第13話 いつから我々が1体だけだと錯覚していた?
≪蒼汰SIDE≫
「ぎゃー! 死ぬーーー!!」
「馬鹿野郎! 黙って抱えられてろ。舌を噛むぞ!」
僕らは今、
「穂玖斗さんが大声出すからこんな状況になったじゃないですか!?」
「うるせぇ! さすがにこんな状況は予想外だよ」
確かにそれはそうだ。
普通ミノタウロスと言えば、迷宮に閉じ込められた怪物の話であり、その数はミーノース王の息子1人だけのはず。
ミノタウロスは王の后が牛との間に出来た子供で、妾も同じように呪いで性癖捻じ曲げられて産んでいたら2人目がいるのかもしれないけど、そんな話聞いたことはないし……。
『ブモ?』
「「3体目!?」」
一体何体いるんだよ!
どうしてこんなミノタウロスが複数体いるのかを考えている余裕がないほど、次から次へと現れるな!
それに加えて女のミノタウロスまでいるし、世界観無茶苦茶になってるじゃん!?
「蒼汰、さっきのやつ頼む」
「了解」
僕はすぐさまスキルのスマホを操作し、[フレンドガチャ]で出てきたアイテム、胡椒を渡す。
「よっしゃ! これでもくらえ!」
投擲された胡椒は前方に現れたミノタウロスの顔面へと真っ直ぐ向かって行き、ミノタウロスがかわす事も出来ず当たっていた。
『ブッ、バヒュバヒュ!』
「うし、今だ!」
胡椒で苦しそうに目を瞑ってくしゃみをしている隙に、その横を易々と通り抜けることに成功する。
『『『ブモオオオオオ!!!』』』
「追ってくるのが3体になっただけで、さっきより悪化しただけですけどね!」
「これが乃亜を追いかけてるんじゃないから問題なし!」
「問題しかないわ!!」
僕ら絶賛命の危機なのに、なんで余裕あるんだこの人?
「さっきミノタウロスを撒いた時のように、狭い通路を抜ければあいつらは追って来れねえさ」
「問題はその狭い通路が全然見当たらない事ですけどね!」
最初に通った狭い通路に戻れればいいのだけど、最初にいた場所なんてとうの昔に分からなくなってるし、そもそもどこを走ってるのかも分からない。
「あいつらが思ったより弱いとはいえ、さすがに3体のミノタウロス相手に戦えねえし、どうしたもんか」
「煙幕投げても、鼻か耳がいいのか余裕で追いかけてきますしね」
頭が牛なだけあって、そういう感覚は野性的というか鋭くて困る。
これでは一向に撒くことが出来ないんだけど、どうすればいいんだ。
適当に足止め出来そうな尖っていて鋭いものを地面に投げ捨てたりしてもみた。
あいつら裸足だから、それが突き刺さって動きを止めるかもしれないと思って。
しかし肌が咲夜のように頑丈なのか、踏んづけても意に介さずに真っ直ぐ追ってくるのだからやってられない。
「これじゃあ誰かと合流出来てもその人に迷惑が掛かるから、何とかしてあのミノタウロス達を撒きたいところなんだけど……」
そう思っていたのに、不運な人というのはいるものだとこの時思った。
「………っ!?」
「あ、省吾さん!」
「[城壁生成]」
「うおっ!?」
しかし巻き込んでしまったのが
省吾さんはこちらを見て目を見開いていたけれど、すぐさまスキル[城壁生成]を発動してミノタウロスと僕らの間に壁を作ってくれた。
城壁の向こう側からはガンガンと音がするも、この城壁は壊れる気配はないし、天井近くまで城壁が届いているので乗り越えられる心配も無し。
良かった。難を逃れたよ……。
「すいません省吾さん。お陰で助かりました」
「……(フルフル)」
首を横に振ってくれて、まるで気にするなと言う態度なので凄く助かるよ。
「いやー色々あってミノタウロス共に追いかけられる事になったが、助かってよかったぜ」
「どの口がそれを言うんだ。あんたのせいだ、あんたの」
「蒼汰、過ぎた事は言っても仕方ないだろ? それよりもこの後のことだ」
年上じゃなかったら殴ってた。年下だったら5発は殴ってた。
「この後ですか?」
「おう。なんせ今はこいつのお陰でミノタウロス共から身を守れているが、未だにしつこく城壁を殴りつけてくる以上、スキルを解くわけにはいかねえ」
「確かにそうですけど、その内諦めてどこかに行ったりしませんかね?」
「その前に反対側からミノタウロスが追加で来たら、来たやつを倒すか退けねえと、今度は4体に追われることになるぞ?」
「それは最悪ですね」
というか、ここにミノタウロスは何体いるんだか。
「じゃああの城壁の向こうのミノタウロスを倒すか追いやるかしないといけないんですけど、どうやって?」
「どうすっかな?」
う~ん、まさかのノープラン。
いや、勝てる算段があるならずっと逃げ回ったりしてなかっただろうけど。
「………(トントン)」
傍にいた
「どうしました省吾さん?」
「……ある」
「はい?」
「……あいつらを撒く方法、ある」
小声でボソボソとこの状況の打開策を省吾さんは話してくれた。
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