とある日のエトセトラ「私、ラブコメって、ダメなのかも知んない、、、。」
「私、ラブコメって、ダメなのかも知んない、、、。」
紗奈は僕の部屋にふらふら〜っと入ってきて、そのままベッドにぱったりと倒れ込んで唐突にそう言った。
僕はペンを持ったまま、思わず振り向いた。
「はぁ〜?」
、、、と言ったが、紗奈が落ち込んでいるようなので、深く息を吸い吐き、ペンを机に置いて、紗奈の隣に座る。
「それで?何か見たのかい?」
紗奈の頭を撫でながら尋ねる。
「人気のラブコメを見たの。
文章もリズムも良いと思ったし、展開も上手だった。
、、、だけど。」
「だけど?」
「泣きたくなったわ。」
「泣きたく、、、それはまたなんで?」
紗奈は僕の枕に顔を埋めたままだ。
「、、、女の子が1人の人を見つめていても、その相手の男は即座に受け入れようとはしないの。
違う女の子とデートしたり、それでいてその男はその子の気持ちが分からないからとはっきりしなくて、、、。
正直、、、。」
紗奈はその後は言葉にしなかった。
多分、良い言葉ではない。
僕は紗奈の頭を撫で続ける。
「アレがラブコメなのかなぁ。
そうなんだろうと思う。
多数の人が考えるラブコメはそういうのなんだろうって。
だったら、私にはラブコメは無理だと思った。」
人気ならば人気なだけの理由がある。
ハマればとても面白いのだろう。
ただ単純に紗奈の生き方に合わないだけとも言える。
「、、、恋愛小説にも、様々な形があるよね?失恋、初恋、純愛、生憎憎悪、それら全てがあって恋愛小説だ。
ならラブコメという言葉もそんな狭い意味ではないと思うよ?
明るく楽しい恋愛、軽いテンポで、でも確かに深い愛、それもまたラブコメだ。
僕らはそういう話をしていたはずだよ。」
僕らの話もまた、誰かにとって良くて、誰かにとって受け入れられないものだろう。
それで良いのだ。
紗奈は僕の枕からチラッと僕を見て頷く。
涙か涎か、僕の枕が少し濡れている。
「、、、今日は一緒に寝る。」
僕はなんとも言えない表情をしてしまう。
「、、、最近、いつも一緒だけど。」
「、、、ずっと颯太にしがみ付いておく。」
「身動き取れなくなるのは勘弁して欲しいけど、、、。」
本当は僕は大の字で寝たいタイプだ。
誰かと同じベッドで寝るのは無理だと思ってた。
、、、何故か、紗奈とは嫌じゃない。
これが紗奈だけなのか、他の人も同じなのかは分からないし、永遠に知ることはないだろう。
、、、まあ、いつもと言えばいつもか。
僕は紗奈に添い寝する様に横になる。
即座に嬉しそうに紗奈は僕にしがみ付き、顔を僕の方の向ける。
いつもの催促のようだ。
もきゅもきゅもきゅもきゅ、、、。
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