がする。
「無抵抗な相手を斬るというのは気が引けるが仕方あるまい。はあっ!」
『ああっ!?』
オリヴィアさんの剣を拒否することなく受け入れたサラはそのまま地面に仰向けに倒れていった。
『フヒッ、わたしの討伐おめでとう。これでこのダンジョンの入口にあった結界は消えて元に戻るわ』
「倒した相手に祝福されるというのも変な話だな」
オリヴィアさんが複雑な表情を浮かべて苦笑いしていた。
けど、その後にサラが発したセリフによってその表情は一変してしまう。
『ドラゴンがダンジョンの外に出て行ってる状態には変わりないけどね』
「なんだと!?」
完全に終わりという空気になっていたのに、とんでもない事言われたんだけど!?
『それはそうよ。だってドラゴンが外に出て行く事と、わたしが倒される事には何の関係もないわ。
ダンジョン内に増えすぎたドラゴンが外に出て行く事をわたしは止める術がないもの』
「そんな……」
言われてみればその通りなんだろうけど、そりゃないよ……。
もう勘弁して欲しいという表情を浮かべた僕らを見たサラがさっきとは別の意味で満足そうに笑っていた。
『フヒッ、最後にその顔が見られてわたしは満足よ。せいぜい苦労するといいわ』
イギリスの件はこれで終わったと思ったらまだまだ解決したとは言えない状態のようだった。
サラが完全に消え、討伐した証である宝箱が目の前に現れたにも拘わらず、素直に喜べない僕らがいた。
外の人達が頑張ってドラゴン達を殲滅しきってくれてないかなぁ~。
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