第21話 魔法スキル

 

「じゃあ教科書の45ページを開け」


 教師の指示で僕らは教科書を開く。

 僕らにも教科書は配布されているので、わざわざ他の人から見せてもらう必要はない。

 それにしても、ダンジョン学なんて教科書の存在は初めて知ったな。


「お前らの中には魔法のスキルを身に着けてるやつもいるが、ほとんどのやつはそのスキルを持ってないだろう。

 ハッキリ言ってこのスキルは他のスキルに比べて汎用性が高く、ダンジョンに潜るのであればパーティーの中で1人は持ってると安全性が増すから、卒業した後冒険者になるならそのスキルの習得を目指した方がいい」


 僕らのパーティー全員、ユニークスキルのせいでスキル枠が増えないんですけど……。


「とは言えそれも絶対ではない。魔法スキルでなくても有用なユニークスキルを持ってるなら、そちらであっても問題ないしな」


 そう言って先生は僕らを、いや冬乃をチラリと見て言った。


 冬乃の真っ白な狐耳と尻尾を見たんだろう。

 [獣人化(狐)]は十分有用なスキルであるということの様だ。


「分かってるとは思うが基本的にスキルを習得する方法は4つ。いや、実質2つか」


 どんな方法なんだろうか?

 スキルスロットの枠が空いてないけど、いずれ空いたら増やしたいし、ぜひ聞いておきたい。


「まず1つは16歳になった時に得るユニークスキル。

 2つ目がスキルを持っていない状態で魔物を初めて倒した時に得るスキル。

 この2つは1度きりだから気にしなくていい」


 なるほど。確かに実質2つか。

 2度あることじゃないから、この2つは参考にならないとして、他にどんな方法が?


「3つ目がダンジョンの宝箱にスキルオーブとして入っている場合。どんなスキルかは鑑定しないと分からないし、見つけられるかは運次第だな」


 今まで見つけられなかった僕らは運が無いってことですか?

 デメリットスキルだったり【魔女が紡ぐ物語クレイジーテラー】に出くわしたりしてるんで、運がないのは間違いないけど。


「そのスキルオーブは専門店で売られているが、ランクの低いスキルであっても高額だから、手に入れるには金がかかるので頑張れ」


 応援が雑。


「最後の1つがダンジョン攻略時に得るスキル。スキルスロットが空いている状態で、自身が一度も攻略したことが無いダンジョンで最下層にいるボスの魔物を倒すとスキルが付与される。

 この方法ではダンジョンのランクが高いほど良いスキルが手に入るらしい。

 その際スキルを習得するのを拒否する事も出来るらしいが、普通はそのままスキルを受け取るだろうな。Fランクのダンジョンであってもそこそこのスキルは貰えるようだから」


 あーそう言えば冒険者講習でそんな話があったね。

 スキルスロットが空いてなかったから、今は関係ないとスルーしてたし。


「スキルは買うなりダンジョンで習得するなり方法があるが、魔法スキルを運よく覚えられるタイミングがあったらそれを逃さない方がいいだろう」


 今は無理だけど、魔法スキルでなくても戦えるスキルを手に入れるチャンスがあったら是非とも欲しいよ。


「魔法スキルは様々な属性があるが基本は同じだ。〝球〟〝盾〟〝鎖〟〝衣〟の4種類の効果がある。

 〝球〟はファイヤーボールと言った放出系の魔法をイメージすれば分かりやすいだろう。

 〝盾〟はファイヤーウォールなどの相手の攻撃を防ぐ壁を出す魔法、〝鎖〟はウォーターバインドなどの拘束系の魔法だ」


 見た事のある光魔法や土魔法も確かにそんな感じの魔法だったな。


「最後に〝衣〟だが、これはそれぞれの属性によって異なる効果を発揮する。

 たとえば火魔法であれば武器強化などの物への強化になる」


 へー、魔法って言っても色々あるんだな。


「属性により〝衣〟以外の3種類の効果に得手不得手があり、属性によっては一切効果を期待できない場合がある。

 たとえば光魔法だが、これは攻撃力を持たない特性のため、〝球〟による放出系の攻撃を放っても相手を素通りしてしまう」


 そう言えば穂香さんが自分は戦闘力皆無とか言っていたけど、この特性のせいなのか。


「他の属性もメリットデメリットがあるから、もしも専門店でスキルオーブを買う際には、一度教科書に載ってる属性ごとの特性を調べてから買った方がいいだろう。

 もっとも、魔法スキルを習得したからと言ってすぐに使いこなせるものでもないが」


 魔法スキルにちょっと憧れを持った生徒たちを、上げて落とすような事言わないでくれませんか?


「魔法スキルはたとえば[身体強化]のスキルの様に、ただスキルを発動させればいいだけでなく、これまでの経験と具体的なイメージに加え、名前付けしなければ発動しない」


 そう言えば穂香さんや谷津さんロリコンが魔法を発動させる度に魔法名を唱えていたっけ。


「ただ炎の塊や水の壁を出す程度なら苦労はしないだろうが、その炎の塊をただの球体から槍に変えたり、水の壁を流水の壁に変えたりするには、ひたすらスキルを使い続けて訓練しなければその技は習得できない」


 ゲームで言うところの熟練度みたいなのがあるんだろうか?


 言われてみると穂香さんの魔法は洗練されたように見えたが、谷津さんロリコンの魔法は単純なもののように見えたのはこういう理由なんだろう。


 この授業、少し興味のある程度で、スキルスロットの枠が空かない間は関係なさそうに思えたけど、結構面白いな。

 もしもまた人と戦う事になった時、相手が魔法スキルを習得していた時の対策になるだろうし、しっかり各属性の特性を覚えておこう。


 僕は授業が始まった時よりも真面目に、授業が終わるまで先生の話に耳を傾けていった。

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