655日目(残り75日)「ぬがー!悲しい歌なんて聞きたくないのよー\( ゚д゚)/」
「ぬがー!悲しい歌なんて聞きたくないのよー\( ゚д゚)/」
紗奈がベッドの上であぐらを組んで唐突にそう言った。
僕はすでに寝る準備を済ませ、紗奈の隣に居るので紗奈をそのままベッドに引っ張り込むように横にさせる。
「悲しいのは嫌なの!」
「分かった分かった」
そう言って、腕の中に紗奈を抱え込み口を重ねる。
もきゅもきゅもきゅもきゅ。
十分にお互いを味わってから口を離し、テカる紗奈の口元を優しく指で拭く。
それから再度、啄むようなキスをする。
満足したのか、ふにゃあと紗奈は僕にしがみ付く。
その背中をポンポンとあやす。
「失恋の歌とか良い歌なんだけど、悲しくて嫌になるの。
なんていうの、納得出来ないって感じ。
仕方ないんだけどね」
「そうだね」
別れるにも人それぞれ理由がある。
譲れない理由もあれば、なんとなくも。
紗奈の聴いた曲は、なんとなくの理由に聞こえるらしい。
何事も捉え方1つだ。
「……そろそろ書く余裕もないわね。
息抜きという言い訳も出来なくなりそうね」
そう、僕らは高校3年、受験……というわけではない。
一時は僕は就職を選んだが、その後、教師の説得と家族との相談の上、大学に行くことにした。
かなりの急な変更だ。
560日目、つまり約90日前からの急な変更。
指定校の面接は9月。
学校からの提案ということで滑り込めたけど通常では無理だ。
大学に行くにはお金は非常に大切な問題だ。
だけど、父も母もなんとかしてくれるということ、成績優秀者の特待での就学金(返済不要)が貰えるということ。
1番の決め手は紗奈が見せてきたカクヨムのある小説だ。
「……夫婦でキャンパスライフを送るという選択肢は存在するのよ」
完全に盲点だった。
それもアリなんだ、と。
滑り込みというか、学校側の強い要望もあり、指定校への推薦をこの度勝ち取った。
……2人して。
しれっと紗奈も成績優秀者である。
知らなかったのだが、大学での成績は高校に送られる。
当然、大学での成績優秀者を紹介した高校の実績も上がるということだ。
だから大学に送るなら、頑張ってくれそうな人を送る、それは当然なことだった。
「愛のためなら努力を怠ってはいけないのよ?」
……だそうである。
将来を支える人がすでに居るので、僕が大学で手を抜いたりはしないだろう。
それは自分だけではなく、その大切な人の未来にも直結するのだから。
そんなわけで、紗奈が言っているのは大学受験のことではない。
紗奈曰く、いつ何時、妊娠して場合により大学も中退という選択を選ぶ可能性もあるわ。
その時、子供を育てる術として資格もしっかり取っていくわよ!
……ということだ。
なので、僕も紗奈も資格試験が控えているというわけだ。
試験代も安くないし、チャンスは1年に1回、良い加減には出来ない。
「でも、とりあえずもきゅもきゅしながら、今日は寝るわ」
「割といつものことだけど、もきゅもきゅしながら寝るって、凄い言葉だよね……」
「そうね、でも仕方ないの。
幼馴染だから」
「いや、幼馴染はもきゅもきゅしないと思うよ?」
「嘘!?」
そう言ってそれを否定するかのように紗奈は僕に口を重ねてくる。
もきゅもきゅもきゅもきゅ。
「幼馴染だけど、したわよ!」
「僕らもうほぼ夫婦だから……」
紗奈はうーんと上を見上げ。
「それもそうね」
あっさり納得した。
納得して満足したらしい紗奈は再度、僕に顔を寄せて口を重ねる。
僕もそれに応えるように紗奈の舌と自分の舌を絡ませる。
もっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅ……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます