幕間 森大樹/仲野彰人
≪大樹SIDE≫
オレはハーレムの主になる!
この目標をオレは小学3年の時に定めたな。
性に目覚めるのが早すぎる?
そんな事はないはずだ。
遅すぎるよりは全然いいはずだぜ。
しかし誰もがオレのこの目標に対して止めとけと言った。
何故?
男なら目指すべきだろハーレムを!
だがこのオレの熱い思いは周囲には理解されねえ。1人を除いて。
「君、面白いね」
名前は
女子達が陰で騒ぐほどのなかなかのイケメンであり、初めて話しかけられた時はしばらく拒絶していた。
理由? イケメンは死すべし。
だが彰人は女子に見向きもせず、と言うか人付き合いそのものを否定するかのように誰ともろくに会話してなかったんだが、オレが堂々と教室でハーレム宣言してたら何故か向こうから話しかけてきたんだ。
最初は他に……なんて言われたんだったか? 忘れた。
まあ大したことじゃなかったと思うが、おそらく何でハーレムなんか作りたいのかとかそんなだったと思う。
そんな事イケメンに聞かれて素直に答える訳もないがな。
「近寄るなイケメン! お前が近くにいると女子が全員お前に行く!」
「え、いらない」
「ぶっ殺すぞ」
みたいな会話をしたような気がするな。
ああ、そう言えばその後も度々話しかけられるから鬱陶しくて、嫉妬混じりにお前はハーレムとか簡単に出来そうでいいよなって言ったらこんなことも言ってたか?
「女の子に近づかれてもハッキリ言って迷惑なんだよね」
それを聞いた瞬間、まさかこいつホモかと思ったのでそれがそのまま口に出てた。
「別に特別男が好きとかそういうのはないな~。女の子はやたらと気安く話しかけて来るから鬱陶しいだけで」
「オレがお前だったら……。オレがお前だったら……!」
「2度言う事かい?」
重要だろうが!
なんだよ女子に近づかれて鬱陶しいって!
むしろ鬱陶しいくらい近づかれてえよ!!
「大樹の場合、ハーレム宣言したせいで一切近づかれなくなったもんね」
「それを言うんじゃねえよ!!」
ハーレム宣言して近づいてきたのが男のイケメンとか誰得なんだよ……。
「むしろハーレム目指すのに何でわざわざ教室で宣言したのかが疑問なんだけど?」
「ハーレム願望の女子が近づいてくると思うじゃん!」
「ボクらの年齢でハーレム願望の女の子がいたらビックリなんだけど。普通は恋人とか奥さんって1人だけなんだし」
そんな事今更言われても……。
「そもそも大樹はどうしてハーレムがいいんだい? 大樹だって顔は整ってる方なんだから1人の女の子に的を絞れば普通に恋人の1人は作れると思うけど」
「お前それ何度も聞くな」
「だって気になるじゃないか。大樹の行動ってハーレム作りたいって言っててもその結果が望む結果とは真逆の結果になってるから余計ね」
「……だって英雄はハーレムを作るもんだろ」
「はい?」
言っている意味が理解できていないのか首をかしげている彰人に、オレは語り続けた。
「テレビとかでもダンジョン潜って英雄になる奴はみんなハーレム作って活躍してるんだ。オレだって英雄になりてえ」
「ぷっ、あははははは!」
「何だよ! 笑ってんじゃねえよ!」
「いやだって、英雄になりたいからハーレムを目指すって普通逆じゃない? なのにハーレムからって順番がおかしいよ」
「うるせえ!」
「うん、でもいいんじゃない」
「あん?」
「英雄になってハーレムが出来るのも、ハーレムを作ってから英雄になるのでもさ。ただ大樹の場合は女の子が好きなのもありそうだけど」
「それは当たり前だろうが! 可愛い女の子が自分の傍にいてくれると思うとすげえ嬉しいぜ」
笑われたのはムカつくが馬鹿にするような笑い方じゃなくて、ただただ可笑しかったから笑ったこいつをオレは嫌いになれなかったし、何よりオレの夢を肯定してくれたのは素直に嬉しかったのでまあよしとする。
「大樹はやっぱり面白いな。ボクはその夢を応援してるよ」
この瞬間、生涯の友はこいつだと確信した。
イケメンで女を全部寄せ付けちまうような奴だけど、他の奴と違って馬鹿にしたり否定したりしなかったこいつとはずっと友達でいたいと思った。
≪彰人SIDE≫
大樹との出会いから6年が経ち、中学3年になったボクらは昔と変わってな……いや、結構変わったかな?
なんせ大樹ときたら中学生になってもハーレムを目指すことに変わらないけど、どちらかと言うと英雄を目指すよりも女の子に囲まれてチヤホヤされたいって願望の方が大きくなったのか、ちゃらい見た目になって女の子により積極的に話しかけるようになったし。
昔みたいに引かれたりはしなくなったけど、一緒にいて楽しい男友達の枠から先にいけないせいか、何度か告白して撃沈している。
それでもめげずに色んな子にアタックしているんだから面白いよね。
「うおおおぉ、何故毎回「ごめんなさい、友達としてはいい人なんだけど……」って言われなきゃならないんだーーー!!」
「視線とか露骨すぎるんじゃない? 胸とかお尻ばっかり見てるから好感度が上がらないんじゃないの?」
「うるせえ! つうか好感度とか彰人はゲームに毒され過ぎだろ!」
「リアルの人間よりもゲームの中の女の子の方が可愛いからしょうがないね♪」
「なんでこんなギャルゲーに染まった奴が定期的に告白されてんだよーーー!!」
「迷惑だけどね」
「くっそー、見てろよ彰人。高校生になって冒険者になったら活躍しまくって今度こそハーレム作ってやるからな!」
「その前に彼女を作ってから言いなよ」
「彰人のバカヤローーーー!!」
泣き真似しながら走り去ってしまったボクの唯一の友人は、あの頃と色々変わったところはあるけれど、見てて面白いことには変わらない。
出来れば高校でも変わらず面白いままでいて欲しいね。
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