エピローグ2

 

≪蒼汰SIDE≫


 シミュレーターで異様に強い熊と戦って1日が経ち、今日から3日間、僕らは〔ミミックのダンジョン〕で遠征を行うために、校庭に集まっていた。


 〔ミミックのダンジョン〕にはこの学校に来てからの放課後の数日と、休日の2日間に潜っただけだけど、ミミックの戦闘力が大したことがない割に得られる経験値が多いおかげで、順調にレベルが上がっている。


「この遠征でレベル100は確実に超えるだろうから、スキルスロットは増えるだろうし、戦い方の幅も広がるよね」

「そうですね。ようやく今のスキル以外にもスキルが手に入ると思うと嬉しいです」

「わたし達、咲夜さん以外1つのスキルしか持ってないものね」

「で、でも、みんなのスキルも1つのスキルだけとは思えないくらい、色んな事が出来るよ、ね」

「戦闘で使えなかったり、微妙なスキルも多いですけどね」


 確かに乃亜の派生スキルで[第三者視点]はともかく、[シーン回想]や[足跡地図化]は戦闘では役に立たないだろう。

 僕のスキルほどではないけどね!


 5つの派生スキルの内、[チーム編成]以外戦闘に関われるスキルが無いのが辛い。

 その[チーム編成]だって間接的に関われるだけだし。


 せめて自分の身は自分で守れるよう、スキルスロットが増えたら何かしら戦闘系のスキルが欲しいね。


「おう、蒼汰。準備は出来てるのか?」

「あ、大樹。準備って言っても、いつも通りダンジョンに行く装備はしてるし、水や食料なんかはとっくに準備してあるから、特に準備する事なんてほとんどないけどね」

「そりゃそうだな」


 大樹も迷宮氾濫デスパレードの時に持っていた大剣や防具を身に着けており、やる気もいつも以上にみなぎっているように見える。


「この遠征から帰ってきたら、オレ、ハーレムを作るんだ」

「死亡フラグは止めい」


 いや、むしろここであえて言う事で、死亡フラグを折ってるとも言えるかもしれないけど。


「ロリハーレムを作るんだな」

「ケモ耳ハーレムを作るぞ」

「お姉さんハーレムを作りますよ」

「便乗するなよ」


 いつの間にか現れた性癖三銃士も大樹同様にやる気を漲らせ、乃亜達はそれを避けるかのように、いや、絶対避けるために、この冒険者学校に来て仲良くなった不川女王さんの元に避難していた。


 女性だけで集まってなかったら、僕もそっちに避難したかったな。


「君達は相変わらずだな」

「彼らは会った時からあんな感じですね。あれはともかく、智弘さん達もやる気は十分そうですね」

「もちろんだよ! 長時間占有ダンジョンでの狩りが出来るのに、ここでやる気を出さないで、いつやる気を出すって言うんだ!」


 なんかスポ根みたいな、熱血的な雰囲気を感じる。

 まあ確かに自身のレベルを上げる上では、占有ダンジョンに入れる今だけがチャンスと言えるから、智弘デッキさんの気持ちも分からなくはないけど、今からこのテンションで大丈夫なんだろうか?

 3日間はダンジョンにいる事になるのに、いつまでこのテンションが続くんだろう?


「落ち着くでやんすよリーダー。長時間潜る事になるからこそ、体力は温存するべきですぜ」

「………(コクコクッ)」

「気持ちは分かるでござる。今のところこの学校に転入する予定はないでござるからな」

「あれ? そうなんだ」


 てっきりこの学校に通うものだと思っていたよ。

 学費ならダンジョンで稼げるだろうし。


「まだ親の説得の方は出来てないでござるからな~。学費を問題にしている親ならこのダンジョンでどれだけ稼げたか示すことで何とかなるでござるが、将来の進路で冒険者よりも公務員とか安定した職に就いて欲しいと思う親に対しては決定打が無いのでござるよ」


 冒険者は自営業みたいなものだから、収入はそりゃ安定しないよね。

 将来を考えたら冒険者学校よりも普通の学校に通わせて、安定した職に就かせようとするか。


 しかし将来冒険者になる気しかないなら、むしろ冒険者学校に通って、今のうちに効率よくレベルを上げ、ここでダンジョンに関わる情報を深く調べる方がよっぽどいいのだけど、中々そういうのが分かってくれる親じゃないと厳しいか。

 うちはほとんど放任主義みたいなものだから、冒険者になるためにこの学校に通う事にしても問題ないだろうけど。


 しばらく僕らは校庭で喋りながら待っていると、教師の人達が現れてそれぞれのパーティーごとにいくつかの集団を作ると、それを2列にして並べ始めた。

 そろそろ時間だというのが分かり、周りはおろか、僕や乃亜達もソワソワし始める。


「そろそろですね」

「いつもと同じようにダンジョンに行くだけなのに、今回ばかりは緊張するわね」

「長時間ダンジョンに潜ることなんてないから、ね」


 みんなの緊張感や興奮がピークに達してきた時、校舎から校長が現れる。


 校長の恰好も前に会った時のようなスーツではなく、ダンジョンで活動できるような動きやすい服装に防具を身に着けていた。

 どうやら校長も一緒にダンジョンに向かうようだ。


 その校長が朝礼台の上に立ち、手に持っていたマイクを口元へと持っていく。


『これより我々はダンジョン遠征を行う』


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・あとがき


4章冒険者学校編前半はいかがだったでしょうか?

ぶっちゃけた話、4章で冒険者学校からダンジョン遠征まで終わらせるつもりでした。


蒼汰)「……今からそのダンジョン遠征なんですけど」

作者)『人の反省中に割り込んでこないで』

蒼汰)「いや、こんなところで反省会してないで1人でしてくださいよ。そんな事よりもダンジョン遠征が終わるどころか始まるところで4章が終了してるんですけど、どういう事ですか?」

作者)『8話から18話』

蒼汰)「はい?」

作者)『冒険者学校らしさが占有ダンジョンだけだといまいち物足りないと思った』

蒼汰)「いや、別にそんな事ないような。本編ではほぼ描写がなかったですけど、図書館とかダンジョン関連に溢れてましたよ」

作者)『もっと、らしさを求めた結果なんだよ。そしたら妙な新キャラが次々と出てきて、何故かバトルまでした結果、文字持ってかれた……』

蒼汰)「自業自得じゃないですか」

作者)『その辺りは初期プロットにはない部分で、9話辺りから脱線し始めた』

蒼汰)「めっちゃ序盤!?」

作者)『17話まで消化した段階でようやく、「あれ?これ2章を上回るレベルで長くなるんじゃね? 出てきた新キャラ絡ませたり、魔術師の話も絡めるからかなりヤバくね?」と思い始めて』

蒼汰)「2章も妙なスキルとかつけたせいで長くなったんでしたね」

作者)『慌ててプロットを見つめた結果……、半分にぶった切った』

蒼汰)「雑!?」

作者)『つまり4章は5章への布石だったのだよ!』

蒼汰)「な、なんだってー! って言う訳ないでしょ。完全に行き当たりばったりじゃないですか」

作者)『お前にそのスキルを着けるくらいには行き当たりばったりだから、読者もその辺は分かってるはず』

蒼汰)「読者頼りですか」

作者)『5章、長くなりそうだなー』

蒼汰)「そう言って今度は短かったらどうするんですか?」

作者)『またこのあとがきで言い訳しながら「作者だからしょうがないよね」で済ます』

蒼汰)「反省してないな、この作者!!」



そんな訳で4章が作られました。

結局山登って道を誤り遭難するレベルで、プロットが息をしていない気もしますが、無いとそれはそれで困るので。

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