第20話 ママン
このままじゃ、間違いなく4人ともこの人達に殺されてしまう。
だけど既に3人はいっぱいいっぱいで、時間が経つにつれて不利になるばかり。
でもその中で僕だけは、まだ動く余地がある。
今僕を抱えている
みんなが命がけで動いているのに、僕だけ何もせずにのうのうと助けを待ってなんていられない!
しかし、どうすればコッソリ使えるだろうか?
今も僕をねっとりとした視線で見下ろし続けていて、先ほどから激しい戦闘音がしているのに、そちらに視線をチラリと向ける事すらしていない。
せめてほんの少し、僕がスキルのスマホを操作して、みんなを[チーム編成]で再登録出来れば[成長の花]などの効果が再び適用されて、強化出来るんだけど……。
「あらあら。今日は機嫌が悪いわね? どうしたのかしら?」
う~んと唸っていると、片瀬さんが心配そうに僕を見て、なだめるためかユラユラと体を揺らされる。
そうやって揺らされていたら、ふと閃いた。
……閃いたけど……、これしか、ないのか?
もっと他に言い手があるんじゃないかと思わなくもないけど、僕の頭じゃ、より自身の尊厳を汚す方法しか思いつかない。
許容できる範囲なら、この手しかないか……。
僕は腹をくくると、大きく息を吸った。
「おぎゃあ! おぎゃあ! おぎゃあ!」
見るがいい。これが高校生が本気で泣きわめいている姿だ!
16歳男子、会ったばかりの女性の腕でおぎゃる。
自分でも謎のテンションで内心の恥辱を感じないようにしながら、片瀬さんが一旦地面に降ろしてくれることを祈って暴れる。
「急に泣き出してどうしたの? おしっこやうんちじゃなさそうだし、おっぱいが欲しいの?」
そう言って片瀬さんが服をはだけて、胸を僕の口元へと近づけてきた。
「……お、おぎゃあ! おぎゃあ!」
一瞬我を忘れかけた。
バブみを感じて、ガチでオギャりそうになってしまったよ。
「あらあら、吸いつこうとしないし違うのね」
そう言いながら、片瀬さんは胸を仕舞ってくれた。
危ないところだった。
しかし、いつまで経っても降ろしてくれそうにない。
こうなったら最終手段として漏らすしかないのか……!
さすがに人前でそれをするのは勇気がいる。
片瀬さんだけでなく、乃亜達も離れた場所とはいえ、見えるところにいる場所で漏らすとか、過去一の黒歴史も真っ青な痴態でしかない。
だが下の処理をするのであれば、片瀬さんも両手を自由にするために1回降ろすだろうし、やるしか、ないのか……!!
「じゃあ、こっちかしら?」
そう言って片瀬さんは、自身のスマホを起動して渡してくれた。
えっ、なんで?
急にスマホが渡されたので、思わず泣くのを止めてしまった。
「うふふ、やっぱりこれだったのね。昔はゴメンね。目を離してた隙に10万も課金してたの怒っちゃって。ママ、今は沢山稼いでるから、20万でも30万でも好きなだけ課金していいのよ」
え……、良いんですかママン。
「先輩、何誘惑されてるんですか!? 今はスキルのせいで課金出来ないんですから、そんな誘惑に負けないでください!!」
はっ!
思わずこの人の息子になりたいと心底思ってしまった。
乃亜の呼びかけが無かったら、抗いがたい誘惑に耐えきれないところだったよ。
片瀬さんに抱えられたままだけど、スマホを渡された今ならいける!
「おぎゃ([チーム編成])」
僕はスキルのスマホを、片瀬さんのスマホに被せる様に出現させると、早速操作を開始した。
まずは3人を[チーム編成]で再登録。
「おっと。いきなりでビックリしましたが、身体能力が上がりました」
「ちっ、何をしているんだ、あの女は!」
「ん、パワーアップ」
「はぁ、面倒な。片瀬君に殺されない様、上手く立ち回ったようだな」
「きゃっ! 一声かけてって、あの姿じゃ無理よね」
いきなり強化されたことで、乃亜と冬乃は驚いていたけど、咲夜は普通に順応していた。
先ほどから[鬼神]の全力のON、OFFの繰り返しだったから、多少の強化では動じなかったんだろう。
さて次だけど、普段なら〈武具〉と〈衣装〉の登録を行うけれど、戦闘中にいきなり武具を取り上げれば大きな隙となるからそんな事は出来ないし、服についても同様だ。全裸になるし。
まあ、すでにボロボロになってるので、登録したところであれ以上ボロボロにならないだろうから、意味ないんだけど。
乃亜の[損傷衣転]は何故か時と場合により、服が完全に崩壊して全裸になる時と、服としてギリギリ機能する程度までしかボロボロにならずに、それ以降は肉体がダメージを受ける場合がある。
見る限り、あれ以上ボロボロにならないようなので、わざわざ全裸にしてまで登録する必要はないだろう。
よし、今出来ることは大体終わった。
あとは一着しかないメイド服を誰に着せるかだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます