第5話「テンプレって設定の土台を説明しなくて良いという点でとても優秀なのよ」
「テンプレって設定の土台を説明しなくて良いという点でとても優秀なのよ」
紗奈の背もたれになるようにベッドの上で背中合わせに座りながら、僕がスマホでカクヨムを見ていると、紗奈は唐突にそう言った。
「紗奈はテンプレ書けないよね?」
「それは置いといての話ね。
認めたくないけど舞台演出装置として研ぎ澄まされているのよ。
使い古されていても、それでもその瞬間は胸をときめかせてしまう。
それが人というものよ」
振り返ると遠い目をしている紗奈。
それからもぞもぞと僕を押し倒し上に乗ろうとする。
なので僕はお腹に負担がいかないように優しく支えてあげる。
「戦略ものとか内政ものとか描きたいなぁーと思うんだけど、そうするとやっぱり舞台装置のテンプレが必須になるのよ」
「そうなんだ?」
「そうなの。
コレって紙小説とネット小説を明確に分ける部分だと思うけど、重厚さのある舞台設定からの説明はネット小説では避けられるし、ネット小説ではなによりスピードが優先されるわ。
コレってそのままネット社会の構造を示していると思うの。
スピード優先。
ユーチューブでも展開が遅いと視聴者に飽きられるってやつね、ユーチューブほとんど見てないけど」
紗奈はSNSやユーチューブに手を出していない。
だからこそあれほどにカクヨムを読む頻度が高いのだ。
1日のリソースには限りがある。
それをどこに集中させるかということだ。
「ネット小説と紙小説の大きな違いのもう一つは、完結させるメリットがネット小説にはほぼないということね。
紙小説は完結、せめて一区切りは絶対条件だけど、ネット小説は飽きられたら次に行かなくてはならない。
世知辛いけれど、それが真実よ」
紗奈は僕の上でぐったりする。
書いている長編小説を放置して次にいくのかどうかの葛藤があるようだ。
それでも紗奈は書き切る方を選ぶのだろうけど、ネット小説ではそれは善ではない。
「こだわり〜、こだわりなのよー。
私は書き手だけど読者でもあるのー。
読者からしたら完結作品を読みたいのよー!」
ぽんぽんと頭を撫でる。
癒しを〜と言いながら、紗奈が顔を寄せてきたのでいつも通り口を重ねる。
柔らかな感触が脳髄を刺激する。
もきゅもきゅもきゅもきゅ。
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