第6話「魂エネルギーが尽きたのよ」

「魂エネルギーが尽きたのよ」


ベッドの上で背を壁につけて、マンガを読んでいた紗奈は唐突にそんなことを言った。


「そうなんだ」

「そうなのよ」


そうして紗奈はマンガの続きを読む。

僕も資格のテキストを読む。


それからしばし……。

マンガを読み終わり、顔をあげた紗奈は。

「魂エネルギーがないのよ」

同じことを言った。


「そうなんだ」

僕も同じ返事を返す。


紗奈は僕に絡まるように引っ付きジタバタと訴える。

「魂エネルギーがーないのよー!」

「そうか、そうか」


そう返事をして紗奈の頭を撫でると大人しくなった。


「マンガを読んで、颯太に引っ付いて、バイト行って、ぼぉ〜としていると時間もないのよ」


バイトについては2人一緒に親戚の伝手での倉庫整理だ。

紗奈は重い物は持てないので、仕分け作業の入力や書類整理などなど。

僕の方はその分、荷物運びの雑務に追われている。


働くという経験は本当に貴重だ。

学生という世界からは見えなかったものがたくさん見えてくる。


それをどう活かしていくのか。

それは僕の今後の課題だ。


そうすると資格という知識の吸収の意味がほんの少しだけわかった気がした。


高校卒業から大学までの間ぐらい休めばいいとも考えるが、長い目で見たとき勉強できるものはしておきたい。


結局、そういうのが好きなのだ。


もちろん、大学受験などのように切羽詰まったものではないので、ある程度自由にして良いわけだが。

ようは自分の気持ち次第だ。


「……フッ、わかってるわよ。

自分の気持ち次第って」

「ちなみにそれはどうやって回復するんだ?」


前に聞いた気はする。


「応援とかしてもらってテンションが上がるか、魂を揺さぶられる作品を読むか、颯太エネルギーを吸収するかよ」


「そうなんだ」

颯太エネルギーってなんだ?


「つまり紗奈はテンションが下がっていると」

「そうとも言うわね!

実際ね〜、前からの課題なんだけど長期作品ってやっぱりモチベーション維持って難しいのよ。

応援の勢いがあるうちはどんどん書けるけど、どうしてもね〜」


それから紗奈は自分のスマホをポチポチ。

すでに非公開にしてあるイチャイチャ幼馴染を見ているようだ。


「……そして気付いてしまったの。

私、魂エネルギーの補給に颯太ともきゅもきゅが必要なんだけど、魂エネルギーが枯渇しているときはもきゅもきゅがかなり激しくなってるわ」

「……なるほど」


わりといつもだよね?



「そんなわけで!

今日も補給するわよ!」

「はいはい」

「はいは一回!」


そう言いつつ僕らは口を重ねる。


もっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅもっきゅちゅっ。

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