1年と204日目その2「そもそも寝取られって何だろう?」
「そもそも寝取られって何だろう?」
紗奈がコロンコロンとベッドの上で転がりながら、唐突にそう言った
「何って、何?」
僕が尋ねると紗奈はコロンと横向きにこちらを向く。
「カクヨムラブコメで寝取りとか……浮気もそうだけど簡単に氾濫してるけど、そもそも浮気する人はするし、しない人はしないよね?」
「まあ、そうだね」
僕ははっきり浮気しないだろう。
そういう欲望がないとは言わない。
人である以上、何より男である以上、そういう欲望が存在することを否定すること自体が無理がある。
それが分かってるからこそ、最初からそういう場所は徹底的に行かないようにシャットダウンする様にしている。
極端に言うと、女の人と部屋で2人っきりになった時点で過ちが発生する可能性は十分にあると思っているし、過ちが発生した時点で大切なもの全てが崩壊することもよく理解している。
そう伝えると。
「そうなのよね。
だからこそ私も颯太以外の人と2人っきりにはならないのよ。
でも世の中には、結構そういうところが無頓着な人も多いよね?
そもそも、犯罪以外はそうなる土壌があるというか、どこかでそうなってもいいと思っていることなんだろうね」
それは僕も思っていた。
だからこそラブコメで寝取り浮気から入る物語に違和感を感じていた。
「好きとかそうじゃないとかだけで物事を判断するなら、彼氏や彼女以外を好きになれば、ラブコメ上は許されるってことなんだろうね。
好きじゃなくても簡単に快楽に流れるとか……。
愛している人よりも自分が優先という考えが。
うーん、僕はそういう好きレベルは軽く見えるけど、それは人によるんだろうね」
「私もね。
それについては人それぞれでしょうね」
こういう価値観が僕と紗奈では同じだ。
もっとも、ここにこだわってしまうのは、僕らがひどく単純に恋愛に対して硬いのもあるだろう。
数十年前、もしくは愛という概念が日本に入ってくる前。
恋愛上の浮気とか、身体の関係とか、そういうのは現代よりもずっと緩かったということもある。
「僕らが僕らであるのは、変な話かもしれないけれど今この時、この時代だからこそなんだろうね」
「そうね。
悪いけど寝取り浮気される私とかが存在したら、時空を超えて始末するわ」
紗奈にかかれば、カクヨムラブコメもSFにさえなってしまうらしい。
「それに人間関係って言うほど強固なものではないでしょ?
だからこそ愛しいし大切にしなければならないものなのよ。
……ということで颯太カモーン!」
「はいはい」
「はいは一回!」
そうして僕らは口を重ねる。
まだこれからの人生の中で、大人になる前の僕らは間違うことも沢山あるだろう。
だけど、いいや、だからこそ。
もっとも大切な存在だけは失わないように。
それを心掛けて努力していくのだ。
もっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅ……。
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