658日目(残り72日)「私、テンプレ書けなかったのよ」
「私、テンプレ書けなかったのよ」
ベッドの上で座り込んで愕然としていた紗奈は唐突にそう言った。
ある意味で衝撃発言だけど、僕は椅子をくるりと回転させて言った。
「そうだね?」
今更も今更だけど、今更なことを言うのも紗奈らしいので、それはそれである。
紗奈はバンバンとベッドを叩く。
「違うのよ〜!
書かないもしくは書いても面白くないから書かないんだと思ってたけど、書けないことが分かったのよ〜!!」
ふむふむ……ふむ?
「どう違うの?」
書いても面白いと思えないから書けないという話ではなかった?
「私はね、憑依型なのよ」
「そう言ってたね?」
それが何か?
「憑依型というのは、あたかも登場人物……特に主人公と同じ目線で生きているのよ!」
「そうだね?」
それが何か?
「つまり!」
「つまり?」
「主人公からしたら、前世の記憶があるとか、そういう感覚ってやっぱりこう〜普通じゃないのよ」
「うん、そうだね。
あー、あーそうかー。
私には前世の記憶があるとかゲームの中だとか、そこで葛藤が生まれないわけがないよな」
「そうなのよ。
よほど日々、物事を思い悩まない人でもない限り、普通に過ごせるわけがないのよ。
悩みすぎて病気になってもおかしくないぐらい」
「でも、そこは目を逸らして……、あっ、憑依型だからそらせないのか」
「その通りよ、颯太。
監督型とか演劇型とかなら、そういうシナリオだからで流せるけど憑依型の私は登場人物になってるから、スルー出来ないのよ」
「なるほど……。
だから紗奈にはテンプレを書けない……、特に転生とかツッコミ部分があってしまうものは。
最強系ならなんとか?」
「うーん、でも最強系ってなんだか目標達成した後でやることなくない?
私、ゲームでいきなりレベル99だとやる気無くすタイプなんだけど。
ギャグとかじゃない限り」
性質的に向いていない、と。
「でもテンプレが書かないじゃなくて、書けないのならカクヨムコンのファンタジーは致命的じゃない?」
「致命的ね!
テンプレは最初から加点+20ぐらいだもの。
良いのよ、どちらにしても書く暇ないからね。
……ところで颯太。
正解のご褒美いる?」
紗奈は自分の口元を指差す。
無論、僕がそれに抗うことは出来やしない。
僕は机の上を片付け、紗奈の隣に座り口を重ねながら優しく紗奈をベッドに押し倒した。
もきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅもきゅ……。
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