残り149日目「いっそ、やっちゃおうかと思ったりしたわけよ」

「いっそ、やっちゃおうかと思ったりしたわけよ」


ベッドに引きづり込まれ一緒にゴロゴロしていると紗奈は唐突にそう言った。


「何を?」

紗奈は僕の問いに答えず、もぞもぞと僕の胸に顔をすり寄せる。


「今日はもうダメ……、時間切れだわ……、おやすみ、颯太……」


そう言いながら、目を閉じて催促する様に顔をこちらに向ける。


音も出ないようにふわりと深く優しく唇を重ねる。


紗奈は目を閉じたままちろっと舌を出して催促する。


刺激強くて目覚めないものなのかなと思いながら、口を重ねる。


もきゅもきゅもきゅもきゅ。


艶やかな糸を引きながら口を離す。

口元を優しく指で拭いてあげると紗奈は目を閉じたままで。


「おやすみ、颯太……」

そう言いながら僕の腕の中に顔を埋めた。


その紗奈の頭を撫でながら。

「おやすみ、紗奈」


結局、何をやっちゃおうとしてたのかは分からずじまい。


それでもこれだけは分かる。

大した話ではないのだと。


僕は紗奈を起こさないように唇に触れるだけのキスを落とし、もう一度小さく。

「おやすみ、紗奈」


僕もそのまま夢の中へと旅立った。

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