2日目「私、恋嫌いだわ。」

「私、恋嫌いだわ。」


僕のベッドの上で横にゴロゴロ転がりながら、スマホで小説を読んでいた紗奈さなは唐突にそう言った。


彼女が唐突に言うのは今更だし、僕のベッドで転がっているのも今更だ。


「ふーん。」


そう言いながら、僕は今日のノルマの連立方程式を解いていく。

x=yの時、、、。


「何でか聞いてよ。」


僕は目の前の問題を解きながら、聞いた。


「何で?」

「辛いからよ。」

「うん、恋ってそんなものだよね?でも、その中に嬉しいことや楽しいこと、自分で頑張ろうと思うことがあるから、全部が全部悪くないよね。」

「そうね。」


僕は次の問題に移る。

x二乗がyと比例関係にある時、、、。


「この2人、高校生のクセに結婚の約束するのよ。」

「それは、、、早過ぎるんじゃない?」


「ん〜。」

目を細め、しかめっ面で紗奈は僕の方を凝視する。


見られているのが分かる。


僕は、参考書とノートを見ているフリをするが、ノートの端に、もしやこのやり取り定番化するのか?と書き込んだ。


僕は冷や汗が出そうな気持ちで、椅子で固まってしまった。


無言のプレッシャーってこういうことを言うのだろう。


「まあ、いいわ。

、、、とりあえず、振ってあげるから颯太告白して来なさいよ。」


僕は我慢出来ずに椅子をくるりんと回転して紗奈を見る。


「どうして、振られるために告白しないといけないんだ?」


紗奈がスマホを見せながら言ってくる。


「そこからすれ違いラブコメが始まるからよ。」


流石に僕は、訳が分からなくなって聞いてしまう。


「何で、振ったのにラブコメが始まるんだよ?それなら振らなかったら良いじゃないか?」


「告白された方に彼氏がいたから、受けれなかったのよ。」


紗奈は僕の枕を抱えて、また横にゴロゴロ〜。


「紗奈、彼氏居るの?」

「居ないわよ?」

「じゃあ、受け入れれば良いじゃん。」

「そういう話なんだから良いじゃない〜。」


ゴロゴロ〜、どたんとベッドから落ちた。


「大丈夫?」

相変わらずの紗奈の奇行だが、怪我をしないか心配だ。


のそのそと紗奈はベッドに戻り、僕の枕を抱き枕にして、、、こら、匂いを嗅ぐな。


「まあ、良いわ。

今度無料の美術展があるから、一緒に行くわよ。

そこの絵の下で振ってあげるから、ちゃんと告白するのよ?」


「一緒には行ってあげるけど、振られると分かってて告白はしないよ。」


何だか毎回、こんな風に適当な口実で一緒に出掛けているけれど、まあ、いいか、と僕は考えるのをやめた。

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