第11話 性癖三銃士


 《蒼汰SIDE》

 

 僕らは受付の人に渡された試験案内の紙に従って、試験会場へと訪れた。


「Dランクの〔ラミアのダンジョン〕が会場なんだね」

「冒険者としての実力を見るんですから、ダンジョンが試験場なのは当然ですが、Dランクのダンジョンですか……」

「〔ゴブリンのダンジョン〕がFランクだったことを考えると、今更だけど2段階上のダンジョンに来て大丈夫かな?」

「大丈夫じゃない? 試験なんだから、ある程度安全に配慮してるでしょ。

 安全が確保されてる時にDランクのダンジョンを見ておけると考えればいいじゃない」

「そうだね。今回下見して、どのくらいのレベルになれば挑戦できるか判断できるのはお得だね」

「そうそう」


 試験前なだけあって少し緊張していたけど、白波さんの前向きな発言のお陰か、それが少し和らいだ。


 〔ラミアのダンジョン〕の冒険者施設へ行くと何十人とロビーに人がいて、おそらくこの人たちも“迷宮氾濫デスパレード”参加のための試験に来たんだろう。

 キョロキョロと周囲を見渡していると、ある人物と目が合った。


「おっ、蒼汰じゃねえか。お前も試験を受けに来たのか?」

「あれ、大樹? うん、そうだけど、大樹もそうなの?」

「おうよ! 普段からこの〔ラミアのダンジョン〕で活動してんだが、そこの掲示板に試験案内の紙が貼り出されてあったのを見てな」

「えっ? 受付とかで試験の案内をされたんじゃなくて?」


 僕らは受付でこの試験の存在を教えてもらったから、てっきり大樹もそうだと思ったんだけど。


「いや、それはねえな。普通は参加する有無を受付で言って、条件を満たしてれば参加できるようだったぞ」

「へー、そうなんだ。僕らは受付でこの試験の案内用紙をもらったから来たんだけど」

「ん~、ああ。蒼汰達は普段〔ゴブリンのダンジョン〕で活動してただろ。Fランクダンジョンで活動してる冒険者は、実力不足と判断されて掲示板にすら案内の紙が貼られないそうだが、【魔女が紡ぐ物語クレイジーテラー】を倒した蒼汰達は例外ってことで紹介されたんじゃないか?」

「なるほど」


 そう言う理由なら納得がいくね。


「それにしても大樹。普段はこのダンジョンに潜ってたんだね」

「そういや言ってなかったな。冒険者になる前の蒼汰は、ダンジョンに全く興味なかったから話す機会がなかったし」

「わざわざ電車で3駅離れたところに来てるくらい、実力が離れてるとは思わなかったな」


 大樹の誕生日が4月だと考えると、1年でDランクって相当頑張ってるんじゃないだろうか?

 そう大樹に言ったところ逆に呆れられた。


「……1月ちょっとで【魔女が紡ぐ物語クレイジーテラー】倒しちまった蒼汰ほどじゃねえよ。オレがここに来始めたのは2か月前からだぞ! このダンジョンに来るまでに10か月近くかかってんのに、何でもうここに来れてんだよ!」

「仲間がいたから? まあ今日は試験のついでに下見をして、無理そうなら1個下のランクのダンジョンに行くけど」


 本当に頼もしい仲間のお陰で、あっという間にここまでこれた。

 ランクの高いダンジョンでレベル上げが出来るのは本当にありがたく、早くスキルを変質させて思う存分ガチャがしたい僕にとっては嬉しい限りだ。


「仲間ならオレにもいるが、お前ほどじゃねえよ」


 そう言って大樹の後ろでこちらの様子を見ていた3人の男達を、1人1人親指でさしていく。


「おねショタ、ロリコン、ケモナーの性癖三銃士だ」


 かつてない酷い紹介だった。


「初対面の方にそんな紹介するのはどうかと思いますよ。それに私は年上が好きなだけですから。三嶋平一郎みしまへいいちろう です」


 僕と同じくらいの身長で、しっかりしてそうな雰囲気で大樹をキチンと諫めているけど、性癖の訂正をわざわざする必要はあったのかな?


「全くなんだな。誤解を与えるような事、言わないで欲しいんだな。谷津崇真たにづすうまな」


 凄く特徴的な喋り方をする、僕より頭一つ分くらい小さい小太りな人だった。こっちは訂正どころか否定すらしないんですね。


一柳楓雅いちやなぎふうがだ」


 最後の1人は口数少なく、眼鏡を持ち上げながら自分の名前を言っていた。

 なんだか孤高な感じの雰囲気な人だな。


「えっと、鹿島蒼汰です」


 とっさに、よろしくの言葉を発するのが躊躇われたせいで、名前しか言えなかったけど仕方ないよね。

 だって三嶋さんおねショタはともかく、谷津さんロリコン一柳さんケモナーの僕を見る目が羨望と嫉妬の混ざった目をしてるのだもの。


「……高宮乃亜です」

「……白波冬乃よ」


 2人はちょっと嫌そうに自分の名前を言っていた。

 気持ちは分かるよ。

 さっきから谷津さんロリコン一柳さんケモナーが妙に視線をそっちに向けてたし、さっきの大樹の紹介の後じゃね。


 乃亜が僕の服を摘みながら背後に隠れ、白波さんも僕を壁にすることで視界に入れられないようにしていた。


 ちょっと微妙な空気が漂い始めた時、ふと視界に入った人が今朝見たばかりの人だった為、思わず声をかけてしまった。


「あ、四月一日わたぬき先輩も来たんですね」

「……うん」


 僕らの横を通り過ぎようとした四月一日わたぬき先輩を、偶々見かけたので思わず声をかけたら、

 その様子を見ていた三嶋さんおねショタが目をクワッとさせてこっちを見て来た。


 とんでもないメンバーでパーティー結成してるね、大樹……。

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