96日目「ごめんね、颯太。」

「ごめんね、颯太。」


紗奈は部屋に入って来て、ふらふら〜っと歩いて、ぼふっつと僕のベッドに倒れ込む。

「んっ!」

スマホを僕に見せる。

読めということらしい。


紗奈の隣に座り、紗奈の頭を撫でると、紗奈がチラッとこちらを見る。

ベッドの枕元の棚に置いてあったリップクリームを手に取り、紗奈の唇に塗る。

僕の唇と紗奈の唇を重ね、ムラなくそれを伸ばす。


それからスマホを手に取り読む。


「紗奈にしては、珍しく寝取り、浮気にザマァのあるものを読んだのかな?」

「短編だからサクッと読めて、読み易かった。」


「ふむふむ、紗奈が悪い気がしないなら、良いかな。」


ふ〜む、なるほど。


「最初にそういう浮気とかがあるって心構え出来てると、やっぱり作品としてしっかり読めるよね。

不意打ちは1番タチが悪いから、タグは重要だよね。

特に現代ドラマや恋愛にしてると、しっかり考えさせることがテーマって分かるし。」


紗奈はガバッと身体を起こす。


「そうなのよ、重い話だと特に、そのタグ違いはダメージでかいよね。

問題は次よ次!」


「あー、こうなったか。

それで、何がごめんなさい?」


また、紗奈はばったりと倒れる。


「もし颯太が別の女と付き合ってたりしたら、同じように別れさすように仕向け、さらに裏事情を知るクズ男を始末するかも知れないわ、、、。」

「うん、犯罪はダメだよね?」


またガバッと身体を起こす。


「でもね!クズ男に対して同じ真似をするのに、大問題があるの!」

「うん、真似しちゃダメだからね?」


紗奈は僕の服の袖を掴み、沈む。

「、、、そもそも、私、颯太以外の男の人と2人で会ったり出来ないの。

拒絶反応が出るの、、、。」

「頼むから、他の男と2人で会うことのないようにね?」


紗奈の顔をこちらに向け、口を重ねる。

もきゅもきゅ。


「、、、うん。でも、颯太が別の女に取られたらどうしよう。」

「そもそも、すでに紗奈と付き合ってるから、他の人の物になりようがないよね?」

「、、、あれ?そっか。」


もう一回。

もきゅもきゅ、、、。


紗奈を抱き締め、背中をぽんぽんしてあげる。

「でも、そもそも犯罪行為はダメだからね?」

「は〜い。」


もきゅもきゅしてしまったので、もう一度、リップクリームを手に持つ。

紗奈は目を閉じて、塗られるのを待つ。

だから、とりあえずもう一度。

もきゅもきゅもきゅもきゅ、、、。


そして、紗奈の口元を優しく拭って、リップクリームを再度塗って、また互いの唇で伸ばす。


「へへへ〜。」

紗奈が嬉しそうに笑ってしがみつく。

「颯太、だ〜い好き。」

「僕もだよ。」


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