198日目「寝取り作品は許せないわね、、、。」

「寝取り作品は許せないわね、、、。」


先程までご機嫌に鼻歌を歌いながら、僕らのベッドでゴロゴロしながら、スマホでネット小説を読んでいた紗奈は不機嫌そうな顔をして、唐突にそう言った。


僕は机の上を片付けて、椅子を回転させて振り返る。

「寝取り物の作品ってこと?」


紗奈は鼻息荒く僕にスマホを突き付ける。

「違うわ、これよ!」

僕は椅子から立ち上がり、紗奈の隣に座りスマホを覗く。


読んでいくうちに、僕は激しく衝撃を受ける。

正直に言おう。

気色悪いとすら思った。


「これ、本気か?」

「どうやら本当みたいね。噂には聞いていたけど、そこまで荒れてしまう状態って思いたくなかったけど、ね。

これは例えば、私たちがそれぞれが自分の意思に関係なく寝取られるようなものよ。」

僕は紗奈にそっとスマホを渡す。

カ◯ヨ◯が好きだからこそ実際に見てしまうと衝撃だった。


「、、、だってこれって、、、じゃないか。」

「、、、かつて、アーサー王伝説が書かれて、何世紀か後に湖畔の騎士ランスロットの話が追加されたわ。

、、、そう、その瞬間から偉大なる物語は壮大なる寝取られ男の物語となったわ。」


大分強調しているが、まあ、そういう側面もなくはない。

要するに、初代のアーサー王伝説を書いた人はどんな想いがするだろう。


紗奈は僕からスマホを受け取り、そっと画面を閉じた。

「、、、今日、カ◯ヨ◯リワードが付いたわ。

作品を書くモチベーションに繋がるわ。

、、、だけどね、ふと思うの。

思ってしまうことがあるの。

志も想いもない人が報酬を、その成果を手にする。

、、、私はなんで書いてるのかしらって。

自分の作品がそうなった訳じゃないけど、そうである作品に私は負けてるのかしら、ね。」


人は人、そう割り切れれば良かったのかもしれない。

もしかすると、いつかその凶器は自らの血肉を分けた作品に襲いかかることもある。

それは選ばれた書籍化されるほどの作品だけかもしれないけれど、誰でもやろうと思えば出来るということなのだから。

僕は具体的な言葉を何も言えなかった。


「そういえば考えたことがなかったけれど、カ◯ヨ◯の中で発表した作品は著作権として、保護の対象なのだろうか?」

「、、、考えたことはなかったわね。そういうマネを考えたこともなかったから。

ダメね。

今日は考えられない。

ちょっと色々考えてみることにするわ。」

「そうだね、それが良い。

慌てず自分は自分として。」

紗奈の頭を僕はただ撫でてあげることしか出来なかった。

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